基礎食品化学のーと 11


食品添加物

  1. 食品添加物
    ○定義

    食品の製造の過程において,または食品の加工若しくは保存の目的で,食品に添加,混和,浸潤その他の方法によって使用するもの

    ○条件

    安全性    毎日摂取しても有害な影響を与える可能性がなく,危険でないこと
    利点     消費者になんらかの意味の利点があること
    効果     その目的に関し十分な効果があるもの
    分析可能  添加した食品において化学分析等により,その添加を確認しえるもの

    ○利点と欠点

    保存性がよくなる.大量生産,大量保管,輸送距離の増大,価格安定.
    食中毒 の予防

    毒性による健康被害
    製造過程での衛生管理が悪くなる

    ○安全性の評価

    毒性評価 (FAO /WHO による)(Food and Agriculture Organization of the United Nations)
    A1  安全性が充分に評価されている.ADIが設定されているか,必要がないもの
    A2  安全性の評価はすんでいないが,暫定的に食品への利用が認められている
    B   評価は未定.
    C1  食品添加物としての使用が安全でないもの
    C2  安全性の理由から,使用が制限されるべきもの

    一日摂取許容量   ADI (accepatable daily intake)  mg/kg day  ADI=無毒性量/安全係数(100)

     
  2. 食品衛生法

    食品添加物は科学的根拠をもとに食品衛生法で規定される

    食品衛生法 
      食品添加物公定書(The Japan Standards for Food and Additives; JSFA)
      食品添加物の規格(成分規格,保存基準,製造基準,使用基準,表示基準)と適正な使用法
    食品衛生法施行規則

    消費期限(おおむね5日以内),品質保証期限 (3か月を超える場合は月日)

  3. 食品添加物の分類

    指定添加物(ポジティブリスト)
    合成品と天然品がある.天然品は,さらに分類.
    ・化学的合成品  健康上無害な物質として,348品目が指定
    ・既存添加物   (既存添加物名簿 489品目 天然添加物のみ)
    ・一般飲食物添加物  一般に食品として飲食に供されるものであって添加物として使用されるもの
                (オレンジ果汁,グルテン,ゼラチン)
    ・天然香料
    注意 指定される数は増減する

  4. 食品添加物の表示

    物質名
    用途 特に表示の必要性が高い場合
    一括表示できるもの.  使用量が微量で,個々の成分の表示の必要性が高いもの.
      イーストフード,ガムベース,かんすい,苦味料,酵素,光沢剤,香料,酸味料,
      チュウインガム軟化剤,調味料,豆腐用凝固剤,乳化剤,pH調製剤.膨張剤.
    表示を免除されるもの  加工助剤,原料からのキャリーオーバーで持ち越し料より増えず,許容量をこえていないもの.

  5. 保存性に関わる添加物
    ●保存料

    食品が微生物により劣化するのを防ぐ.
    食品の味や食感を変えないで保存性をよくする. 指定添加物13種類,既存添加物10種類
    エステル類はpHに依存しないが,酸型は中性になると抗菌力が低下する.

    ●防かび剤

    ●酸化防止剤

    油脂を含む食品が酸素により劣化(自動酸化)するのを防ぐ

    ●防虫剤
    ●殺菌剤

    ●pH調整剤

    食品のpHを適切な値に保持する.
    食中毒菌,一般細菌は,pH4.6以下では発育しない. 乳酸菌,カビ,酵母は,pH 2以下にならないと発育抑制できない.

    ●被膜剤
    収穫した果実,野菜の乾燥をふせぎ,鮮度を保つ.
  6. 味に関わる添加物
    ●甘味料

    アスパルテーム Lフェエニルアラニン化合物と表示
    Dキシロース 
    ステビアサイド
    D-ソルビトール
    ●苦味料

    イソアルファー酸 くわ科ホップ ビール
    ●香料

    ●酸味料

    ●調味料

    ●香辛料抽出物 (香辛料またはスパイス)

    ●栄養強化剤

    ビタミン類,アミノ酸類,ミネラル類
    栄養強化の目的の場合は,表示免除.例,ビタミンC,ビタミンEを酸化防止剤として用いるときは表示する
  7. 食感に関わる添加物
    ●粘着剤
    ピロリン酸4カリウム ミオシンは食塩で溶解するが,さらに溶解性が改善
    ●ガムベース
    味と香り
    砂糖と香料を保持する
    エステルガム(アビエチン酸とグリセリン),酢酸ビニルガム,ポリイソブチレン,チクル(アカテツ科サポジラのラテックス),ソルバ(キョウチクトウ科ソルバのラテックス),ジエルトン(キョウチクトウ科ジェルトンのラテックス)
    ●増粘安定剤
    ●チューインガム軟化剤
    ●豆腐用凝固剤
    ●膨脹剤
  8. 見た目にかかわる添加物

    ●色調調整剤
    ●着色料
    ●発色剤
    ●光沢剤
    ●漂白剤
    ●乳化剤
  9. 製造工程にかかわる添加物
    ●イーストフード
    パン酵母の発酵とグルテンの伸展製の改善
    硫酸カルシウム,塩化マグネシウム,塩化アンモニウム,臭素酸カリウム,食塩,など.
    ●酵素



    ウレアーゼ 清酒原酒用 タンパク由来の尿素を分解 加工助剤なので表示免除
    グルコースオキシターゼ パン,果汁からグルコースを除去
    グルコースイソメラーゼ フルクトースに異性化する
    α-アミラーゼ デンプンの分解
    リゾチーム 清酒,みりん,ナチュラルチーズ 硝酸塩のかわり
    リパーゼ
    レンネット(レンニン,キモシン)
    ●醸造用剤
    ●発酵調整剤
    ●離型剤

    流動パラフィン パンの自動分割機のカッター,パンの型

    ●かんすい
    中華めん類.タンパク質を変成して弾力と粘性をだす.色素を黄色に発色させる.
    炭酸ナトリウム,リン酸塩類
    ●小麦粉処理剤

    小麦粉の製粉時の漂白,熟成作用,ふっくらしたパンを作る
    過酸化ベンゾイル

    ●製造用剤

    ●消泡剤

    シリコーン樹脂
    0.05 mg/kg以下

    ●抽出用剤

    ヘキサン
    食用油の抽出
    アセトン
    抽出用

    ●品質改良剤
    ●固結防止剤


参考文献
食品添加物ハンドブック,1997,光生館,東京
食品添加物事典,1999,産調出版


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