基礎食品化学のーと 10


ビタミン類 無機質 

  1. ビタミンの意義

    脚気,壊血病,くる病,ペラグラ(皮膚炎,下痢,痴呆),悪性貧血などの症状を克服するために見つけられてきた,歴史的物質

    動物にとって必要な成分であるが,動物には体内で合成できない物質
    食事によって摂取しなければいけない物質.  13種類

    生理作用 生命の維持に必要な成分で,最低限の量のことを所要量
    薬理作用 所要量を超える量の摂取によって,健康にプラスの効果がある.
    過剰摂取 薬理効果の量を超えて摂取するとマイナスの効果がでる ビタミンA,D,K,E

    生体内では,補酵素の多くはビタミンからつくられる.

  2. ビタミン類                                                                       
    ビタミン別名欠乏症過剰症 溶解性
    A1 レチノール 夜盲症 はきけ,めまい油溶性
    B群     
    B1チアミン脚気水溶性
    B2 リボフラビン口角炎,皮膚炎水溶性
    B6ピリドキシン貧血水溶性
    B12 悪性貧血水溶性
    ニコチンアミド ペラグラ 水溶性
    葉酸 骨髄の代謝障害,貧血水溶性
    パントテン酸 水溶性
    H ビオチン皮膚炎水溶性
    C アスコルビン酸壊血病水溶性
    D カルシフェロール くる病 食欲不振,嘔吐油溶性
    E トコフェロール 不妊症,溶血性貧血油溶性
    K 血液凝固遅滞 吐き気,血圧低下油溶性



  3. ビタミンA


    図 Vitamine A(レチノール)     レチナール

    網膜における視覚に関わる物質.レチナールとレチノールの酸化還元反応
    不足すると,夜盲症になる.粘膜の保護,免疫,ガン抑制効果
    視覚に関する重要な物質.11-cis型のレチナールとオプシン(タンパク質)が結合しロドプシンを形成する.光でtrans型に戻る.


    図  ロドプシンによる光反応

    ビタミンA を多く含む食品
    所要量 0.6 mg. (男2000IU ,女1800IU)
    豚レバー,鶏レバー,うなぎ

    プロビタミンA (体内でビタミンAに変換される)
    βカロテンは,体内でビタミンAに変わる前駆体.ニンジンなどに多く含まれる


    図 βカロテン

    通常の食事では不足しない.過剰にとると弊害(食欲不振,嘔吐,皮膚口唇炎,その他)がでる.
    食品添加物.栄養強化剤の場合は表示免除

    イソプレンを構成単位にする化合物テルペノイド

  4. ビタミン B群

    水溶性,体内で補酵素に変化

  5. ビタミン B1   (チアミン)


    図 ビタミンB1 (チアミン)     チアミンピロリン酸

    小腸上皮細胞のアルカリフォスホターゼにより加水分解された後,吸収され,再びリン酸化され,血管により運ばれる.

    糖代謝酵素の補酵素
    欠乏した場合 脚気 神経系と心血管系に影響する.知覚障害,末梢神経障害,反射がなくなる.動悸,心臓機能,心不全までなる.
    食物からの摂取不足,アルコール中毒が原因

    一日の所要量 0.8 mg-1.0 mg. 
    ビタミンB1 を多く含む食品 (100 gあたりの量)
    豚肉 (0.9 mg),レバー,うなぎ,豆類 (0.8 mg)
    ビタミンB1は,ネギに含まれるアリシンと結合しやすく,効率よく吸収されやすい.豚肉とネギ

    食品添加物でもある.栄養強化剤(表示免除)
    チアミン塩酸塩 水溶性,アルカリ性で分解水溶液食品に添加
    チアミンチオシアン酸塩 水に難溶,分解しにくい.固形の食品(小麦粉)に添加.
    ほか  硝酸塩,セチル硫酸塩,など

  6. ビタミン B2 (リボフラビン)



    図 リボフラビン  フラビンモノヌクレオチド(FMN) フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)

    生体内では,FMN, FADとして存在し,酸化還元反応の補酵素.
    酸化還元反応に関わる酵素は多い.したがって,欠乏すると影響する生理機能は広い範囲に及ぶ.
    食事からの摂取が足りない場合.病気や薬物(リボフラビン類似構造)などでも,リボフラビンが足りていても,補酵素への転換が阻害されて影響する

    ビタミンB2 を多く含む食品 (100 gあたりの量)
    一日の所要量 1.1 mg-1.4 mg. 
    豚レバー (3.6 mg),アーモンド( 1.1 mg),小麦胚芽,乳製品

    回腸で吸収される(40 mg / day).過剰分は尿で排出


    食品添加物.栄養強化剤の場合は表示免除, 着色剤の場合は表示
    小麦粉,みそ,乳製品,ジャム
    みそに添加すると,麹菌の活性がよくなる.

  7. ビタミン B6


    図 VB6 ピリドキシン ピリドキサール ピリドキサミン    ピリドキサールリン酸(PLP)

    食品中にはリン酸化された状態で存在し,アルカリフォスホターゼによる加水分解を受けてのち吸収され,再びリン酸化される.

    アミノ基の転移反応,アミノ酸の脱炭酸反応など100種類以上の酵素に対する補酵素
    GOT(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ) 肝臓,心臓に障害がある場合,細胞が死滅した場合に高い値になる
    GPT(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ)


    欠乏すると,皮膚炎,てんかん様発作,貧血,高コレステロール血症など
    通常の食事で欠乏することはない.腸内細菌による合成もあると考えられている
    ビタミンB6を多く含む食品 (100 gあたりの量)
    一日の所要量   1.2mg- 2.0 mg. 
    大豆(  0.8 mg),クルミ( 0.7  mg),鶏肉(  0.7 mg),アボガド( 0.4  mg),バナナ( 0.5  mg),ニンニク(1.5  mg), レバー(   mg), 

    ビリドキシンは食品添加物.栄養強化剤であるので表示免除



  8. ビタミン B12


    図  R=CN:シアノコバラミン(VB12) R=5'-deoxyadenosyl : アデノシルコバラミン(AdoB12)  R=CH3 : メチルコバラミン

    微生物が合成.人でも大腸の細菌によって合成されるが,大腸からは吸収されない.
    吸収されたのち,AdoB12,MeB12に変換され,補酵素として働く.

    メチオニンシンチターゼなど.不足すると,悪性貧血や成長不良

    ビタミン B12  を多く含む食品 (100 gあたりの量)
    一日の所要量  5 μg. 
    微生物を食べる動物, レバー,肉,魚貝類,のり, (   mg), 

      

    シアノコバラミンは食品添加物として,調整粉乳に添加される.栄養強化剤であるので表示免除


    図 テトラピロール環をもつ化合物


  9. ナイアシン (ニコチン酸  ニコチンアミド)


    図 ニコチン酸  ニコチンアミド

    ペアグラ(18世紀にヨーロッパでみられた疾病で,皮膚炎,下痢,痴呆,死亡に至る)の原因
    トウモロコシを主食とする場合におこる.トウモロコシにはトリプトファン含量が少ない
    酸化還元酵素の補酵素.アルコール分解に関与.DNAの修復に関与.

    ニコチンアミド   を多く含む食品 (100 gあたりの量)
    一日の所要量  13 mg-20  mg. 
     魚 (15-50  mg), レバー(  14 mg), 落花生,

    ニコチンアミドは,ニコチンアミドアデノシンジヌクレオチド(NAD+)のもとになる.NAD+やNADP+は,生体内での酸化反応にかかわる


    図 NAD+(酸化型) と NADH(還元型)


    食品添加物.栄養強化剤の場合は表示免除, 加工食品の色調調節剤の場合は表示

  10. 葉酸  (プテロイルグルタミン酸)


    図 葉酸  (プテロイン酸   -  グルタミン酸)


    吸収されると,5678位に水素がついた補酵素型になる.()

    C1単位での転移反応に関与.DNA,タンパク質の合成に関与.

    腸内細菌により合成されるので,欠乏することは少ない
    葉酸   を多く含む食品 (100 gあたりの量)
    一日の所要量  0.2 mg - 0.4 mg. 
     レバー ( 300 μg), アスパラガス(  180 μg), ブロッコリー,ほうれん草

    食品添加物.栄養強化剤の場合は表示免除
  11. パントテン酸


    図 パントテン酸

    CoAの構成成分.CoAは,アシル基転移反応など様々な反応に関与.

    ふつうの食品には充分含まれている
    パントテン酸   を多く含む食品 (100 gあたりの量)
    一日の所要量  10 mg. 
    レバー  ( 6 mg), 落花生( 2.5  mg), たまご,豆類,穀類


    図 CoA

    食品添加物.栄養強化剤の場合は表示免除


  12. ビオチン (ビタミン H)


    図 ビオチン   

    食品中にタンパクと結合して存在している.膵臓がでる酵素で遊離され,小腸でトランスポーターにより吸収される.
    炭酸固定,脱炭酸,炭酸転移などに関与.アミノ酸代謝によるアンモニア除去に関与

    ふつうの食品には充分含まれている.腸内細菌でも生成(大腸での吸収もある)
    生卵白(糖タンパク, アビジン)を大量に摂取すると,吸収阻害が起き欠乏する
    ビオチン  を多く含む食品 (100 gあたりの量)
    一日の所要量  0.2 mg
    卵黄,レバー,牛乳


     

  13. ビタミン C (アスコルビン酸)


    図 ビタミンC 

    壊血病の予防因子.
    プロリン,リシンの水酸化,コラーゲン(皮膚,骨,歯,腱)の生成,不足すると出血しやすくなる
    アミノ酸代謝,ステロイド合成,Fe3+の還元,解毒,ニトロソアミンの生成抑制など,

    ビタミン C  を多く含む食品 (100 gあたりの量)
    一日の所要量 50  mg (200 mg.) 
    赤ピーマン  ( 180 mg),キウイフルーツ( 69  mg), いちご,ブロッコリー

    食品添加物.栄養強化剤の場合は表示免除.酸化防止剤の場合は,用途と物質名表示

  14. ビタミン D


    図 ビタミンD2 D3

    骨形成にかかわる因子として発見.小腸から吸収あるいは皮膚で合成
    プロビタミンDから紫外線により生成.カルシウム,リンの吸収促進と代謝の正常化.カルシウムの骨への沈着.


    ビタミン D  を多く含む食品 (100 gあたりの量)
    一日の所要量  2.5 μg 
    肝油,レバー,卵,牛乳,魚 , しいたけ( 17  mg), 

    食品添加物.栄養強化剤の場合は表示免除

    コレステロールからビタミンDやステロイドホルモンなどが作られる

  15. ビタミン E


    図 ビタミンE    トコフェロール類

     トコフェロール4種,トコトリエール4種.抗酸化作用(食品添加物にも利用).
    生体内で活性酸素の捕捉.

    通常の食事では不足しない. ビタミン E  を多く含む食品 (100 gあたりの量)
    一日の所要量 10  mg 
    アーモンド  (31  mg), マヨネーズ( 18  mg), サラダ油

    食品添加物.栄養強化剤の場合は表示免除.酸化防止剤の場合は,用途と物質名表示
  16. ビタミン K


    図 ビタミンK1   

    キノン類
    腸内細菌によって作られる.
    新生児,乳児には必要.(頭蓋内出血).納豆を食べる地方では発症率が少ない
    血液凝固に関与.

    通常の食事では不足しない.薬品などにより阻害することがある
    ビタミン K  を多く含む食品 (100 gあたりの量)
    一日の所要量   65μg. 
     納豆 (870  μg), ほうれん草,ひじき



    図 CoQ ほ乳類ではn=10


  17. ビタミン様物質



  18. ビタミン類の分析方法

  19. 無機質 mineral

     一日の所要量は,損失と吸収効率から算出されている.性別,年齢によっても変わる


参考文献
ライフサイエンス有機化学,A.P.Rylesら,化学同人,1982,東京
4訂 食品成分表,女子栄養大学出版部,1997,東京
栄養学ハンドブック,桝重正一監修,新星出版,2004,東京
食品添加物ハンドブック第2版,藤井清次他,光生館,1997



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Last updated, June 24 , 2008.