基礎食品化学のーと 6


糖質 2

  1. 二糖類

    単糖が2つ,グリコシド結合によって結合した分子.


    スクロースとトレハロースは,アノーマ炭素でグリコシド結合しているので,還元性をしめさない.(ただし,水溶液は加水分解すると還元性がでてくる.)

  2. スクロース(sucrose,ショ糖,砂糖)
    構造

       
    図 6.1 スクロース 


    植物における輸送物質でサトウキビ,テンサイに特に多い.

    水に溶けるが,結晶を析出しやすいので,食品がざらざらする場合がある.結晶化を防ぐためには,他の糖を混ぜたり,少し酸性の成分を加え一部を転化させる.エネルギー源としては優れている.パンを作る場合には,パン酵母のえさになる.50%以上の濃度になると浸透圧が上がり,微生物の繁殖を防ぐことができる.デンプンと混ぜた場合には,食品の再βデンプン化を防ぐ効果がある.

    スクロースを加水分解してグルコースとフルクトースにした混合物は転化糖とよばれ,もとのスクロースより甘くなる.食品に転化される

  3. マルトース (maltose, 麦芽糖)  


    図 6.2  マルトース

    グルコースの2量体.一方のグルコースのアノーマー炭素は,開環してアルデヒド基になるので,還元性を示す.

     デンプンをβ-アミラーゼで分解すると得られる.ビールの醸造では,麦の発芽により作り出させたアミラーゼを利用する.精製したのが水飴.砂糖に混ぜると,砂糖の結晶化を防ぐことができる.


  4. ラクトース (lactose,乳糖)


    図 6.3 ラクトース 

    牛乳に含まれる.人の場合,年齢とともにラクトースを分解する酵素が減少するので,おなかを壊しやすい.ヨーグルトやチーズにすると,ビフィズス菌や乳酸菌によってラクトースが消化されているので,牛乳のようにおなかをこわす心配はない.

  5. トレハロース (trehalose)


    図 6.4 トレハロース

    スクロースの約半分の甘さで, 非還元糖.アミノ酸やタンパク質と反応するメイラード反応を起こさない.

    糖の甘み
  6. オリゴ糖

    単糖が2つから6程度脱水縮合し結合した糖質.通常は,3つ以上をオリゴ糖とし,2糖類は別に扱う.

    食品の場合は,甘みがあって,人には消化できなくて,ビフィズス菌以外にも分解されず,ビフィズス菌のエサになる.低う蝕性(虫歯にならない)で浸透圧を上げるので便秘を防ぐ効果がある.

    乳果オリゴ糖
    ラクトースとスクロースから作る.β-フルクトフラノシダーゼにより,スクロースのフルクトースを切り取り,ラククトースのグルコースに結合させ,ガラクトース-グルコース-フルクトースからなる3糖類.甘みはスクロースより低いが,難消化性であり,低カロリー糖である.

    フルクトオリゴ糖

    スクロースのフルクトース側にさらに1-3個のフルクトースを酵素によって縮合させたオリゴ糖.タマネギやゴボウに含まれる.難消化性であるがビフィズス菌には分解される.

  7. 多糖類

    単糖類がグリコシド結合により縮合重合した高分子である.一般に高分子は,そのモノマーとは性質が大きくことなる.多糖類においても同様であるが,単糖類のもつ性質が関係したうえで,大きく異なる性質をしめす.

    食品としてみた場合つぎのように分類できる.

      吸収され,代謝される糖質   デンプン

      吸収されるが,代謝されずに,排出される糖   糖アルコール

      吸収されずに,排出される.(腸内細菌によって代謝され,その分解生成物を吸収する場合がある.)  食物繊維

  8. デンプン (starch,)

    構造

       
    図 6.* アミロース (amylose)           シクロデキストリン

    α-グルコースの重合体.グルコース単位6個で一回転し,全体としてらせん構造になる.らせんは12回転ごとに折れ曲がっている.らせんの内部は親油性で,脂肪酸が入っているおり,外部は親水性を示す.アミロースを構成するグルコースの水酸基は分子内で水素結合を形成し,らせんを安定化している.植物の種類によってデンプンの構造は異なる.ごく一部のグルコースがリン酸基をもちイオン化する場合には,イオン間の反発により分子鎖がのびやすくなり,粘度が高くなる.


    図 6.* アミロペクチン(amylopectin)

     

     デンプンを分解する酵素

     α-アミラーゼ. アミラーゼの任意の1,4結合部位を切断する  (endo- : 内の意味)

     β-アミラーゼ. アミラーゼの非還元末端からマルトース単位(グルコース単位で2個)で切断する. (exo- : 外の意味)

     イソアミラーゼ.アミラーゼの1,6結合部位を切断する

     グルコアミラーゼ. グルコース単位で分解する.

     

  9. グリコーゲン

    アミロペクチンとよく似た構造であるが,分枝が多い.酵素の作用する部位が多く,グルコースを放出するための加水分解が迅速になる.

  10. セルロース


    図 6.* セルロース

    β-グルコースの重合体.グルコース単位で裏返しに重合,全体としてら直線構造になる.セルロース分子同士では多数の水素結合により平衡に集合する

    人間は,直接分解する酵素を持たないので消化されない.しかし,腸内細菌によって分解された後,一部吸収される.

     

  11. キチン


    図 6.* キチン とキトサン

    キチンは,エビ,かになどの甲殻類や昆虫の外皮を構成する高分子.セルロースのように,N-アセチルグルコサミン(2-アセトアミド-2-デオキシ-D-グルコース)が重合している.分子間の水素結合が強く,強固な結晶になる.水や一般の有機溶媒に不溶.

    接合菌類の細胞壁構成成分であるが,キチンをアルカリ処理(50 % NaOH 90 °C 6Hr)するとキトサンが得られる.酸性水溶液に可溶.天然のキチンにも一部脱アセチル化されている.
    難消化性.コレステロール抑制や整腸作用.食品添加物に利用.

  12. ペクチン


    図 6.* ペクチン      R: OH, OCH3 NH2

    α-ガラクツロン酸(ガラクトースのウロン酸)の重合体.カルボキシル基がメチルエステルの場合とアミド基の場合がある.果実に含まれ,熟すに従ってメチルエステルが加水分解されカルボキシル基になり,やわらかくなる.

    ペクチンは,ジャム,ゼリー,マーマレードなどのゲル化剤,増粘剤として添加される天然食物繊維.保水性,イオン交換性がある.

  13. マンナン

    グルコースとマンノースが約1:1.6の割合で重合している.人には分解する酵素はないが,腸内細菌の微生物には分解される.


    図 6.* マンナンの基本構造.

  14. アガロース(寒天,agarose)

    海草よりとれる,粘性のある多糖類.80℃以上で,水に溶け,それ以下になるとゲル化する.

    D-ガラクトースと3,6-アンヒドロ-L-ガラクトースなどから構成される糖質.


  15. ヒアルロン酸

    グルコースの誘導体である,グルコピラノシルウロン酸と2-アセトアミド-2-βグルコースの2糖の重合体.目のガラス液や関節の膜液.カルボキシル基があるので,きわめて親水性(保水性)が高い.


    図 6.* ヒアルロン酸

  16. 糖質の分析

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Last updated, June 10 , 2007.