世界のいい旅行 1000選 | 世界のいい動画 | ![]() |
|
世界音楽 | 総合サイト | ![]() |
世界のいいジャケ 1000選 |
世界のいい音源 1000選 |
音楽鵜 | いいポエム | |
【更新履歴】 |
このページはかつて 管理者のケンイチが @nifty の音楽サイト 『moocs』にて 連載していた コンテンツ 『世界のいいジャケ 10000選』 の加筆修正版です。 |
||
いい食物 |
第1回~第10回 > 第11回~第20回
![]() |
■ 第十回 ゾンビーな時間 『Kassav'』 小アンティル諸島 |
イヤアアアアア! 半裸にオイル塗り。 腕組みにガン見。 ひめやかな共犯関係を仄めかす、ヤらしい笑顔3つ。 そして何より、深煎りボディからたぎり立つ、オヤジ臭のカリビアン・ブレンド・・・・ そうです。 今、貴方の男性は、あきらかな危機にあります。 さあ、漢らしく、これと戦うのか。 それとも、早々に観念か? でもね。 戦うにせよ、身をゆだねるにせよ、相手は3人もいるっすよ。 「世界のいいジャケ1000選」第十回は、80年代末に世界を席巻したズークの帝王ことKASSAV’。 84年の初期作のご紹介です。 「奇跡の瞬間とらえしこの一枚!」 写真とは、無際限の生ける時間の連鎖から、あるひとつの刹那を切り出し、永遠に静止した平面へこれを 埋葬する作業。 いうなれば世界のミイラ化、時間の剥製技術のようなものとして、イメージができます。 よって写真の中にあるのは通常、死んだ時間である。 何月何日何時何分、すでに完了済みの、朽ちはてた時間である。 しかし今回のジャケは、何ということでしょう、今を生きております。 そう。 生きて、貴方に熱視線。 もう、ラブラブのありさま。 だから、目と目を見かわせば、貴方はもう彼らのブラザー。 やあ君、可愛いね。 ・・・・ウェルカム、男だけのパーリーへ。 というようなタイプの長い長い、ちょっとたまりかねる感じの時間が、この写真には充満している。 それではどうしてこのジャケに限り、完了済みの写真内時間が、イキイキと今このときの我らに、働きかけ るのでしょう? 世界の大手レーベルから、日々リリースされるメジャーアーチストの作品群。 これらのジャケ写は概して「当アーチストはこのように見せ、このように憧れせしむべし」という、冷徹な 営業戦略に基づいて制作された、政治的写真であります。 それらは一見さりげなくクールにシャレオツですが、その実は単なる生き馬の目を抜く大資本アキンドの、 酷薄なる営業魂の化身にすぎません。 それに比べ当ジャケは、一口に言ってよく知らないオッサン達による、何らかのホットな働きかけである。 政治的なるものから何万光年も遠く、いまだ自己意識も芽生えぬ赤子の、誰かまわず手を振るがごとく、 無目的しかし全一的なコミュニケーションの、まさに原初的な反応であります。 それゆえに、我々は待っている。 ただひたすらに、待たされている。 どちらかといえば応じたくない感じの、このテカテカの招待状の内実を。 パーリーの企画趣意の、つまびらかとなる瞬間を・・・・ それは、やはりガチムチ・パーリーへのご招待なのか。 あるいは、今しがた壊れたサウナ風呂の、修理の申し入れか。 はたまた、そう装いつつの、ガチムチ狙いなのか・・・・・ とにもかくにも回答を待つ我らの不安をよそに、3親父による意味不明の淫靡テーションは、終わる気配が ございません。 大体がこんな薄暗い閉所、オイルまみれで半裸のニヤニヤ。 相応の誤解も受けようはずを、なおもユルい笑顔でどこまでもウェルカムという、この底なしのオープンマイ ンドは一体どうでしょうか。 そう、この上なくおおらかで、幾分ズサンでもあるカリブのこころ。 これこそが、時の剥製化を経たはずの当ジャケ被写体に対して、なお、ゾンビーの如き永遠の生命力を付与 してしまう。 あり余る大ボケの呪力により、死せし平面世界からユルリ身を起し、我らの暮らしに直截まろび出るも可能 とする、リビング・デッドな霊力を授けてしまうのです。 これもまた、南半球ならではの『いい加減の美学』といえるでしょう。 |
![]() |
■ 第九回 全体的に 『Total / Antidote』 フィンランド共和国 |
近未来風にデザインされた、ソリッドなバンド名ロゴ 「ANTIDOTE」。 その左端の「A」より放たれた緑色のレーザー光は、ジャケのフチにおいて鋭角に屈曲し、近未来的なシルバー 野郎の目ん玉を、むごくも貫通。 さらにその脳内には無数のビームが交錯し、哀れ、男の苦痛や推し量るよしもなし。 しかしである! 苦悶のあまり、よよと落涙し、ぐがと垂涎する男の耳からは、一体どうしたことだろう、 3D調もゴージャスな虹色の 「TOTAL」 ・・・・・ 見よ、これぞ処置なし。 ロゴからビーム出て、オッサンが苦しんで、いったい何の 「全体的」 なのか。 「世界のいいジャケ1000選」。 今回は、90年代フィンランドのスラッシュメタル・バンド、ANTIDOTEの2ndアルバムのご紹介です。 ところでさて、わが日本国は、いわゆるところの法治国家である。 この法治国家においては、いかな極悪人といえど、ひとしく正当な弁護を受くる権利を有する。 そんなわけでこれより、「いいジャケ界」の数少ない国選弁護人こと私ケンイチ・ナニワーノが、本来ならば およそ酌量の余地もないこのテンネン絵画に対し、それはもうもっともらしい抗弁をほどこし、量刑の最小化 につとめてあげようじゃないかと思うのです。 まあ、こんな芸当ができる人間なんて、この国に僕くらいのものですから・・・・フッ。 「さあて、ご安心ください、ANTIDOTEさん。 不安ですか? 大丈夫ですよ。 私がついていますからね。 二人三脚で、きっと無罪を勝ち取りましょうね! さて、う~ん、そうだな、あれだな。 あなた方のジャケってひょっとして、ほら、「1984年」なんじゃないですか? かのG・オーウェルの近未来小説の白眉。 ある意味、その21世紀版なんだな。 人間精神もくろがねのボディに住まう未来には、ビッグブラザーによる洗脳社会が完成し、人民の知性と 肉体は、支配者の思うがままにコントロールされている。 つまり、この「TOTAL」とは全体主義、TOTALITARIANISMの謂いである。 そして、そんな忌まわしい超管理社会に敢然と立ち向かう英雄が、あなた方ANTIDOTEであると・・・・ どうですか? そうでしょう? そういう感じですよね? え、違う? 別に、そんな難しいことは考えてない? へ? 雰囲気ですか! なぜならば、そういうコンセプトなら、ウチのバンドが、人民を苦しめてることになる? あああ成程・・・・・ そうですね・・・・ んんん・・・・・それじゃね・・・・・ えええとねえ・・・・・ああんとねえ・・・・・ もう、自白しましょうか」 世界のいいジャケ1000選。 本連載において取り沙汰される(ていうか俺がとり沙汰してる)ジャケ群はどれも、いわば芸術の心神耗弱状態 でなされた不慮の事故である。 いいジャケに説明責任なし。 そういうわけで、来週もまた、大目に見てくださいね~。 全体的な雰囲気で。 |
![]() |
■ 第七回 ラテン真面目 『Que Viva La Musica / Ray Barretto』 アメリカ合衆国 |
サルサ音楽の勃興・・・・・ それは、60年代のNYへ居を定めたカリブ系移民による、ある文化的なアイデンティティ醸成の運動 であった。 つまり、アフロ・アメリカンにとってのSOULがそうであるように、SALSAもまた異国の夜に明日を 憂うプエルトリカンたちの、切なる自己確認のための音楽であったのだ。 そんな摩天楼の黎明に煌々と輝く、失われし民族のリズムを解き放つ"神秘の鍵″。 それを狂おしくも希求する、孤高のラティーノがいた! 「世界のいいジャケ10000選」はついに、NYサルサの立役者 RAY BARRETTO の歴史的名盤です! - 明転 - 「バレットよ、音曲師バレットよ・・・・」 「おお、彼はヨルバの神」 「バレットよ、聴くがよい。汝は篤実の者なり」 「これは身にあまるお言葉」 「そこでおまえに、ひとつのチャンスをさずけよう」 「これは夢か現か」 「今よりわたしにジャンケンで勝てば・・・・・」 「はい」 「望みのとおり、この鍵をおまえにつかわそう」 「僥倖にございます」 「ただし、負ければその命ないと思え」 「恐れはしませぬ」 「勝負はただの一度きりじゃ、よいか」 「は、はい」 「いざ」 「さあ~い しょ~は・・・・」 「じゃ~ん けえ~ん・・・・」 ホイッ!!! ・・・・・・・・・・・・・・。 「さ・・・・最初はグゥであろう・・・イマドキは・・・・」 - 暗転 - というわけで、その真面目さ祟ってウッカリと、ヨルバの神に変な空気で勝ってしまったレイさん。 神の赦しはあるのか。 それとも、こっぴどい裁きを受けるのか? 続きは次週! 震えて待て!!! (第八回に続く) |
|
![]() |
■ 第八回 ラテン駄洒落 『Rican/Struction / Ray Barretto』 アメリカ合衆国 |
(前回までのあらすじ) 摩天楼の未明に、いつの日か浮かび上がるとされる、「天空の鍵」。 それは、失われし民族のリズムを解き放つための、中米世界の奇跡。 この神秘の至宝に魅入られた青年・バレットは、ついにその若き魂を賭し、ヨルバの神との「ジャンケン 一発勝負」に挑む。 だが、しかし・・・・ 「勝負はただの一度きりじゃ、よいか」 「は、はい」 「いざ」 「さあ~い しょ~は・・・・」 「じゃ~ん けえ~ん・・・・」 ホイッ!!! ヨルバ神の叫ぶ「最初はグー」を無視し、あっさりパーで完封勝利をおさめてしまった バレット青年。 ああ、この神をも畏れぬ、テンネンさんの運命やいかに?! 「世界のいいジャケ10000選」。 ひき続きコンガ界の仲本工事・ RAY BARRETTO の名作のご紹介です。 とまあ、「運命やいかに」といいながら、結末はすでに上掲のとおり。 神の怒りに触れたバレットさんはローレライよろしく石化され、むごくも五体八つ裂きの憂き目にあった のであります。 顔こそなんか笑ってますけど。 地上には、プイと放擲されたコンガのヘッドの哀れ。 そして何より、その上にさびしく残された右手首の痛々しさよ・・・・ でも、あれ? なんか、小人が数人のってますね? 測量かなんかしてないか? おお、さらに山頂見ゆれば、 Boiled Eggみたく置かれた生首に、建築用の足場も据えられている ではないか。 そう。 この小人たちは、バラバラになったサルサの巨人を、みずからの手によって再建しようとしているプエル トリカン有志たちなのです。 さてこそ、ジャケ右上部にあしらわれた本作のタイトルは、「RICAN/STRUCTION」。 すなわちこれは、「プエルト-リカンの建築」とでも言うべき造語。 ということは・・・・・・ RICAN / STRUCTION ・・・・ RICON / STRUCTION ・・・・ RECONSTRUCTION (再建) ・・・・ バンザーイ!バンザーイ!バンザーイ! (←Wow!大喜利 Old School. It's Cool !) というわけで今回は、目の覚めるようなラテン駄洒落にて、ご機嫌を伺いました。 ラティーノだって駄洒落言うんですね。 めでたしめでたし。 (完) |
![]() |
■ 第六回 倦怠感 『Hot Spikes / Fist』 グレートブリテン及び北アイルランド連合王国 |
草木もねむる丑三つ時。 夜のしじまの競馬場に、人知れず幻想的なメタル馬が4頭、ゲートイン。 いずれ劣らぬマヌケ面で、霊界からのファンファーレを待ちわびる。 はたして彼らは何者か? そしてこの奇怪なレースの目的は? 次週、「なぜだ!まぼろしのメタル万馬券」 ・・・・震えて待て! え、違う? 馬とちゃうの、コレが? 「バンド名がFISTだろ」って? あ~・・・・はい? それが、どうかしますっけ??? 「世界のいいジャケ10000選」第6回は、80年代NWOBHM(ニュー・ウェーブ・オブ・ブリティッシュ ヘヴィ・メタル)シーンの一翼を担った、直情径行型ハードロックバンド FISTのご紹介です。 しかし、それにしてもこの4つの馬ヅラと紛うばかりの鋼鉄ゲンコツが湛える、やるせなさ。 そのどうしようもない倦怠感の正体は、一体何なのか。 これは即ち、ヘビーメタルなる音楽ジャンルが宿命的に胚胎する『デカダンの亡霊』なのである。 その謎を解くためには、我々はまずヘビーメタルなる音楽ジャンルを、定義しなくてはならない。 そも、ヘビーメタルとは何ものか。 それは『第二次産業的喧騒にインスパイアされたエクストリーム系音響実験として、20世紀後半の工業都市 で共有コンテンツ化した国際的芸術運動』と言えるだろう。 アフロ的反復の有機的な快感に安住しえなかった白人音楽としてのロック音楽が、エンタメのツマとしてオペ ラ的ドラマ性を回復しながらも、工業の時代の環境音に呼応する形で「強く高く速く」のエクストリームな指 標のもと、ある怪物化を果たしたものがヘビーメタルだと思う。 それゆえヘビーメタルは、ほとんどその論理的な帰結として(80年代後半のスラッシュ~デスメタルの登場 をもって)そのジャンルとしての可能性の臨界にやがて達する。 極限的なBPMにおける速弾きやツインバスの連打は、全音符の持続に同様となる。 その音風景は、宿命的なかたちで疾走感を失い、過剰さの中に、はたと静止するのである。 これこそが前述した、ヘビーメタルの『宿命的なデカダン』である。 さて、いいジャケに戻ろう。 FISTはそんな80年代ヘビーメタルの爛熟期に、その世界観の根幹をなす最重要テーマ「ヴァイオレンス」を 表現するべく、自らをゲンコツになぞらえ、アートワークのすべてを各種の握りこぶしで貫徹したイイバンド である。 ある時は、ジャケ突き破るペン画のゲンコツ。 またある時は、野郎の顔面を痛打するゲンコツ。 そしてある時は、虚空をかっ飛ぶスペースシップ・ゲンコツ・・・・。 テ変えシナを変え、エクストリームな握りこぶしの過激さを追求した彼らだが、これもいつしか臨界点へ。 そうして生み落とされることになった、ある種のなれの果てが、上掲の馬ヅラ・ゲンコツなのである。 いま一度、ご覧いただこう。 画面いっぱいに充溢し、もはやこれ以上見る者に迫りようのない、永遠の寸止めゲンコツを。 そして立ちこめる、この倦怠感を。 その茫洋とした寂寥感を・・・・・。 ホンキで殴る気のないところを見透かされ、それ以上にどんな威嚇があるだろう。 このようにして、解決策になく、限りなく次善の策ちゅうか、ほぼ窮余の策としてひっそりつけ加えられたのが、 第一関節上の、電のこ風ギザギザである。 驚くべきことにこの絵の主張は、「殴った上にカッターは回り、傷つけるぞ」という恫喝なのだ。 しかしあえて言うまでもなくこんなギザギザなど、指のササクレも同然。 つまり本作ジャケとは、過激さにおけるパラダイム・チェンジの、壮大な失敗例なのだ。 いわば『過激さの遺影』なのだ。 この拳が握っているのはきっと、怒りでも殺意でもなく、内心忸怩たる思いなのである。 しかし今日、それでもなおメタラーはこの世にも困難なメタル設定から、逃げることはできない。 メタル道とは、かようにも過酷で、また甘美なものなのである。 |
![]() |
■ 第五回 霊障 『Escapade / Harry Diboula』 フランス共和国 |
澄みわたる、カリブの青空・・・・ 頬をなでる、やわらかな海風・・・・ 浜辺には愛を囁く、褐色の恋人たち・・・・ そんなアムールやジュテームでテッペンまでしびれた、仏領アンティルならではのオシャレ音楽、ズーク・ラブ。 その斯界の一人者と目されるイケメン歌手が、あらイヤだ・・・・ 激写「深夜のおしのび 鍾乳洞通い」ですって!!! 「世界のいいジャケ10000選」第五回は、カリブの愛の伝道師・HARRY DIBOULAさんの、我と我が目を疑う 公開自殺ジャケの金字塔。 このたびは誠に、ご愁傷様でございます。 さて。我々が住まうこの世界には、さまざまなタイプの悲劇が存在します。 色欲や権勢欲に憑かれた人々の因果な争いが生む、人災としての悲劇。 大自然の仮借ない暴力が人の暮らしを蹂躙する、天災としての悲劇。 そして最後に、ある日ある時ある人が、まるで魔に魅入られたように、自滅の道をひた走るという『霊障』と しての悲劇がある。 そうです。今回ジャケのこの目を覆う悲劇も、霊の障り。 タチのわるい低級霊のしわざに、相違ありません。 さあ、ご覧ください。 平素は『愛の伝道師』を気取るフレンチカリビアンのイケメンの、この生気を失った、馴染みのうどん屋の食玩 を眺めるようなまなざしを・・・・。 私もこれまで数限りないレコード(CD)ジャケを見てきましたが、これほどまでに音楽家の、レコード会社の、 アートディレクターのいずれの当事者意識も感じられない、『思いの真空地帯』のような作品をかつて見たこと がありません。 これでは、もはや日野日出志ではないですか。 本作ジャケに存在するもの。 それは、これまでにご紹介した4枚のいいジャケから迸るような、音楽家&デザイナーたちの手前勝手な陶酔、 あるいは矯正不能の思い込みなどではありません。 意志の敗北、連帯の敗北、人間の敗北なのであります。 |
![]() |
■ 第四回 アンタの達成感 『Vol.6 / D.P. Express』 ハイチ共和国 |
【A面】 高級ホテルでしょうか。 オーシャンビューの展望所へ続く石畳は、くっきり明暗の二車線に分かたれています。 その右側の車線、日のあたる道半分にはなぜか、ホアン・ミロ風に切り抜かれたバンドオヤジが12人。 それはもう、猫の日向ぼっこのようにぎっちり、窮屈そうに・・・・・ 『世界のいいジャケ10000選』第四回は、中米きってのブードゥー大国・ハイチが誇る暴走コンパ急行、 D.P. Expressのご紹介です。 さて1970年代のハイチ本国で、あるいは80年代には移民受入先のアメリカで、ラテン音楽史上に隆盛を きわめたコンパ・ミュージック。 そのレコジャケのアートワークには、あるひとつの不文律がありました。 「ジャケ写にはかならず、参加メンバーの全員が映っていなくてはならない」という、鉄のオキテが。 一見民主的で、イイ話に聞こえるかもしれません。 しかし私が睨むところはちょっと違い、これは単に「大所帯であるほどリーダーが偉く見える」という発想。 いわば、イナバ物置的下世話感覚ではないか。 そう推測するのです。 なぜならそもそもコンパ音楽のジャケ写は、メンバーのおよそ3分の1くらいがヨソ見してたり、目を瞑った 状態でかまわずリリースされるのが常。 すなわち、ひとりひとりの個性が第一みたいな、ゆとり教育的気づかいは一切ナシ。 「とりあえず頭数そろえとけ」みたいな、むしろ族のデモンストレーションに類する心性と思われます。 さて、ジャケに戻りましょう。 ジャケ上部から遠近法により、しつこく3回反復されるグループ名、D.P. Express 。 その一番奥まったロゴの直下で、リーダー近影がまるで御真影のよう微笑んでいる。 そしてこれを源泉とし、川の流れのようにこなたへ溢れ来る、メンバー肖像の悠久の流れ・・・・ といいたいところですが、その川幅は何ゆえか、不可解な建設計画により半分に狭められている。 芋の子洗うオヤジ12人のなんと気の毒、なんと理不尽なことでしょうか。 このジャケを眺める者すべてがまず最初に捉えられるのは、そんな根本からのボタンの掛け違いがひきおこす 途方もないズサンさの感覚です。 そして本来なら特に必要もなかったろうお手製ジグゾーパズルに費やされた、ひたむきな情熱と結構な完成度。 だけどまったき無意味さの印象であります。 デザイナー氏は作品を通じ、我々にこう語りかけます。 「どうです皆さん。こんな狭いスペースに12名の写真貼り付けましたよ。どうぞ私の芸術手腕をご堪能あれ」 しかし、われわれ鑑賞者は、こう声を揃えるでしょうでしょう。 「いいえデザイナーはん。それは芸術やのうてただのアホ。それはまったく一から十まで、アンタの達成感!」 ズサンに駆け出し、ホットに駆け抜ける。 されば、絶妙にいい加減なグルーブがモッサリたちあらわれる。 それがハイチ文化の、コンパ・ミュージック一流の美学なのです。 |
【B面】 最後にこのジャケ、裏返してみましょう。 あと4人、入らなかったようですね。 奥のリーダーがクレームの電話を入れているようです。 ※お詫び的なもの 本稿で語られるハイチは1970年代前後のそれであり 21世紀同国の文化状況を語るものではありません。 |
![]() |
![]() |
■ 第三回 距離 『Under sign of the black mark / Bathory』 スウェーデン王国 |
わたしの名前は サ ~ タ ~ ン ~ 神の敵対者にして すべての悪魔を統べる 地獄の大王 よく聞け 人間どもよ われは汝らに とこしえの嘆きと 絶望をもたらすであろう おそれるがよい わめくがよい われは慈悲なき絶対者 サ ~ タ ~ ン ~ な ~ の ~ だ ~ というようなですね・・・・大体そんなことをね・・・・ 言ってるようです、はい えっ?いや、あの・・・・ 我々撮影スタッフもですね・・・・一応、断崖の真下まで行ってね、必死でね・・・・ 聞き取ろうとしたんですが・・・・声が遠くてですね・・・・ 大体そんな事言ってんじゃないのとか・・・・みんな言い合って・・・・ は?・・・・右手に持ってるもの?・・・・ あ、アレはですね・・・・ええ、わかりません あっ、ですから、我々スタッフもですね・・・・一応断崖の真下までは行ってね・・・・ 望遠レンズでですね・・・・あ、はい、わかりました それじゃあ一旦、スタジオのほうへお返しします~ ああ?・・・・はいっ。 あっありがとうございました。 ・・・中継現場から、井伊鮭記者でした。 「世界のいいジャケ10000選」記念すべき第三回は予定を変更しまして、スゥエーデンの「ひとりスラッシュ・ メタルバンド」 BATHORYの、ご紹介番組をお送りいたします。 さて、本日の未明よりお伝えしております「夏の秋芳洞 リアル・サタン降臨事件」。 なぜか日本の鍾乳洞に正真正銘のサタンが現れ、これみよがしに妖術をふるうという、この未曽有の事件に対し、 全世界からは困惑と抗議の声があがっております。 各国首脳や、ローマ教皇、ダライラマなど宗教界の要人は、「ゆゆしき事態だがコメントは差し控えたい」と、 一様に静観のかまえです。 そして悪魔は依然、洞内のかなり奥まった高台から、何かを訴えるのみの状況。 妖術による壮大な時空のゆがみが確認できる一方、犯行声明はなお聞きとれず、その出現の意図は依然不明の 状況。 そこでこの時間帯は、読唇術の権威・壱萬教授をゲストに招き、サタンの声明の真意にせまりたいと思います。 それでは教授、よろしくお願いします。 今回悪魔は、あのような高いところから、いったい何を訴えてるのでしょうか? え? 映像が遠くてわからない? ああと、それじゃあ・・・・もう少し近い映像でますか?・・・・出る? それじゃあ、もう一度、映像をご覧いただきましょう。 はい。 あらためて、教授。 あのような遠い場所から悪魔は、一体何を訴えようとしているのでしょうか? え? 馬の唇だから読めるわけない? ああ・・・・はい、ありがとうございましたっ。 それでは、著名人からのコメントが出たようですので、ご紹介いたしましょう。 イギリスのロック歌手、オジー・オズボーンさん(61)のコメントです。 「なあ、こいつはバカなのか?バカなんだろ?ストーンしてるんだろ? 俺はなあ、世界で一番最初にな、悪魔が来るって歌ったんだよ。 ずっとな、バカにされながらな。 ずっとだ。 悪魔が来るっぞってな。 でもな、俺はな、一度だってそんなバカなこと、本気にはしなかったさ。 だからよ、こいつはさ、悪魔とかじゃなくて、バカなんだ。 あのブラック・サバスが言うんだから、本当だろ? はん、まったく! どこを眺めても、バカばっかりの世の中だぜ!」 ロック歌手、オズボーンさんのコメントでした。はい。 さて、衝撃の降臨から一日が経過。 緊迫の度を深める秋芳洞ですが、依然サタンの発声は小さく、地上の我々の耳に届くことはありません。 それでは、いったいどのような事情あってサタンは、あれほどの高台にぽつねんとひとり立ち尽くしているのか。 聞かれもしない演説をブっているのか。 このニュースは、続報が入り次第お届けいたします。 さようなら。 |
![]() |
■ 第二回 いい加減の美学 『Doing it / Skah-Shah #1』 ハイチ共和国 |
|
![]() |
■ 第一回 堕ちよ! 生きよ! 『Hasenchartbreaker / Knorkator』 ドイツ連邦共和国 |
この世には、笑いのわからない人が多い。 |