患者さんの側からは、病気について何でも聞ける間柄だと思うのです。医師の立場からは、心配のあまり、たまには手厳しい苦言も言うでしょう。
かつて救急外来の勤務の時です。喘息発作のこどもさんを連れて来られたお母さんです。こどもさんは運良く吸入で発作は改善し、帰るころにはお母さんの腕の中で眠り始めていました。夜間に発作での救急病院受診は3回目、もう喘息の診断はついてしかるべき、「かかりつけの先生は喘息の治療を続けてくれていますか?方針など聞いていますよね?」とお母さんに聞くと、「説明は受けてない。発作が出たらまた受診を、と言われただけ。」との返事。加えて、処方されている薬の名前もわからないほどのコミュニケーション不足が露呈しました。
このようなケースは少なくありませんでした。以前にも触れた事があると思いますが、ここではもちろんかかりつけ医の説明不足も問題ですが、患者さんの側からも説明を聞かなかったことに疑問を持ってないこと、聞かずに済ましてしまったこと(先生が怖くて聞けなかったケースも含めて)が問題です。
かかりつけの関係である以上は、何でも聞けて普通だと思うのです。1度や2度の受診でかかりつけ、と言うのは無理ですが、風邪などで小さいころから受診と言えばここ、と決めている先生がいれば、かかりつけでしょう。かかりつけ医とかかりつけ患者さんは互いにパートナーと考えてください。信頼関係のあるつながりです。病気を抱えるこどもと、職業として報酬をもらって診療をする医師がそこにいるのですが、信頼関係という目に見えないものがそこには芽生えているのです。「治してほしい、治してあげたい。」、「心配できました、少しでも安心して帰ってください。」の関係です。
説明しない、質問できない、説明を聞けない、と言う間柄では困ります。たまに道で会釈するだけの間ではないのですから、ましてや体や心の病気のことで一緒に付き合っていく大事な間柄なのですから。喘息の患者さんなどは、慢性の病気ですからしっかりとした病気の説明と薬の内容を知っておくことが大切です。発作が起これば救急病院にかかり、かかりつけ医以外に診てもらうこともあるでしょう。旅先で万一運悪く発作が出てしまったらどうしましょう?。服用していれば、薬が重複しないようにしないといけないし、知らないと余計な心配が増えるかもしれません。聞いても説明を渋るような医者なら変えた方がいいでしょう。
人と人との関係は一方通行ではありません。説明してくれ、と求めるばかりでなく、互いに謙虚になりしっかりとした信頼関係が築ければ自然と説明も増えるものです。医者も時間がない中がんばって信頼を得るべく、説明をできるだけしましょう。かくいう私もまだまだ不十分ではありますので、心がけるようにしていきたいと思っております。
先生に説明を聞くこつ、それは、ずばり教えろ、説明しろ、ではなく、やんわりと聞いてください。もっと聞きたいことがあれば、「いただく薬飲んでいれば大丈夫ですか、家で気をつけるような注意点はありますか?」、「悪くなった時のサインはどうですか、どんな時に次の受診を考えればいいですか?」というふうに。医者って変わった人が多い(私も含めて?)ので難しいと思いますが、聞き方次第で予想以上に詳しい説明がもらえることもありますよ。
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