ホーム 開院時の思い クリニック理念 コラム リンク集 フォトギャラリー
アクセス What's New

COLUMN

ここには、日頃の診療で役立つと思うアドバイス、私の考えを少しずつ載せていきます。
(※許可なく記載内容を転載したり、公表することを堅くお断りします。)
   19, 坐薬(解熱剤)を使ったのに熱が下がらないのですが?
心配が増すような解熱剤の使い方をしていませんか?熱が出たらすぐに解熱剤を、と短絡的に考えていると、安心するはずの解熱剤で心配を増すことになりかねません。正しい使い方を。
 
 これは以前に、コラムの2でも少し述べたことがあるかもしれませんが。まず基本知識を整理しましょう。誤解していることも多いはずです。
 
1. 熱で体に障害を残すと考えられる異常体温は42℃を超えた場合です。
 
2. 解熱剤は38.5℃(小児の場合)を超えたら使うかどうか考えます。38.5℃を超えたら必ず使う、というのではありません。機嫌が悪い、かなりしんどそう、ぐずって寝つけない、熱でしんどいのか目を覚ます、など熱+αがあってはじめて使うと判断します。
 
3. 熱が続く際、連続して解熱剤を使用する場合は6時間以上間隔を空けてください。
 
4. 小児にはインフルエンザでは使えない解熱剤があり、取り置きすることがあるため、1年を通じてアセトアミノフェンを主成分とする解熱剤しか原則お渡ししていません。
 
5. アセトアミノフェンは他の解熱剤と比べると若干解熱効果が緩やかです。
 
6. 解熱剤はあくまでも熱を下げるだけで、熱の原因の病気そのものを治しているのではありません。熱による体力の消耗を低減するための1つの手段です。
 
7. 熱性けいれんの既往のあるお子さんの場合、心配のあまり解熱剤で熱を下げ続けようと考えるかもしれませんが、解熱効果が切れる時、熱の上昇とともにけいれんを起こしやすくするため、解熱剤の頻回使用はお勧めしません。
 
8. 熱が上昇するとウイルスや細菌の増殖力が衰えるため、発熱は人体の防御反応のひとつと考え、機嫌のさほど悪くない時はむやみに解熱させることが良いとは限りません。
 
9. 解熱効果のある体の冷却法は、腋の下、股の付け根といった太い血管が体表に近いところを走っている部位を冷やすことです。おでこは、冷やせば気持ちがいいのであればしてあげて構いませんが、嫌がるようなら解熱効果は薄いので、しなくてもいいでしょう。1歳未満(自分で剥がせない年齢)ではずれることによる窒息事故の報告があり、おでこに貼付するタイプの解熱剤はあまりお勧めしません。
 
など、理解した上で。
 
 解熱剤の効果は、0.5〜1℃位でも下がればよい、機嫌が改善する、眠れるようになれば良い、と理解してください。
 熱の上がり際に使うと、上昇するのを抑えただけで、数字上は下がっていないこともあるが、見た目に少しでもしんどさが取れていれば効果があったと考えて、心配しすぎないように。
 8のことから、機嫌がいいのに熱に気を取られるあまり熱を下げてばかりは、体にとってマイナスに働く可能性もあると理解する。
 
解熱剤は安易に使わず、子どもの様子をしっかり観察し、ここぞという時に使ってください。さもないと、せっかくの坐薬を使って、「使ったのに熱が下がらない。」と深夜に心配となって救急に走るようなことになりかねません。
更新日時:
2007/07/19
   18, 浣腸は癖になりませんか?
むしろ便秘癖が問題だと思います。
 
 赤ちゃんでも便秘がちな場合があります。しかし、便秘体質というよりは、たまたまということが多いので、1度だけ手助けしてあげれば後は普通に浣腸せずとも出ることが多いです。また、1−2歳までは排便の周期が不安定であり、1日に5,6回する時期があったり、2−3日に1度という時期があったりすることもあります。
 問題となる(継続治療の必要な便秘)は3歳くらいからが多いです。遊びに夢中になり、便意があっても排便に行かず我慢してしまったり、便秘の悪循環で、硬いウンチを出すのがつらくて出さないとか、慢性便秘になることがあります。
 便はお腹に留まれば留まるほど水分が吸収され硬くなります。また、夏場は汗をかくため、体の水分必要量も増えるので、多目の水分摂取を心がけないと、体は便から少しでも多くの水分を吸収しようとするため便が硬くなりやすいです。
 軽い便秘であれば、坐薬、内服薬の下剤を処方し、様子観察していきますが、慢性便秘、便秘癖のついたものは、浣腸を併用することが多いです。
 特に硬くて大きな便をする子、「よくぞこんな大きなウンチがこの小さな穴から出てきたもんだ」と思うような場合は、浣腸を行うことが有効です。大きなウンチがたまる子は、ウンチを溜める腸管が大きく広がりすぎ、ウンチが溜まったという感度が鈍るとともに収縮して便を押し出す力が出せなくなるのです。
 この伸びてしまい広がった腸の管をもとの本来の細さに戻すのに、浣腸が必要なのです。まずは今ある詰まって出口をふさぐ硬い便をすべて浣腸(時には指で便を掻き出す、摘便という荒療治)で出してしまいます。次に下剤を内服しながら、排便がなければ1−2日ごとに浣腸し、便を溜めない状況を作り出します。そのうちに伸びた腸管はもとの細さに戻り、便が溜まるとそれを感知し、収縮がしっかり起こり、便を排泄する、という本来の機能が発揮されるのです。
 意外かもしれませんが、腹筋の未熟な幼児では便秘はまれなことではありません。気付いて早めに治療する方が、改善が早いというのは、これまでの説明でわかっていただけたでしょうか。
 しかし、1つだけ注意です。本来なら生後すぐに見つかることの多いヒルシュスプルング病というのがあります。これはウンチの溜まるところの腸管の神経がないところがあり、腸が収縮しないため便が出ないという病気があります。これは多くの場合乳児期に手術が必要となるのですが、この病気の軽症例では、治療でもなかなか改善しない便秘として幼児期まで発見されずにいることがあります。
 ですから、便秘の習慣のある場合は放っておかず、本当に便秘癖がついてしまわないうちに医師に相談してください。また時に先にあげた病気が治療のうちに見つかることもあります、注意です。
 最初のテーマの問いの答えですが、お年寄りは筋肉の低下もあり、排便能力が低下しますから、浣腸しないと出ないようになってくると、浣腸癖という状態になることが多いです。しかし、子どもの場合は逆で、便秘癖にならないようにしばらくは浣腸と下剤の使用で排便習慣をつけることが大切なのです。安定した排便が2−4週間続くまで治療を継続することもあるくらい、便秘はしっかり診てあげなければいけない問題です。
 
大人まで続く便秘習慣にならないように、しっかり医師の指示に従って、必要な期間浣腸を続けることが治療になります。子どもの将来は長いです。便秘や痔で悩まないように、思い当たる時は相談してください。
 
更新日時:
2007/06/28
   17, 医療は365日、24時間いつでも平等に患者様に提供されていると思いますか?
答えはNoです。休日よりは平日、夜より昼間の方が受けられる医療は充実しています。
 
 これはある程度イメージできると思いますがいかがでしょうか?
 休日はほとんどの医療機関が休診しています。したがって受診するとなると、選択の余地なく開いている医療機関を探して受診することになります。救急車でさえ受け入れ可能医療機関を見つけるのに苦慮することがあるくらいです。同様に、昼間は多くの病院が開いていますが、夜はせいぜい20時くらいまででしょう。それを過ぎると夜間診療所や数少ない救急病院をあたることになります。ここでも救急車が受け入れ先をなかなか見つけられないことがあります。
 また、休日夜間診療所でこんなことを言われたことはないでしょうか?「今日は十分な検査が出来ないので明日再診を受けに来てください。明日は検査できますので。」ひどいケースは電話で「今来てもらっても検査も出来ません。熱だけなら坐薬で今日は家で様子見てください。」とか。もちろん緊急時には必要最小限の検査を、病院で設備があれば行うでしょう。しかし、なかなか十分とはいえません。
 休日、夜間は、医療従事者といえども人間ですから休息のため多くは休みます。しかし、急を要する人もいますから、最小限の人員で急患に対応する体制をとっています。
 何が言いたいのか、365日24時間、100%の医療を提供せよ、と言う気は毛頭ありません。それでは医療経済が破綻してしまいます。私が言いたいのは、突然の病気は予測しようがないので休日夜間は救急受診は止むを得ません。しかし、ある程度明日は休みだ、とか今を逃すとかかりつけの先生の夜診も終わるなぁ、と思えば行き詰る前に受診し、見通しをつけてもらっておくことが大切だ、と言いたいのです。それも病名を聞くことも大切ですが、それよりも見通し、悪くなった時のサインを聞いておき、万一の時に救急受診する時の目安を教えてもらい、休日夜間に慌てなくてもいいように備えるのです。
 医療提供側も当然ながら、診療のスタイルが若干変わります。明日が診療日なら、しんどかったら明日も受診してくださいと伝えて帰宅とするところが、明日が休みで診察ができないなら、念のため血液検査して見通しを立てておこうか、とか、病院の開いている間に紹介して検査含めてよく診てもらっておこうか、とか考えます。ここで、うちのかかりつけ先生は何かあれば大きな○○病院行きや、といって帰宅させはるなぁ、という人もいるでしょう。しかし、受け手側の病院にとっても、何の経過情報もなく患者様が休日夜間に来られるよりも、紹介状を持ってそれまでの経過や診察所見の情報があるほうがありがたいと思っていますし、ましてや検査の十分できない時に受診していただくより、できる時間帯に紹介してもらうほうが良いと思っています。
 
 より良い医療サービスを受けるには、患者側と医療提供側に見えない暗黙のルールのようなものがあるのです。
 
 そこをわきまえないと、休日夜間診療所で、患者サイドの、「心配できてあんなに待ったのに、検査も無しで坐薬だけ出されたわ」とか、医師側の「熱ぐらいでこんな時間に受診して」という顔には出せない不満足な診療関係が時に生まれてしまうのです。
 
 最後に誤解のないように、休日夜間に受診するな、と言っているのではありません。上手く受診すれば、患者さんも医療提供側もより良い医療関係が築けますよ、と言うお話です。
更新日時:
2007/06/05
   16, うちの子アトピーかどうか、血液調べてもらえますか?
アトピー性皮膚炎に限らず、アレルギー疾患の診断は血液検査で行うものではありません。
 
 診断は、アトピー性皮膚炎は湿疹の状態から見た目で診断となります。喘息も聴診所見から診断します。アレルギー性鼻炎は粘膜所見、エピソード(例えば花粉散乱期の鼻炎)などで目安を立て、鼻汁中のアレルギー細胞の存在確認でほぼ診断できます。
 血液検査はあくまでも参考です。例えば、アレルギーの症状のない人でも、検査でIgEというアレルギー抗体が陽性となる方もおられますし、逆にアレルギー症状があるのに、血液検査でまったく異常がないという人もいます。でも、症状のない人に検査で数字が出てるからといって、アレルギーです、とは言えませんし、症状のある人に検査で異常ないから、あなたはアレルギーじゃないはずだ、とも言えません。
 血液検査の捉え方としては、まずアレルギー疾患があると診断された人に、検査上数字で異常があった場合、それを参考にアレルゲン(アレルギーの原因物質)の特定とその程度の強さで、アレルゲンの除去を行えば症状の改善が見込めるのではないか、という目安とすることが多いです。
 しかし、検査上異常ない人も症状がある限りは、何に反応しているのか検査ではわかりませんが、検査で問題にならなかったアレルゲンは大丈夫だと思い込まない方が安全です。
 アレルギーが心配な方はたくさんおられます。しかし、検査ばかりに気を取られず、かかりつけの先生とよく相談し検査すべき時期を考えていくと良いでしょう。注射の痛みを負うのは子どもです。興味だけで安易に検査して結局異常なかった、ということのないようにしましょう。
 検査すべき時期は?もちろん、ひとそれぞれですが、普通は症状も強く、アレルゲンの特定と程度の評価が治療に不可欠と判断された場合です。以下はある程度個人的な見解ですが、赤ちゃんの場合は、できれば6か月を過ぎてから。でも、あまりに症状が強い時は離乳食開始時期、それも待てないくらいの時は離乳食開始前でも検査し、結果によっては母乳を与える母親の食事制限を加えることもあります。
 
アレルギー疾患の安易な診断は家族を含め、周囲の過剰な反応を招きます。診断および検査するかしないか、するならその時期は?など、かかり付け医とよく相談しましょう。アレルギーは治療してすぐに治る病気ではありません。よく話をして気長に、主治医と家族の皆さんと協力して治療に取り組んでいきましょう。
更新日時:
2007/05/11
   15, どこでうつったんでしょう?これって他の人にうつりますか?
子どもの受診患者さんの90%以上が風邪や胃腸炎といった感染症(ウイルスや細菌が体に感染し症状をきたすもの)であり、人から人にうつります。感染源はさまざまであり、どこでうつったか推定できないことも多いです。
 
 病原体(ウイルスや細菌のこと)はうつる経路が、主に3つあります。1つは飛沫感染と言って、咳やくしゃみをした時に出るウイルスを含んだ唾液の細かい粒子を、他の人が吸い込んでしまう場合。普通の風邪はこの感染が多いです。2つめは、接触感染と言って、唾液、吐物や下痢便に含まれる病原体を、掃除やおむつ交換時に触ってしまい、食事の時に口から病原体をを取り込んでしまう場合。乳幼児では物を手に掴むと舐めるという特徴があるので、よくこの経路で風邪や胃腸炎になるわけです。これはロタウイルス、ノロウイルスといった胃腸炎で多いです。3つめは空気感染です。これは病原体が空気中に浮遊するため、同じ部屋にいるだけで感染する可能性があります。これはごく限られていて、はしか、みずぼうそうと結核くらいです。
 ですから、病原体が原因となる感染症は、いずれも当然人にうつる可能性があるわけです。そのため、コラム14でも述べたように、時間と空間を出来る限りずらして患者さん同士の接触を避けるようにしている訳です。
 では予防法は?1の飛沫感染の場合は患者さん自身もさることながら周りの人もマスクをつける。うがいをする、などです。2の経路、接触感染に関しては、手洗いです。吐物などを掃除した後を消毒することも必要です。しかし、乳幼児が物を舐める特性は防ぎようがないところです。3の空気感染は同じ空間にいないようにするしかありません。
 
病原体は目に見えないものなので、がんばって予防を試みてもうつることがあります。人から人にうつりますし、感染経路もいくつかあり、どこでうつったかもある程度推定できても特定することは、不特定多数の集団発生(食中毒のような多くの人の共通点からどこが感染源か特定する)がないとまずわかりません。
更新日時:
2007/04/29

PAST INDEX FUTURE



Last updated: 2012/7/5

okudako@hotmail.comメールはこちらまで