病気のときの受診の意味は、病気の診断と治療、それに説明を加えることで少しでも不安を軽減することです
小児科の患者さんは初診患者さん(病気をして初めて受診する方。それに対し、再診患者さんとは、病気になって2度目以降の受診者を指します。)が多いので、診察に時間がかかります。同じ風邪ひきでも前回と今回は原因のウイルスが変るかもしれませんし、症状も熱がメインなのか、咳がメインなのか、その都度病気の状態を把握するため受診のたびに一通りの診察をします。
また、時には病気でなく育児相談であったり、耳慣れない病気の診断をつけたときは、親御さんに十分理解していただくために説明に時間を取ることもあります。
それはすべて、受診された方に少しでも安心して帰宅していただくためです。
風邪です、と言われて帰ったのに熱が続き、結果的には無事治ったが不安の強い日々を病気で辛そうな子どもさんと一緒に過ごしたことはありませんか。確かに病気ですから不安なしに見ていけるということはないでしょうが、「もう2、3日熱は出ますがそれくらいから解熱し始め食欲も出てくるでしょう。もし予想通りに行かず、熱が続く、急に水分も摂らなくなるなら薬あっても受診をしてください。」とかアドバイスを受けていればどうでしょう。「かぜだから大丈夫ですよ。」だけで帰宅したときより心づもりが出来ませんか。
子どものよくかかる風邪はまずほとんどの場合、時期が来れば必ず治ります。ですから、別に説明も少しで「風邪です。」の一言でいいのですが、受診しようと思うほどの心配があって来られたのですから、少しでも安心して、お家でポイントを押さえた自宅看護をして頂きたいと思うわけです。
見通しを心得ていれば気持ちが落ち着きますし、見通しから外れた経過ならそれが再診のタイミングです
なぜ説明の時間を取るのかおわかり頂けたでしょうか。その結果、患者さんの病気によっては診察説明に時間がかかることがあります。でも、その説明により家で少しでも安心して看れる、再診を繰り返さなくて良かった、などのメリットが出てきます。
心配だから毎日受診しました、というのも悪くないですし、そういう必要もときにありますが、できれば頻繁に通院するというのは避けたいものでしょう。
我々からすれば、正直何度も受診して頂くほうが得られる診療報酬(収入)は増えるといえますが、まずは患者さんの負担を増やして得るものではありませんので、私は、説明を充実し、不要な再診回数を減らすことが一番と考えています。
説明の少ない診療では、親御さんの病気に対する知識も増えませんから、救急受診もなかなか減りません。知識が増えれば子どもの成長とともに、病気の際の受診が減っていくのです。
時間をとれば他の患者さんをお待たせすることにつながりますが、私は、説明を診察治療と同じか、それ以上に大切なものと考えて診療に取り組んでいます。皆様にご理解頂けるとうれしいのですが。
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