迷う場合は、電話で様子を聞かせて頂き、まず小児科に受診することをお勧めします。
小児科はお医者さんの中では「何でも屋さん」に当たります。他の科と違い、呼吸器科、循環器科、などとはっきり分かれていません。子どもはまず小児科に受診し、必要に応じて小児科の中にある、小児循環器、小児腎臓、小児神経、といった各専門医に振り分けて紹介したりします。
子どもを診ることで大切なのは、症状を自分で十分表現できないので、小児科医は、お母さんの見た子どもの様子、その時の流行している病気、診察所見、予防接種歴、これまでにかかった病気など、少しでも多くの情報を得、総合して病気を見極めていきます。従って、他の大人を診る科とは随分異なりますので、子どもを診る姿勢(泣いていても辛抱強く診察し、情報を得ようとする)と情熱が大切です。
風邪の子どもさんに風邪です、ということも大切ではありますが、こじれそうではないかとか、他に見逃してはいけない問題は潜んでないかとか考え、見通しがわかれば予測される先の経過を親御さんに説明し少しでも多くの安心を持って帰っていただきたいと思っています。時には、風邪で受診され、風邪ひきは大して問題ないが、他に後回しにできない問題を目にすることがあります。たまたま発達障害に気付くことや、気付かれないままだった斜視(寄り目など)年齢からはありえない幼児の乳腺腫大(おっぱいがふくれてくる)とか、薬の副作用と思ってたらネフローゼ症候群という腎臓の病気でのむくみだったとか、子どもは全体として大きく診てできるだけ見落としなく診療を進める必要があります。要は、症状の出ているパーツを診て問題なしと早合点しないことが大切です。
私も医師になりたての時は、赤ちゃんの診察がとても不安でした。診察しなれていないので、見落としがないか不安だったのです。でも、未熟児センターで多くの未熟な赤ちゃんを診、500グラムで生まれてきた赤ちゃんを無事安心な状態まで診た時、こんなに小さな赤ちゃんが診れるのに、普通に生まれた赤ちゃんが診れない訳ない、というくらいの気持ちが湧いた時にようやく小児科医として、すべての子どもが診れる自信がつきました。私ですらこうですから、他の科の先生は、小児外科の先生以外は、大人をメインに診療されておられるでしょうし、小さな赤ちゃんの診察は小児科医の協力が欲しいと思っておられると思います。
いろんなご意見が医者の中にもあると思いますが、私としては、自分で辛いところが的確に言えるようになるまではまず小児科受診でよいのではないかと思っています。例えば、こけて足を痛がっている、という時は明らかに整形外科でしょうし、目に手がぶつかって目を痛がっていれば、眼科。さっきから耳が痛いと言っています、なら耳鼻科。でも、こけた様子もないのに足を痛がる、鼻水が出てるけど鼻だけの問題?と思うときなどは小児科に受診し、必要なら小児科的には問題ない様子だから、整形外科に行ってみましょうとか、鼻以外に問題はないので耳鼻科に行ってみましょう、というほうが良いでしょう。やはり、小さなことに目が行って、大きな問題を見落とさないようにすることが大切だと思います。
このところ受診を迷われて相談を受けることが多かったので、このコメントに至りました。我々小児科医も専門外を見落とすことがあるかもしれませんが、大事なことはより重大な問題を見落とさないことです。受診先に迷った時は「何でも屋」の小児科にご相談を。
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