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新しい視点で活動する NINDOU ASSOCIATION

講演会Seminars

講義内容


漢方講演会(主催:忍冬の会)

日 時:平成25年3月17日(日) 13時〜16時30分
場 所:コミュニティー嵯峨野(JR山陰線「嵯峨嵐山駅」)


    万病の基、糖尿病はなぜ減らないのか

                            
滝井医院 瀧 井 宏 隆
(歴史を知ることの大切さ)
日本人の体の歪みは21世紀に入り、益々顕著になっています。
現代医療では高度先進医療が持てはやされて養生の指導がないがしろにされています。
東洋医学では“扶正?邪”を目標とし、養生の基本は“冬病夏治”と四季の養生法を重視しています。中阿含経に医術の要諦は四諦(苦・集・滅・道)を弁えることと書かれています。

四諦とは糖尿病の増加を例に説明すると
■ 苦諦:日本は1945年の敗戦を経て1950年代から経済至上主義社会となりました。小児肥満に代表される小児成人病という呼称は1970年(S45)から言われだしました。1980年(S55)にはカローラジョージア症候群(肥満症、糖尿病、がん、冷え症、アレルギー性鼻炎等)が多発するようになりました。糖尿病患者数は1960年(S35)に14−5万人が1970年にはまだ30万人でしたが、2007年(H19)には890万人に、2011年には1,070万人に激増しています。今日、日本は“糖尿病列島”となり、日本人が糖尿病で四苦八苦する時代になりました。

■ 集諦:国は1978年(S53)から“国民健康づくり対策”を、日本医師会は2005年(H17)から、“日本糖尿病対策推進会議”を立ち上げたが、糖尿病増加に全く歯止めがかかっていません。厚労省は糖尿病増加の最大要因は食生活の乱れと運動不足で肥満が増加したと人事のように言っています。

■ 滅諦:糖尿病を減らすには欲望を減らし、分を守る生活習慣に戻る時です。今日、日本人の食生活の乱れは極みに達しています。2004年(H16)からは果物消費量日本一はバナナ(甘・寒)に、2006年(H18)には肉類消費量が魚類消費量を上回るようになりました。更に、2007年(H19)からはケータイ・パソコン症候群(視野狭窄、視力低下、交感神経興奮、肩こり、腰痛、冷え症、入眠障害等)の多発時代となり益々、運動不足は深刻化しているのが現実です。

■ 道諦:日本人よ目を覚まし、立ち止まり、自分の足元を見よ。糖尿病撲滅の究極の教えは黄帝内経にある養生法の要諦“恬澹虚無”と“人ト自然トハ相応ズ”を弁え、これを日々実践することである。


(視点を変えて砂糖・塩・車・自動販売機から見えてくること)
1970年代までは稀な疾患であった糖尿病がなぜこれだけ増加したのか。最大の原因は生命活動に必須な“微量ミネラル不足”ではないだろうか。日本人は砂糖の害、塩の大切さ、車や自動販売機の弊害に全く無知である。

● 砂糖:上白糖は白い麻薬です。日本では1952年(S27)から粗糖が上白糖や三温糖に変わりました。世界中で日本でしかこのような砂糖は生産されていません。上白糖、三温糖は年間230万トンも生産、消費されています。粗糖はミネラルたっぷりなので美味しく食べられますが、上白糖、三温糖は小匙一杯も食べられない代物です。上白糖は摂取されると我が身を削り体内のB1とCaを使いブドー糖と果糖に分解されエネルギーになります。上白糖は体を冷やし、利尿を抑制します。今日の子ども達の倦怠感、骨折、冷え症、アレルギー性鼻炎等の多発原因は上白糖の過剰摂取ということに気付くべきです。

● 塩 :塩は生命の糧、塩ハ百肴ノ将です。1971年(S46)まで日本の塩は主に瀬戸内海の塩田で取れた自然塩(煎熬塩)でした。自然塩には“苦汁”という微量ミネラルの宝庫が含まれています。1960年代までの塩蔵物(梅干、漬物、塩昆布、塩サケ、塩クジラ等)は非常に後味のよい副食でした。日本人が決定的に微量ミネラル不足になったのは1971年に“塩業近代化臨時措置法”で、公害で汚染された瀬戸内海での塩田が廃止されてからです。1972年(S47)から自然塩の代わりに海水から“イオン交換膜法”でNaCl 99.55%の化学塩(精製塩)が年間140万トン生産されるようになりました。化学塩は食べられない代物でアサリ貝も水管から水を吹かず梅干や漬物も漬けることが出来ません。塩の大切さが蔑ろにされたのは1978年に国が国民健康づくり対策で、食生活の指針(1日30品目、牛乳礼讃、減塩)を決定してからです。誤った食生活の指針で“塩分控え目”が流行語となり今日に至っています。塩の防腐作用は塩分濃度が15%を切るとなくなります。減塩した加工食品には防腐剤が、味が落ちるので化学調味料や砂糖の添加が必要となります。日本にはこのような加工食品が溢れ、年間一人当たり5〜6kgの食品添加物を摂取しています。その結果、難病や奇病が多発するようになっています。現代カロリー栄養学では気候風土や民族性を無視した指導が行われています。その典型例が日本は高温多湿の島国なのに砂糖は取り放題で水分はこまめに摂取した一方で減塩の指導です。肝心要なことは1Lの尿を出すには7gの塩が必要であるという基本的なことが無視されています。減塩すれば尿量が減少し発汗過多となります。鹹味のものは腎を補う大切な役目がありますが、塩と水にはカロリーがありませんので今日の栄養学では全く重視されていません。

● 車と自動販売機:日本には1945年(S20)の敗戦後の“国敗れて山河あり”の状態から復興が始まりました。1955年(S30)には保守合同で自民党が誕生し、政治家、官僚、財界そしてマスコミの癒着が始まり今日に至っています。1955年の三種の神器(TV、冷蔵庫、洗濯機)に始まった、経済至上主義社会(大量生産、大量消費、大量廃棄)はマスコミに乗り、1966年(S41)には3C時代(カー、クーラー、カラーTV)へと移って行きました。1966年にはトヨタがカローラを発売し、カローラは世界一の販売台数を誇っています。1970年には大阪で万博(テーマ:人類の進歩と調和)が原発の灯を始めてともして開催されました。万博では初めて紙パックのコーヒー牛乳が自動販売機で発売されました。1970年の自販機台数は日本中で14万台でした。1975年(S50)にコカ・コーラが缶コーヒーのジョージアを発売し、ジョージアは清涼飲料水販売数、日本一を誇っています。ジョージア1缶には18gの上白糖が含まれていますので、1日に5缶飲めば1日90gの砂糖を摂取するようになります。カローラに乗り、ジョージアを毎日5缶飲めば3年後には糖尿病を発症しています。自販機では1年中10℃のコールドドリンクが販売されています。人間の食道温、直腸温は37℃です、なぜ10℃のコールドドリンクを販売しなければいけないのか。糖尿病の増加は1980年からカローラに乗りジョージアを飲み始めてから始まりました。

(三つの提言)
糖尿病撲滅には便利さの弊害に気付くこと
@  ミネラル不足の改善、上白糖、三温糖は粗糖に、化学塩は自然塩に
※本物の味を忘れていませんか
A  歩くことの大切さに目覚める時
人類学では人間の定義を“人間は直立して二本足でうまく長く歩く動物”と規定しています。生活習慣の改善は自然の中を自分の足で連続1万歩(7km、1時間45分)でなく1万5千歩(10km、2時間30分)歩ける足づくりからです。
  ※人歩けば病気治る
B 自動販売機は不必要
飲料の自販機は2011年253万台(40%がコカ・コーラグループ)・・・自販機の消費電力は原発一基分
飲料の自販機での販売に占める割合は3割
  ※コールドドリンクから温かいお茶へ




陰陽五行論の基礎

忍冬の会代表 須藤 朝代

 科学の世界では、通説を疑ってかかれと言われます。ですが、この2000年の歴史に裏打ちされた漢方医学を学習し、それを成合としている当方の立場は、ひたすら記載されている事は疑う事なく事実であると考えていきます。記載している事が理解されない時は、それは自分の知識、経験がそこに至っていないのだと反省します。
 漢方医薬学が、医学部、薬学部教育に取り入れられましたが、漢方医学の治療のものさし″となります陰陽五行論″陰陽虚実″気血水論″などの教育は少なく、方剤中心で病名と作用が大方の教育となっています。
 数年前より、漢方医薬学を学習した学生が、医療者として社会で活動する様になりました。しかし、医療現場も同様に、病名を中心にした西洋医学的な機械検査による検査結果に基づき漢方薬を投薬しています。それも漢方医学の1つの方向ではありますが、本来の漢方医薬学独自の方程式を使いこなさなければ漢方医薬学の素晴らしい治療効果を得る事は難しく、現代医学が難病、奇病と位置づけている患者を救出する事は不可能となります。目に見えない、数字に置き換える事ができない陰陽バランス″をとる事により、証(しょう)を経験により会得する事ができれば、
医系薬系漢方家を問わず多くの患者の救世主となり得るし、漢方医薬学が未来医学として将来に継承されていく事でしょう。

                  健 康 12 則 

   @ 平常心            F 精力(男性)・生理(女性)が順調
   A 快眠             G 快小便
   B 臓腑器官の無意識       H 皮膚の乾は○ 湿は×
   C 平脈(正常な脈)       I 快食
   D 安息(正常な呼吸)      J 頭寒足熱
   E 快大便            K 腹証・長寿線
                                    
( 渡邊 武 )

               先 天 の 精 は 腎
               後 天 の 精 は 脾

 頭 寒 足 熱 
● 湿度の高い日本では、腹中の冷え(余分の水)が大方の病因となる。

● 腎経、肝経に配当される生薬が少ない。
      ↓
日常的に生活の中で梅干が摂取されていた。

● 人間の中で一番大きい袋は大腸であり、二番に大きいのは胃袋である。
      ↓
五苓散・ヨクイニン・芍薬

 漢方薬が効かなくなった 
日本の風土を無視した食の変化。天然塩(昭和46年までの塩)から化学塩に置き換わった。

健康の基本は頭寒足熱にして、下から出し、上から入れ、気、血、水のスムーズな巡りを作ることである。病の重い方ほどその巡りが悪くなり、食べた物がヘドロ化している。生きていくのに多くの食べ物は必要なし。



           自然界の陰陽・人体の陰陽

自然界の陰陽       人体の陰陽

温・熱

涼・寒

春・夏

秋・冬

朝・昼

夕・夜

東・南

西・北

青・赤

黒・白

湿

動物

植物

頭・上肢

下肢

湿

上半身

下半身

左上半身

右下半身

右上半身

左下半身

肝・心

肺・腎








       漢方薬が効かなくなった
           
                渡邊 武

 新しく漢方を採り上げられた医薬学の学徒から、江戸時代から近代の漢方の先哲の治験例では、一刀両断見事な切れ味が示されているのに、それを追試してみても、さほど効果が見られないではないかとの、漢方薬不信の声を聞くようになった。勉強不足の未熟のせいと云ったらそれまでであるが、それなりに理由があることを指摘して、対応策を講じることの、必要性を説いている。
 第1の理由は、漢方薬は煎剤・丸剤・散剤として使用したもので、今ではエキス剤で効果を論じている事である。さらにエキス剤はメーカーにより原材料・配合比・抽出法・製剤法・エキス量・有効成分量・力価等がまちまちで、雲泥の差があることである。
 第2の理由は、漢方家が薬師と云われた時期の治験で、先哲小野蘭山が「医ハ拠ルベキモノハ方ナリ。方ハ待ツベキモノ薬ナリ。」と述べているように、古今の漢方家は方剤の基本である本草の達人であった。今日の日本の医系漢方はその基本を捨てた方剤中心の漢方で、薬物選定の物差しはもっぱら病名と作用に限定されている。
 先哲の治験に並ばんと望むのなら奮起一番して、本草の基本に立つ陰陽虚実・原因論的の正しい気血水論・汗吐下和の漢方の治療原則・五味五性の薬味薬性を基にした陰陽五行・薬物の証と処方の証等の薬物選定の優れた鍵を習熟した本来の「薬師の道」に復帰すべきである。
 第3の理由は、戦前戦後の日本人の体質の変化である。社会環境・自然破壊による生活環境の悪化・ストレスの激増、それに加えて食生活の混乱が・老齢化社会の陰に1億半病人時代を控えている。漢薬はそれを支えるのが精一杯で、賽の河原を演じることになる。従って此れ迄のように単方ではかたづかなくなり、加方・合方・併方が必須条件になってくる。
 これらの中でも、最も公害が大きく、漢方家が直接関与改善を図れるのが、五味の調和による正しい食養(食物療法)の分野である。身土不二の原則、自然の恵みの旬の物を健康に安価に食べることを忘れた、自然の原則に反した愚かな食文化の是正である。精製糖の氾濫と欠陥食塩の専売制度による強制と欧米人の減塩普及運動の蔓延の阻止活動である。古来健康のバロメーターとした「塩梅」の復活である。「塩梅」を忘れた報いが、肝胆疾患と腎疾患の激増を来して、腎不全から透析・腎移植と今や泌尿器疾患は治療から外れて、人間の機械化と部品交換作業に転落しているではないか。動物食と貯蔵食の増加に反して、刺激物の名のもとに、腐敗・発酵・黴を防ぐ、香辛料の摂取不足による皮膚疾患・アレルギー体質・花粉症・神経症の蔓延など、現代日本人の歪みの阻止と改善は、正しい食養の実践にかかっている。
 漢方薬の効果を阻む要因がこれだけ山積しては、漢方薬が効かなくなったの誹りが出ても不思議ではないし、それは医聖張仲景先生の責任ではない。
                              漢方の臨床 より


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