脱力トレーニング体系 脱力トレーニングで取り組む内容は多種多様。本来はそれぞれのトレーニングがネットワーク的に作用するのですが、あえて体系化することで、理解の一助に。

脱力トレーニングの3本柱

脱力トレーニングは、ある「感覚」を捉えるためのものです。
ただ、現時点で感じられていない感覚を認識するのはとても難しいです。
生まれつき目が見えない方に色を説明することが困難なように。
そこで、以下の3つの感覚を頼りにしてトレーニングを進めていきます。

重力感覚、流体感覚、中心感覚

1.重力感覚

物理学における、世界を形作る4つの力。
それは、「重力」「電磁気力」「強い力」「弱い力」の4種類。
そのうち「重力」の占める割合は約70%。
つまり「重力」を力として使うことが、最も合理的に動く方法と言えます。
幸い地球上には1Gという重力が常にあまねく働いています。
ただそれがあまりにも当たり前に働いている為に、力として知覚することが難しいのです。
脱力トレーニングの大きな目的の一つがこの重力を知覚し、自分の力として活用することにあります。

重力

2.流体感覚

人体の60%~70%は水分でできています。
知識としては、ほとんどの人が知っていることでしょう。
ですが、自分の身体の60%以上が水であると、ハッキリとした実感を持って言える人がどれだけいるでしょう。
スポーツに真剣に取り組んでいる人でさえ、多くが固体力学を元に考えられたトレーニングを続けています。
繰り返しますが、身体の60%以上は水分なのに、です。
脱力することは、身体の感覚を固体から流体に近づけます。
身体を本来の在るべき形で扱うことが、自分のパフォーマンスを100%発揮することにつながるのです。

流体

3.中心感覚

例えば10kgのバーベルを持ち上げるとしましょう。
端っこと真ん中、どちらを持って挙げるのが楽ですか?
普通に考えれば、真ん中の方が楽ですよね。
物体を動かす時には、その中心を動かすことが最も効果的です。
そしてそれは、自分の身体を動かす場合でも同じ。
歩く、走るといった移動において、足で地面を蹴って動くのは、バーベルの端っこをもって持ち上げるのと一緒です。
身体の中心を知覚して、そこを動きの始点とする。
そのためには、今までの習慣である手足や頭といった、末端から動き出すことをやめる必要があります。
脱力トレーニングは、今まで疑問にも思わなかった習慣をやめていくものなのです。

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中心

トレーニング形式による大分類

1.姿勢のチェック

立つ・座る・寝る・構えるといった様々な姿勢を取る中で、その姿勢が理に適っているかどうかを相対でチェックしながら確認します。
私が指導を受けている武颯塾ではこれを「養体(ようたい)」と呼んで、全てのトレーニングの基本に据えています。
まずは止まっている状態で、「重力感覚」「流体感覚」「中心感覚」に意識を向けてみる。
意識を向ける感覚を変えることによって、身体が変わることを確認します。
相手のチェックがある中で、どういう感覚でいれば安定していられるのか、本当に自然な姿勢を取るとはどういうことか。
養体では、あらゆる動作の基本・基準を学ぶのです。

姿勢矯正

2.脱力流体

とにかく身体の力を抜いて、固体から液体に近づけるトレーニングです。
身体の中心からグニャグニャに動くことで、波打つような動きと力の伝達を感じます。
このトレーニングにおいては、普通の武道では必須ともいえる「軸」の感覚を、とりあえず一旦脇において行います。
見た目は非常にアレですが、「動く=筋力」という当たり前になった習慣を取り去るために、必須のトレーニングだと言えます。
また、普段動くことの少ない股関節や背骨、肩甲骨といった部分を大きく動かすことになり、身体が中からスッキリするという効果もあります。

脱力流体

3.落下・傾き・崩れ重み伝達(重力・中心)

重力を力に変えるための一番簡単な方法は、落ちることです。
自分が落下することで生じた運動エネルギーを使って、相手や物体に力を伝える。
その為には、身体が緩んでいることと、軸や中心がブレないことが必要になります。
そして真下に正しく力を伝えられるようになったら、今度は身体を傾ける(=倒れる)ことで力の方向を変化させます。
ここでの大きな目的は、重力を力として使うことで、自分の筋力を使わなくても力を出せる「感覚」になじむことです。

重み伝達

4.上昇ベクトル伝達

重力にしたがって落下する力をある程度使えるようになったら、今度は上向きの力を出す方法をトレーニングします。
重力という下向きの力が常に働いていることは同時に、「抗力」という地面からの反作用の存在も意味します。
「効力」を正しく使うことで、上向きの力も筋力を極力使わずに発揮することが出来るのです。

抗力伝達

5.重心移動

養体による姿勢がある程度正しく取れるようになると、次は養体が崩れないように動くことを学びます。
ここまでに紹介した4つのトレーニングは、まずはその場で行うものでした。
対してここからは、身体を合理的に移動させる方法をトレーニングします。
脚力で地面を蹴った反動で動く一般的な移動とは違い、重心そのものを移動させることで身体を動かします。
その為には上記1~4のトレーニングがある程度出来ていることが必要です。
重心から動き出すことで、「相手に読まれにくい」「より大きな力を発揮できる」「バランスを崩さない」といった効果が期待できます。

重心移動

6.勁力を使う

RESETSTYLEでおこうなうトレーニングは主に上記の1~5になります。
ただ、重心移動が正しく出来るようになると、その時に地面から身体の中を通って相手に伝わる「力」、それ自体を感じられる頻度が増えてきます。
すると大きく重心を動かさなくても、その力が発揮されるように重心をコントロールすれば、相手に力を伝えられるようになります。
このように「力」それ自体を認識して自在に扱えることが、RESETSTYLEのトレーニングの当面の目標になっています。

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勁力発揮

身体部位による分類

1.腕(肩・肘・手首)

人の身体運動における最大の特徴といえばやはり、直立二足歩行ということになるでしょう。
四足獣においては前脚だった部分を、「腕」として自由に扱えるようになりました。
その結果、様々な道具を作り、そして利用することで、現在のように文化的な生活が送れるようになったことは、誰もがご存じのとおりです。
実際、多くのスポーツや芸事において、腕を使うものは数多くあります。
むしろサッカーなど、「腕を使わない」ということが、却って競技の特徴になるほどに、腕を使うことは当たり前なのです。
そういう意味においては、この「腕」の使い方が上手くなることが、個人の文化的能力を発達させるための必要条件だと言えるでしょう。
ところが、です。
多くの場合、腕を効果的に使うことは思ったよりも難しい。
細かい作業をしようとしても、逆に大きな力を出そうとしても、肩やひじが力んで固まってしまう。
結果として、前脚という体重を支える役割から解放されて得たはずの、本来持っている自由な動きを損なっているのです。
そこでまずはこの、脱力した腕の自由な動きを取り戻すことから始めます。
人の脳の運動野の大部分は腕(手を含む)の為に使われています。
ですから腕の使い方や脱力感が分かることで、身体の他の部位への応用が出来るようになるのです。

腕

2.体幹(胸・背・腹・腰)

腕の脱力感が少しずつ感じられるようになると、続いて体幹の脱力トレーニングへと進みます。
RESETSTYLEのトレーニング目的の一つに、「末端主導の動きから、中心主導の動きへの転換」が挙げられます。
人体における末端とは手足のことであり、中心は体幹ということになります。
ですから極端な話、現時点で感じている手足を動かす感覚よりも、よりハッキリと体幹を動かす感覚を感じる必要があるわけです。
最近でこそ体幹トレーニングの必要性が認識されるようになり、取り組まれている方も増えてはいるでしょう。
ところが多くの人にとってはまだまだ、体幹は未開発のブラックボックスのままです。
そういう私自身、骨盤や鎖骨、肩甲骨などは多少なりとも使えますが、例えば肋骨や背骨を1本ずつ分けて使えるわけではありません。
幾つかのブロックに分割して扱えるという程度です。
脱力トレーニングはこの、ブラックボックスとなった体幹の感覚に意識を向け、各部位をより精密に分割していきながら、なおかつ有機的に統合された形で使うことを目指します。

体幹

3.脚(股関節・膝・足首)

先ほど腕の説明において、直立二足歩行こそが、人間の運動の最大の特徴だと書きました。
そして、人の文化的活動を担っているのが腕だとすれば、それを支える生活・生存に関わる活動を脚が担っているのです。
具体的に言えば、体重を支え、移動させるという役割です。
ですから脚をうまく扱えることは当然、私たちの日常生活に直接影響を及ぼします。
歳を重ねて股関節やひざ、足首に痛みが出るようになると、人の行動範囲は極端に狭まります。
もちろんスポーツ選手においても、下半身の大きな故障はスポーツ生命に関わる重大事です。
そんな大きな役割を担う脚なのですが、あまりに当たり前に使われすぎて、実はトレーニングが難しい。
腕のトレーニングを重ねて脱力感覚を磨き、体幹をある程度コントロール出来るようになって初めて、本当の意味で脚の力を抜くトレーニングに取り組めるのです。
ただ、その代わりと言っては何ですが、トレーニングの効果は絶大です。
素早くスムーズな重心移動、地面からの抗力を用いた効果的な力の伝達。
いずれも、様々な競技や芸事に役立つことは間違いありません。

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脚

太極拳的要訣(姿勢上の注意ポイント)

1.立身中正(りっしんちゅうせい)

身体の正中線を立てて、まっすぐに立つこと。
立位における姿勢上の最重要ポイント。

2.沈肩墜肘(ちんけんついちゅう)

肩と肘の力が抜けて、ストンと落ちていること。
腕を扱う上での重要ポイント。

3.含胸抜背(がんきょうぱっぱい)

胸の力が抜けて、背中が開いていること。
上半身の扱いに大きく関与。

4.鬆腰緩腹(しょうようかんぷく)

お腹と腰が緩んで自在に動かせる状態。
全身を流体として扱うための必須条件。

5.円とう膝落(えんとうしつらく)

股関節が緩んで、膝が落ちていること。
脚の扱いや重心移動に大きく関与。

6.虚礼頂頸(きょれいちょうけい)

首の力が抜けて、顎が引かれ、後頸部が伸びていること。
全身のバランス、頭脳活動に関与。

7.三尖相照(さんせんそうしょう)

爪先、膝、肘、顎、鼻先など、身体の尖った部分が、目的とする方向に揃って向いていること。
目標への力の伝達に影響。

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