本文へジャンプ 2月26日 

     交響曲第9番ハ長調D.944

どんな曲? この曲の魅力 作曲過程 番号について 曲の構成
比較試聴記 LPレコード CD エアーチェック(放送音源)
今はLPレコード・CDのみ、エアーチェックは近日追加予定



この曲の魅力
シューベルトの本領は歌曲、でもその<>はこの曲にも満ち溢れている。
なにはさておき、出だしのホルンの旋律がその歌心あふれたもので、一度聴いたら忘れられない。
ベーム指揮ベルリンフィルのレコードを買ったのが16歳。以来このホルンのメロディーが、青春のロマンの血を掻き立てることとなる。
シューベルトの歌心はここ以外にもたくさんあって、ふつうやや荒々しさを感じるスケルツォ楽章(第3楽章)でさえ、歌心に満ちている。
終楽章の走るようなリズムも浪漫の歌なのだ。
全曲50分くらいの長い曲だが、決して長いなんて思わない。かつてシューマンが「天国的な長さ」と表現したが、まさにその通り。
作曲過程
シューベルトが亡くなる9ヶ月前、1828年に完成。この頃彼は友人に、「私は大きな交響曲を書きたい。歌は、もうやめだ」と友人に洩している。どちらかというと歌曲の作曲家と思われていたことへの反発心と、ベートーヴェンのようなシンフォニーの作曲家への憧れがあったようだ。。
ややもすると構成力が希薄で、有名な未完成交響曲は2楽章しか完成しておらず、続きが書けなかったし、五重奏曲「ます」の終楽章なんかもやや冗長という感じがぬぐえない。
それに反して、この最後のシンフォニーは長大ではあるがしっかりと纏まっており、彼の持ち味の歌心もある。
彼の死後10年経って、シューマンがこの曲を発見し、メンデルスゾーンが初演するというめぐり合わせも印象的。
番号について
広く知られているのは第9番。ところがこの曲の番号は諸説あってややこしいというか、混乱しているのである。
7番といわれたり、8番と呼ばれることもある。
7番という根拠・・・・この曲が出版された時、すでに知られていたのが1-6番までの6曲だったから。
8番という根拠・・・・後で発見された<未完成>交響曲が、この曲より早く作曲されたものであり、それを7番としたため。
話しをややこしくする原因がもう一つあり、1825年に交響曲を作ったという事実があるがその楽譜は発見されないままという幻の交響曲の存在があり、時には10番とされることもある。
ただ、今ではこの幻の交響曲が今の9番のことだという研究が主流らしく、8番という番号に統一されるかもしれない。(未定)
曲の構成

第1楽章

〔序奏部〕アンダンテ 〔主部〕アレグロ・マ・ノン・トロッポ  ソナタ形式
ホルンがゆったりとしたテンポでロマンチックな旋律を奏でる。


この主題を中心に大規模な序奏部が展開され、次第に盛り上がっていってアレグロの主部に流れ込んでゆく。
弦楽器が独特のリズムを持つ第1主題を、そしてオーボエなどの木管楽器が可憐な第2主題を提示する。



そして序奏主題の断片がトロンボーンで奏でて、展開部に入る。
二つの主題が展開され、序奏主題が思い出すように加わってきて、曲は再現部に向かう。
二つの主題が再現された後、第1主題が速度を増して表れ、終結部(コーダ)に突入する。
コーダは第1主題を中心に盛り上がり、最後に序奏主題がもう一度大きく取り上げられ、圧倒的な盛り上がりとなり、685小節にも及ぶ大きな楽章を閉じる。

第2楽章

〔アンダンテ・コン・モート〕  3部形式と取るかロンド風の形式とみるか…<A-B-A-B-A>という形
7小節の弦楽による淡々とした伴奏に導かれて、オーボエが可憐な旋律をうたいはじめる。−種の哀切な感情を帯び
たこの旋律の美しきは、いちど聴いたら忘れられないほど、印象ぶかい。



第2の主題はやや落ち着いた響きの、これも魅力的な旋律。


この二つの主題がもう一度さまざまに変化しながら現れてきた後、最後にもう一度始めの主題が出てきてこの楽章を締めくくる。

第3楽章

〔アレグロ・ヴィヴァーチェ〕  スケルツォ
主要主題は、低弦によるリズミカルな前半とオーボエによる後半部分からなり、楽しげな雰囲気満載である。


トリオ
は舞曲風の音楽で木管合奏による息の長い歌であり、耽美的なハーモニーと、物思いに沈んでゆくような不思議なl味わいを持つ。


単に踊りの音楽という風ではなく、ここでもシューベルトの歌心を感じさせる。
再び主要テーマのリズムが戻る。

第4楽章

〔アレグロ・ヴィヴァーチェ〕  ソナタ形式
付点リズムの後、高揚する音形の第1主題で始まる。生き生きとした力強い主題である。



木管の奏でる可憐な第2主題は、その旋律と共に弦楽器の刻む3連音のリズムが素晴らしい推進力を生む。


この二つの主題が展開された後、再現部に入るが、第2主題のリズムが反復して刻まれる。
その後のコーダは、この長大な曲を閉じるのにふさわしい、堂々たるもので、圧倒的な力強さのうちにこの曲を終える。

※1155小節の終楽章は、それまでのシューベルトの曲では考えられないくらい巨大なもの。
シューベルトの音楽は冗長、とくに曲の最終楽章が纏まりに欠けるケースが多いと言われてきたが(五重奏曲“ます”、いくつかのピアノソナタなど)
ここではソナタ形式のまとまりを持ち、全体のバランスも取れており、シューベルトの最晩年(といっても31歳)の作品として圧倒的な存在感を持つ。