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大植英次プロデュース

大阪クラシック

−御堂筋にあふれる音楽-
2007.9.2.sun - 8.sat
7日間、60公演
<大阪フィル創立60周年記念行事>


9月2日(日)

1

オープニングコンサート −大阪弁護士会館−


40分以上前に会場に行ったのに、すでにたくさんの人が並んでる。ものの10分ほどで建物の中がいっぱいになり、後は外に並んでいる。前にいる人はいったい何時から並んでるのだろう・・・・?
会場は二階のホール、並んでいる椅子は400くらいで私が入ったときはすでに満席で、後の<立見席>に行くことになる。

オーケストラは大阪音大の学生の中に大阪フィルメンバーが約20名加わった混成チーム。
ワーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲で始まり、ブラームスのハンガリー舞曲第5番、スメタナの「売られた花嫁」から「道化師の踊り」とつづく。
やや硬さがあったが、大植英次のカラダを大きく使ったパフォーマンスで楽員にも笑顔が見えて、好演。

大阪市の関市長も見えていて、大植英次が赤のネクタイをプレゼント。
この日が世界陸上の最終日、そのセレモニーにこれを締めて出ますと約束していたが、どうなったのやら・・・・・


2.

ピアソラの音楽−カフェ・ド・ラペ(難波のカフェ・レストラン)−

  安藤文子(Vn);庄司拓(Vc);浜野千津(Pf)

オープニング・コンサートの会場を後にして、淀屋橋で昼食をとろうと歩いていると、目の前に楽器を背中に背負った楽員が二人歩いている。見るとヴァイオリンの安藤さん・チェロの庄司さんの二人で、ステージ衣装のまま。
そう、このまま二人は次の会場で演奏するのだ。二人の会話を耳にし、食糧を買い込んでるところも目撃。その内容は秘密にしておこう。

会場に着いたのが30分前、もう立錐の余地もないくらいでかろうじて入り口付近壁際に場所を確保。もちろん立ち見。
今やピアソラのタンゴを演奏する人は世界中に広がったようで、アルゲリッチやクレーメル・バレンボイムのおかげだろう。
演奏は楽しく聴かせてもらった。チェロの刻むリズムが印象的。

3.

ストラヴィンスキー作曲:「兵士の物語」 −三菱東京UFJ銀行大阪東銀ビル−

 大植英次指揮大阪フィルアンサンブル  語り:堀江政生(朝日放送アナウンサー)
  長原(Vn);新(Cb);金井(Cl);畦内(Fg);秋月(Tr);タカモト(Tb);堀内(Pc)

大阪フィルのトップ奏者たちを大植英次が指揮し、アナウンサーが語りをするとなると大勢の人が来るだろうと予想し、一時間前に会場に向かったのに、着いてみると建物の横の道路にまで列が出来てる。
中に入ったときにはすでに満席、ここでも後で立つしかない!
腰に不安のある体、開演まで30分以上待つのは非常に辛いものがある。

始まってみると堀江さんの語りがすぐにこの物語の中に引っ張り込んでくれる。
トランペットなどは複雑なリズムがあったりして大変だと思うが、幸太クンともども力演。
物語を今の世相を取り入れたものにアレンジしたり笑いをとったりと、音楽芝居を楽しませてくれた。

30分の予定だから当然抜粋版になるものと思ってたら、最初から全曲やるつもりだったようで、そのことにまず驚かされた。
演奏は少し苦しそうだなと思うような部分もあったけど、ストラヴィンスキーをプログラムに持ってくるということにまず拍手。


本当はこの後夜の部の、ブラームス作曲弦楽六重奏曲が聴きたかったけど、朝からずっと立ちっぱなしで腰の痛みが徐々に強くなりそうな気配がしたので、本日はここまで!



9月3日(月)

4.

クラリネット・トリオ −オカムラ大阪ショールーム本館−
    金井信之/田本摂理/ブルックス・トーン(クラリネット)

去年はファゴットのトリオを聴いたが今年はクラリネット。
時間前から金井さんが準備し始める。残り二人もそろいのティーシャツに着替えて準備OK.
金井さんが、“子供が泣いてもいいですから”と穏やかに話しかけながら演奏開始。
最初は磯部周平作曲「3本のクラリネットのための5つの小品」。
磯部さんはN響のトップ奏者で、金井さんの師匠でもあるとのこと。
つぎにバセットホルンと同じ音域のアルト・クラリネット(一回り大きく低い音)に持ち変えて、モーツァルトのディヴェルティメントK.Anh229から第2番。クラリネット3本のアンサンブルがこんな表情豊かに響くとは思ってなかった。
終楽章で少しミスをした金井さんが、リベンジさせて下さいと言ってその部分をやり直して拍手喝采。
会場に顔を見せていた大植英次の“アンコール”の声にこたえて、その終楽章をプレストで演奏。すごい速さで吹ききり、またまた拍手の嵐。


5.

バロックの協奏曲と弦楽合奏の夕べ −大阪市中央公会堂3F中集会室−


大阪フィルバロック合奏団ともいえるような編成の有料公演(500円なり!)
ステージではなく、平場での演奏なので少し見にくかったのと、入場前に外で並ばされた時の案内が不十分で少しイライラさせられたが演奏が始まるとそんなこともみんな忘れてしまうくらい楽しいものだった。
最初はヘンデルの合奏協奏曲で、弦楽合奏にオーボエ・ファゴットが加わったもので、しばし雅やかな古の宮廷の響きに酔いしれる。
つぎにトランペットの橋爪さんのソロによるネルーダ作曲のトランペット協奏曲。聞いたことのない作曲家だが、トランペット奏者の中では有名だとのこと。橋爪さんのトランペットは朗々とした響きで本当に楽しめる演奏だった。短い曲だったが、バロック音楽をふだんあまり聴かない人間にとっては一服の清涼剤になった。
 後半は行ってして現代の作曲家ブリテン(<青少年のための管弦楽入門>で有名)の“シンプル・シンフォニー
弦楽合奏の文字通りシンプルなシンフォニー。
幸太クンの説明によると、音楽学校の生徒は必ずやらされる曲らしいが、指揮者なしのこのメンバーの演奏は実に素晴らしいものだった。大阪フィルの弦の充実ぶりには日ごろの定期演奏会で感心させられてるのでいまさらという感もあるが、オーケストラを聴く醍醐味の多くは弦の響き。その醍醐味を今宵も十分堪能させてくれた。
特に第三楽章のヴィオラの響きが私の胸に大いに響いてきた。終楽章でのチェロとコントラバスの低音の歯切れのよさが一段とこの合奏を引き締めていた。



9月4日(火)


この日は朝から大忙し。最終のフェニックス・ホールでの公演の整理券が午前10時から配布(無料)されるので、仕事の合間を縫ってこれをゲットすることから今日の日程が始まった。
結果的に入手できたけれど、この整理券は座席指定ではないので、公演前に又列に並ぶことになってしまう。これは何とかならないものか・・・・席さえ気にしなければ並ぶ必要ないことなのだけど・・・・ため息・・・

6.

モーツァルトのオーボエ四重奏 −明治安田生命大阪御堂筋ビル1Fエントランス−

   岡田英晶(Ob);高木美恵子(Vn);吉田陽子(Vl);林口眞也(Vc)

昨年に引き続き昼食時間帯の演奏。曲もモーツァルトのオーボエ四重奏曲というオーソドックスなもの。
最初にモーツァルトの弦楽トリオでアレグロ、次いでメインのオーボエ・クァルテット。
広いビルのエントランスにオーボエが気持ちよく響く。この曲はいつ聴いても心が和む。
岡田さんのソロは初めて聴くし、弦楽器奏者も若い人たちで楽しいひと時を過ごせた。
残念なのは、会場が吹き抜けの空間のため、オーボエは良く通って問題ないけど弦楽器の音が全く響かないのでバランス的には無理があった。


7.

チェロの二重奏 −スターバックスコーヒー御堂筋本町東芝ビル店−

    秋津智承・福野桂子(Vc)

秋津さんのチェロは初めて聴く。相方は昨年も大阪クラシックに参加した福野さん。
最初は、18世紀初めのフランスの作曲家バリエールのソナタ。
メインが交互に入れ替わり、いつどちらが中心になってるのか見ていないとわからない。
秋津さんは結構優しい音を出す人なのでちょっと以外だった。
二曲目のモーツァルトのソナタは、ファゴットとチェロのためのものを編曲したもので、秋津さんによるともともとチェロとファゴットはオーケストラの中では同じような役割を果たす楽器で、共に低音の魅力。
そんなファゴットをチェロに替えての演奏は落ち着いた雰囲気をかもし出す。二人の息もあってたし、どちらかが飛び出すこともない。
チェロの柔らかい音は人に一番落ち着きを与えるような気がする。


この喫茶店、奥のスペースを演奏会に使うのだが、難点が一つある。
真ん中の相当なスペースを大きなテーブルが占拠してるため、我々はその周りの狭いスペースに鈴なりに立ってることになる。あまり人が入れない。
音楽をするスペースには少し無理がある・・・・・・
(スターバックスはこの催しに全面的に協賛してくれてるのにこういうことを言うのは辛いけど・・・)


8.

メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲 −ニッセイ同和損保フェニックスタワー1Fアトリウム−

    佐久間聡一(1Vn);浅井ゆきこ(2Vn);岩井英樹(Vl);松隈千代恵(Vc)

まず選曲に驚かされる。
ふだんカルテットの活動をしてない奏者が集まって臨時にカルテットを組んだりすると、あまり凝ったプログラムにはしないだろうというのが素人の考え。メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲は、それほど有名ではないし聴く機会もほとんどない。
そんな曲に敢て挑戦してくれた4人の奏者にまず拍手を送りたい! 通俗名曲を避けてこういう機会に聴けたことを喜びたい。

特に第1ヴァイオリンの佐久間君、まだ入団して一年くらいの若手でふだんオーケストラの中では第2ヴァイオリンのトップを弾いている人だが、彼のしっかりした技術がこのカルテットを引っ張ってる様子がよくわかる。将来のコンサートマスター候補かな・・・・・・?
若干単調に思える曲だけど、これを機に又CDでも探してみようと思う。


9.

フルートを中心としたアンサンブル −ザ・フェニックスホール−

    井上登紀(Fl);田中美奈(Vn);吉田陽子(Vl);石田聖子(Vc);西聡美(Cem)

まずバッハのフルートソナタ第1番の第一楽章とベートーヴェンのセレナード作品25。
野津さん、榎田さんのフルートはよく聴くがこの若手のソロを聴くのは初めて。でも意外と(と言っては失礼)うまい。
ベートーヴェンの若い頃のセレナードはひょっとしたら初めて聴いた曲かもしれない。のちのベートーヴェンらしさはまだほとんど感じられない。
前半の演奏では、ヴィオラの吉田さんの音が良かった。ややくすんだこの楽器らしさを素直に感じることが出来た。
休憩を挟んで(というかこの時点でもう予定を遥かに超す長いコンサートになることは明白!)後半の最初は、ヘンデルが作曲したものをハルボルセンという現代の人が編曲したパッサカリア

ヴァイオリンとチェロのデュオで、田中さんのヴァイオリンもいいけど、チェロの石田さんのスケールの大きな演奏に惹きつけられてしまった。新人女性でありながら男性的な豪放なチェロは魅力的!
15の短い変奏から成る曲で、現代的な奏法も入ってるようで彼女の特徴がはっきり出ることになった。
大阪フィルにどんどん新しい魅力ある人が増えてきてることがよくわかる。こういうアンサンブルをどんどんやって腕を磨いて欲しいもの。
最後のプログラムはバッハの“音楽の捧げ物”。バッハが王に捧げた音楽で、即興曲やカノンなどをあつめた曲。
オーケストラの演奏会でバッハを聴くとすれば管弦楽組曲かいくつかの協奏曲くらいで、それも年に一回あるかどうか位の頻度でしかない。この曲を生で聴くのは初めて。貴重な体験になった。

このホール、300席しかないけど、木をふんだんに使った非常に響きのいいホール。ソロからカルテットくらいの小さな編成の音楽には最適のホールだと思う。
来年からはここを大いに利用して欲しいもの(無料で・・・?)


9月5日(水)

10.

チェロとコントラバスのデュオ −なんばパークス2F−

         秋津智承(Vc); 池内修二(Cb)

オーケストラの縁の下の力持ちというイメージの強い二つの楽器のデュオは、昨年の大阪クラシックで初めて体験した。
メンバーは違うがメインの曲も同じ。さてどうなるのか・・・?

プレイエル作曲の“主題と変奏”で始まり、メインは昨年と同じロッシーニの二重奏曲。
昨年の印象が少し薄かったので曲のイメージがほとんど残ってなかったが、今日の二人の演奏は、イタリア人ロッシーニらしい明るい楽しい曲だと認識させてくれた。特に秋津さんのチェロは軽やかに弾んでいてこの楽器の別の一面を見せてくれたように思う。
アンコールに、池田さん自身が編曲した(コントラバスに光を当てたもの)“アメイジング・グレイス”。
ジャズの雰囲気を入れていて楽しい演奏。こういう催しだからこそ出来る演奏で、ほかで味わえない貴重な音楽。池田さんが楽器の上に汗をポタポタ落としながらの熱演!(楽器大丈夫?)

同じオーケストラに居ながら、二人がお互いの音を聴きあって音楽を作っていく機会はない。
大阪クラシックをやるようになって初めてこうした経験が出来るようになり、そんな場を作ってくれた音楽監督の大植さんに感謝します・・・・・秋津(談)

こういう意見はいろんな会場で多くの団員が言ってること。オーケストラにとってもすごくプラスだと思います。

11.

<アイネ・クライネ・ナハトムジーク> −大阪市中央公会堂 大集会室−

   長原幸太(Vn独奏) 大植英次指揮・チェンバロ/大阪フィル・アンサンブル

モーツァルトの超有名曲と、誰もが耳にした事のあるバッハの協奏曲を幸太クンの独奏、指揮とチェンバロを大植英次が受け持つという豪華な一夜。

びっくりしたのは、女性人全員の服装!
バッハ・モーツァルト時代の宮廷を思わせる色鮮やかなドレス姿!
ステージに立ったままでの演奏は、目と耳の両方で楽しませてもらった。

幸太クンのヴァイオリンは、バッハに向いてないのでは?と危惧していたけれど、そんな心配は要らなかった。佐久間クン、田中美奈さんとのアンサンブルも上々。
モーツァルトのアイネ・クライネは、とにかく楽しく演奏しようと言う意図がはっきりしていて、少し演出過剰かなと思う部分もあったが、こういう演奏会ではそれもOK!


その後が、大変!
アンコールとしてヴィヴァルディの「四季」から、春の第一楽章を幸太クンの独奏、大植英次のチェンバロで演奏し、やんやの喝采。
これで終りかなと思いきや、大植英次のインタビューに答えたヴィオラの岩井さんの「ヴぃおらがあまり活躍してない」という一言から、それじゃご要望にこたえてヴィオラの活躍する第二楽章もということで演奏が続けられた。しかも岩井さんの譜面を持った大植英次が舞台を歩き回り、岩井さんはそれを追いかけながら演奏・・・・・というパフォーマンス付き。
結局つぎの第三楽章まですべて演奏してしまった。

長くなったアンコールに何度も舞台に出てきた奏者たち。
拍手に何度も答えた後、幸太クンを先頭にもう一度全員登場と思いきや、ヴァイオリンを持った幸太クン以外の奏者たちは舞台に出る振りをして全員袖に隠れてしまう。何も知らない幸太クンだけが舞台の上に置いてけぼり。今日の主役一人にサイドアンコールを!という訳。
ここで幸太クンが弾いたのはバッハの無伴奏バイオリンソナタの中から<サラバンド>
これがまたいい!
今日の一曲目、バッハの協奏曲より心の奥に染み渡る演奏だった。


9月6日(木)

12.

ヴァイオリンとヴィオラのデュオ −明治安田生命大阪御堂筋ビル1Fエントランス−

    鈴木玲子(Vn); 川元靖子(Vl)

昼休みのコンサート、広いビルのエントランスで弦楽器には少し酷かなと心配しながら会場へ。
ミラノ・スカラ座でコンサートマスターをしてたというロッカという人の作品で、“ヴァイオリンとヴィオラのためのデュオ・コンチェルタンテ”
一聴して、相当練習されたなと感じました。ヴァイオリンも良かったけど、わたしはヴィオラの音に酔いしれました。ヴィオラのソロを本当に目の前で聴いたことはなかったので、この楽器のくすんだ、それでいて力強さもある音が心地好く響く。
二楽章のヴァリエーション(変奏曲)で、二つの楽器が交互に活躍するがこのときのヴィオラが印象的。
それにしてもこういう曲の存在すら知らないけど、練習曲として弦の人たちのやりがいのある曲なんだろうか・・・・?


13. ヴァイオリンとチェロのデュオ  −オカムラ大阪ショールーム本館−
    小林亜希子(Vn); 石田聖子(Vc)

ベートーヴェンのデュオNr.1に続いてメインの曲はラヴェル作曲のソナタ。
この曲もどちらかと言うと聴く機会は少ない。でもじっと聴いていると、技巧的にも結構難しそうだ。
石田さんのチェロ、ベートーヴェンのときはおとなしかったが、こういう曲になるとやはり切れ味鋭い演奏になる。

14.

ホルン三重奏   −カフェ・ド・ラ・

    村上哲(Hr);田中美奈(Vn);鈴木華重子(Pf)

これも結構マニアックな選曲、ブラームスのホルン三重奏曲。
ブラームスの室内楽曲は渋い音のものが多く、これも例外ではない。その上ホルンという楽器が渋い音楽に向いている。
昨年同様村上さんはゴムホースを使ってホルンの原理を説明した後演奏を始める。
ホルンだけがクローズアップされる曲ではなくて、これはヴァイオリンもピアノも同等に扱われているようで、三人とも熱演だった。中でも田中さんはいろんな演奏に顔を出しているにもかかわらず見事な演奏!
アンコールにクライスラーの“愛の喜び”を聴かせてくれたが、ここでの主役は田中さん。クライスラーのヴァイオリン曲を楽しませてもらいました。


9月7日(金)

15.

モーツァルト作曲 弦楽五重奏曲第1番 −大阪弁護士会館1Fエントランス−

 浅井ゆき子(1Vn);中西朋子(2Vn);吉田陽子(1Vl);西内泉(2Vl);松隈千代恵(Vc)

今日は休み、一日聴いて回ろう!
そんな勢いで10:30頃に弁護士会館に行ってみると、“座れますから”という係員の声を聴いて嬉しくなり中に入って見ると、細長い会場のほとんど最後列に近いような席。前を見ると遥か彼方に譜面台が見える。こんな変な会場で音楽を聴くことになるとは思っても見なかった。
来年はもう少し会場を考えて欲しいもの・・・・!

演奏はしっかり楽しめた。若手のメンバーがいいアンサンブルを作ってたし、二つのヴィオラの区別がしっかり聞き取れて、実演で聴く室内楽の意義をあらためて思ったりもした。
そしてこのプログラムも良く考えられたもので、モーツァルトの弦楽五重奏曲だったら普通、3番か4番となるのに、意表をついて(?)1番。上記2曲の有名な五重奏曲の前にこんなのもあるんだよと教えてくれたことに感謝。

16.

大植英次のピアノ連弾  −カフェ・ド・ラ・ペ−

        大植英次・山崎真(Pf)

今日の昼間ノブの一番人気になるはずの演奏。
ということで1時間前に会場に行くことにした。
地下鉄を降り、近くの改札口を出ようとしたらそこには大阪クラシックのうちわを持った人たちが列を作ってるではないか。こうなることは予想できてたので、持参の携帯チェア(?)を出し、覚悟を決めて列に並んだ。

プログラムを見ると、当初予定されていたシューベルトの「軍隊行進曲」という小品じゃなくて、同じ作曲家の「幻想曲D.940」と、バーンスタインの「ディヴェルティメント」となっている。ショーピースをいくつか弾いてお茶を濁すんじゃなく、本格的なピアニストとしてやろうという、<本気モード>だ。
シューベルトの夢見るようなメロディー、次々と変化する転調など、シューベルトの魅力たっぷりな音楽を聴かせてくれ、こんな嬉しいことはなかった。決して派手なピアノではないがシューベルトの『歌心』は十分伝わった。
バーンスタインのきょくは、ボストン・シンフォニーのために書かれた曲らしく、弟子の大植英次が師バーンスタインのことを語りながらの演奏。熱演!
なお、この曲をピアノへ編曲した楽譜は、大植英次がバーンスタインからもらったものらしく、慈しみながらの演奏だった。


17.

筝の演奏会 オカムラ大阪ショールーム本館

     片岡リサ(筝)

大阪フィルと琴?
つながりがわからなかったが、今年3月に共演したらしい。
それはともかく、琴を聴く機会もほとんどないので、<物は試し>位の軽い気持ちで会場を覘いてみた。
和服姿の片岡さんが、楽器の説明をしながら宮城道雄の曲を演奏。
驚いたのは2曲目、継橋検校の難波獅子という曲を歌いながら弾いた時。琴を演奏する人が歌うなんて想像したことがない。
3曲目なんか、“アメージング・グレイス”で、英語で歌いながら琴を弾くのだからもうびっくり?
その歌が又素晴らしかった。声楽もしっかり勉強した人なのかもしれない・・・・

とにかく予想外のびっくりした(いいいみで)30分だった。

18.

サクソフォン四重奏 −三菱東京UFJ銀行大阪東銀ビル−

      井上麻子・西本淳・山口裕佳理・高畑次郎(サクソフォン)

これもふだん聴くクラシック音楽とは少し違った演奏会。
オーケストラのなかでサックスを吹くとすれば、近代以降の音楽で、聴く頻度からすればマイナー。
金管楽器ではあるが、リード楽器なので木管の音に近くて柔らか。
何も考えず、リラックスして楽しめた。


19.

チャイコフスキー作曲 交響曲第6番“悲愴” ザ・シンフォニーホール

       大植英次指揮:Pf/大阪フィル

このホールでのオーケストラ演奏会が大阪クラシックのクライマックス!
昨年はベートーヴェンの交響曲第3番“英雄”だった。
オーケストラとしては渾身の演奏、大植英次のベートーヴェンとしてはベストの内容だった。
今年は“悲愴”、チャイコフスキーの後期三大交響曲のうち、4番は昨年の大阪クラシックのフィナーレに取り上げたし、5番は今年の定期演奏会で熱演したばかり。5番を聴いた限りでは、チャイコフスキーの音楽と大植英次の演奏スタイルはバッチリ!
大阪クラシックで力いっぱいの活動を続ける大阪フィルと大植英次のコンビは、この演奏会でプラスアルファーの力を発揮すること間違いないはず・・・・

そして
「悲愴」をこんな風にやられると、もういけない
一楽章の展開部から後、不覚にも涙が出てきた。
いつもの大植英次なら、ここまで金管・打楽器を煽り立てることはない。なのに今日はいつもと少し様子が違う。プラスアルファーの力くらいじゃなく、まるで何かにとりつかれた様だ。
幸太君の様子も少し入れ込みすぎかもしれないが、「悲愴」はこんな演奏が一番似合うのかもしれない。
二楽章ワルツはさらっと流す。
そして3楽章は再度興奮の嵐!もうだめです・・・
終楽章は、「本当に悲しい音楽です」と言ってるよう。
最後、チェロ・コントラバスのみの下降音型が繰り返され、チェロが消えそして最後にコントラバスのうめき声で終わる・・・・

この曲は、情に流された女々しい音楽、大げさな芝居を思わせる音楽などと揶揄する人もいる。
でもそれは違う! これほどまでに人間的な音楽はないというのがわたしの意見。
青春時代にカラヤンとムラヴィンスキーのレコードを何度聴いたことか!
人に言えない心の叫びが深い谷底から吹き上がってくる・・・・そんな印象が未だ消えない。

大植英次さん、久しぶりに心のそこからの響きを味わわせてもらいました。



曲の始めに少し解説があり、終楽章の第一主題が、Vn1とVn2を交互に使いミックスして一つのテーマになってるという事実を初めて知った。

“悲愴”の前に、Mozartのピアノ協奏曲第21番K.467第2楽章を大植英次が弾き振り。
天国的なメロディーを息の長いフレーズとしてたっぷり歌うあたり、やはり只者ではない。
音が非常に柔らかく、モーツァルトにぴったり。

期待に違わぬ壮絶な演奏会となった。
シンフォニーホールから大阪駅まで歩きながら、心ここにあらず・・・・でした。


9月8日(土)

20.

大阪フィル合唱団とパーカッション・グループ  −大阪市役所シティーホール−

    三浦宣明指揮/大阪フィル合唱団 : 久保田善則・坂上宏志・中谷満・堀内吉昌(Perc)

4人のパーカッション(打楽器)による演奏、ホールいっぱいに響き渡る音は圧巻、ティンパニーの響きはお腹の底までずっしり。
楽しかったのは、4人の奏者が打楽器と手拍子を巧みに組み合わせた演奏。目まぐるしく変わる拍子に掛け声を交えながらの演奏は、さながら“ショー”を見てるよう。陽気な中谷さんたちが楽しいひと時を過ごさせてくれた。
ショーといえば、4人がそれぞれ大きさの違うフライパンを持ってのパフォーマンスも効果満点の演出だった。

後半は三浦さんの指揮する合唱団。
三浦さんと言えば、6月の定期演奏会で病気で倒れた大植英次に替わってフォーレの“レクイエム”の素晴らしい演奏を聴かせてくれたことで鮮明に記憶に残ってる。新生大阪フィル合唱団をプロの集団の域にまで持ってきた人で、楽しみにしてたコンサート。
曲はバーンスタインの“ミサ・ブレヴィス”。合唱と打楽器の組み合わせなのだが、三浦さんは合唱団員を各パート別に配置しないで全員がアッとランダムに並ぶという、考えられない試み。
団員にとっては非常に歌いにくいと思うけど、演奏はほぼ完璧だった。団員のレベルの高さが伺える。
アンコールでは、大植英次も登場して<野菜の歌>。手拍子に合わせて野菜や果物のコール、客席を交えての賑やかなひとときになった。
最後に「赤とんぼ」の合唱で、大阪フィル合唱団のピアノ(弱音)のすばらしかったこと!

21.

マリンバ・デュオ  −三菱東京UFJ銀行大阪東銀ビル−

   宮本妥子・関口百合子(マリンバ)

大阪フィルパーカッションの中谷さんのお弟子さんたち二人のマリンバ、ロッシーニの“ウィリアムテル序曲”やマスカーニの“カヴァレリア・ルスティカーナ”間奏曲、ハチャトゥーリアンの“剣の舞”というポピュラーな曲と、童謡など、なじみのある音楽を優しいマリンバの音で聴かせてくれた。一服の清涼剤となる。

22.

ファイナル・コンサート」 ドヴォルザーク作曲交響曲第9番“新世界から”   −カフェ・ド・ラ・

         大植英次/大阪フィル

フィナーレというのは一週間の総仕上げであり、最高の興奮と共に一抹の寂しさが同居する。
そんな雰囲気の中で“新世界から”が演奏された。
部分的には<星空コンサート>などで取り上げていたが、全曲演奏は初めて聴く。
第2楽章の有名なメロディーを初め、どの楽章をとっても生き生きしていて、会場は大興奮。
残念なのは、大理石(?)で囲まれた四角いホールは音がまともに反射するため、音がこもってしまうこと。やはり昨日と同じシンフォニーホールじゃないと音楽的にはやや苦しい。でも、こういう無料コンサートが前提だとそれも難しいでしょうね・・・・

最後はやはり<八木節>(外山雄三作曲“ラプソディー”から)で締める。
祭のあとは・・・・・・・・・・



一週間の<大阪クラシック>が幕を閉じた。
大阪フィルの皆さんの奮闘に大きな拍手を送りたい。
決して通り一遍の<催し>ではなく、<
いい音楽をいい演奏で聴いてもらいたい>という思いの伝わった一週間になりました。
≪来年も必ずやります≫と宣言した大植英次の更なる企画力と大阪フィルの熱意がどんな形で現れてくるか、大いに期待してます。