第439回定期演奏会 <2010.6.24-25>

指揮:ヤクブ・フルシャ
ピアノ:中村紘子

ショパン作曲: ピアノ協奏曲第1番ホ短調 作品11
マーラー作曲: 交響曲第1番ニ長調

CHOPIN(1810-1849) MAHLER(1860-1911)


この演奏会はたくさんの人の注目を集めていると思います。
ショパン・イヤー(生誕200年)に、中村紘子が登場して協奏曲第1番を弾くというのだから。
また中村紘子にとっても記念の歳で、デビュー50周年に当たる。
彼女のショパン、いつか聞いたことがあると思うけど、いつどんな曲を聴いたか全く覚えてないし、どんな演奏だったかも記憶にない。
そもそもショパンの音楽は苦手です。
ピアノが全く弾けないということもあるのですが、ショパン独特の詩情が合わないようです。
でも中村さんの男勝りの豪快なピアノは、清清しさを感じるし、なよなよとしたショパン演奏より遥かに居心地の良さを感じました。
こんなピアニストだったとは思ってなかったので、ちょっと驚いたと同時に、こういう演奏ならベートーヴェンやブラームスの協奏曲の方が合うんじゃないかと思います。

メインのマーラー作曲交響曲第1番、大きな期待を持って真剣に聴きました。
弦が高音から静かに下りてくるテーマはいい雰囲気で始まりましたが、その後少しずつ楽器が増えてくると響きが少し濁るというか透明感が少し足りない。
結構長い序奏の部分は、音程のしっかりしたアンサンブルで透明な響きで緊張感を持続してほしいのですが、大フィルのアンサンブルがやや不揃い。
第1楽章は序奏が夢のような静けさ、主部は「さすらう若人の歌」から採った歌謡性の高いテーマを生き生きと繰り広げるという音楽なのですが、どちらももう少し豊かな表現を聴きたいもの。
第3楽章のコントラバスによる葬送行進曲と、ここでも「さすらう若人の歌」から採った美しい中間部をもっともっと思い入れたっぷりに聴かせてほしかった。
終楽章の華やかな部分、まとまりのよさは感じますが、若者のあふれる情熱をもっと前面に出してほしいのです。
コーダのホルンが活躍する部分、ホルン奏者を立たせるものと思ってましたがそれもなし。
全体におとなしい演奏で、わたしの期待するマーラーからは少し距離のある演奏でした。
若者の夢見るような憧れの表情、絶望の淵に放り込まれたような言いようのない苦しみ、そんな激しく揺れ動く心の中を表現するには、熱い気持ちちと勢いが必要です。
綺麗に音をまとめるとか、音楽的な美しさを優先するという演奏ではそういう勢いが失われがち。
この曲は、年をとってからでもやはり青春時代を蘇らせてくれるような演奏、そうバーンスタインなどの演奏で聴きたいもの。