第30章 極軸のふらつきの撲滅つづき

スラスト力による極軸の移動
前章でレールのすり合わせを行い、精度の検証のためフィールドに持ち出し実際の星(北極星)を観察した。これで完全だろうと、期待して臨んだが、うーん、それほど効果が認められない、参った。しかも、また、あらたな事実がみつかった。妙な動きがあるのだ。追尾の行きと帰りで極軸がほぼ垂直に上下に動く。追尾始めの数分で上方に大きく(数’)動き、以後は殆ど動かない。なぜこのようになるのだろうか?理屈が判らなければ対策も出来ない。


再び作業場に戻し、レーザーファインダーで確かめることとした。手で動かしてみると、追尾の行きでは極軸は明らかに上方へ動いている。逆に動かすと下方に同じ位、動く。レールと車輪との相対位置には関係ないところをみるとレールや車輪には問題がないだろう。早く動かそうが、遅く動かそうが様子はあまり変わらない。

なにが原因か?ここで行き詰っていたが、突然ある仮説が浮かんだ。仮説を検証するため、ダイヤルゲージをスラスト受けカムの支点受けに当てて見たところ、予想が的中。行き-帰りに同期してスラスト方向に明らかな変位がある。(0.1mm程度)これで謎は氷解した。つまり原因は車輪のアライメントが悪いのだ。そのためスラスト荷重が発生して、スラスト受けを押して、スラスト受けを変形させているのだ。

これがなぜ極軸の上下に繋がるのか?というと、このポンセットマウントはVNS型だからだ。通常型の2レール式ポンセットマウントではこの現象は起らないはずだ。VNS型では大レールの受け車輪は水平だ。が小レールの受け車輪は傾斜して設置されている。スラスト荷重によってスラスト方向(南方向)にズレると小レールは下がる、が大レールは下がらない。そのため、極軸は上方(天の北極より)へ変位するわけだ。計算してみると0.1mmのズレは1.1’の狂いとなり、で実際とも良く合うことが判った。

原因はほぼ特定できたが
アライメントが合っていないのではないか?ということは以前から不安に感じていたことであるが、修正する方法が見つからず、そのままになっていた。さてアライメントが悪いとなると、どうすれば狂いを測定できるのか?が問題だ。小レール受けは機械加工しているので多分問題ないだろう。問題は大レール側にあるだろうが、車軸が正確に可動台の回転中心に向かっているかを調べるにも、どこにも確実な基準がない。一応ベース上にけがきを入れてに目安にして正確に合わしたはずである。これが狂っているのだから。どうしようもないのだ。しかし、方法はあるはず。

ある方法を試して見ることとした。
その方法とは細い針金を車輪とレールの間に(レールに平行に)敷くという方法だ。敷いたままで可動台をすこし揺動させるとアライメントが正しければ針金は回らないはずだ。もし狂っていれば、レールと車輪はスラスト方向に速度差があるから、針金は回転するはずだ。やってみると簡単だが正確で有効な方法だった。針金は大きく回転し、アライメントが狂っていることが明らかとなった。そこで、車輪のアライメントをわずかずつ変更し、針金が回転しないところで固定する。もう一つの車輪についても同様にして修正を完了。

満足な結果
修正後ダイヤルゲージで測定したところ、変位は激減(0.03mm以下)しており、この値は、計算上で軸のズレは30”でまずまずの精度だ。さらに筆者のスラスト受け(ブラケット)は元々強度がやや弱かったともおもわれるので、さらにスラスト受けに補強を加えることとした。その結果、ダイヤルでの測定では、スラスト方向(南方向)の変位は0.01mm以下(角度にして10”)にすることができた。これなら、フィールドに持ち出してもほぼ満足な結果が得られるだろう。

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