1日目
ソルボア峠からモワリ小屋
(Col de Sorebois - Cab. de Moiry)


ソルボアの峠を越えて山の斜面をトラバースしてモワリ小屋へ直接行くトレイルがあるのは日本出発前から知っていたが、どんなトレイルなのか情報がつかめず、どの程度の時間がかかるのかも良く分からなかった。そこで、一度モワリ湖のダムまで下りてバスで湖岸を走り再度モワリ小屋へ登ることも考えていた。

前日、ジナルのインフォメーション・センターで尋ねると、トラバースの道は整備されていて景色も良い、ダムへ下りたほうが時間もかかるしアップダウンもきつくなる、トラバースの道を歩くべきだ、と明快な答えをもらった。
モワリ氷河
ソルボアの峠(Col de Sorebois)に9時半頃に着きましたが、ヴァイスホルンやツィナールロートホルンの方向はちょうど逆光になり良く見えませんでした。ソルボア峠から良い展望を期待するのであれば、もう少し遅い時間の方が良さそうです。

コース:
Sorebois -(1h05min)Col de Sorebois -(45min)分岐 -(1h35min)cairn -(25min)Glacier Parking分岐 -(1h45min)Cab de Moiry -(1h)上の氷河往復
[合計時間;モワリ小屋迄5h35min、上の氷河往復含む6h35min]  
[標高差合計; 上り 小屋迄848m 上の氷河迄1023m、 下り471m ] 
[最高標高;モワリ小屋2825m 上の氷河 約3000m]      



ジナル(Zinal)の村からゴンドラに乗り、ソルボア(Sorebois)の頂上駅に下りて歩き出します。広い砂利道がソルボア峠(Col de Sorebois 2835m)まで続きます。最初はなだらかな傾斜を真っ直ぐに登り、次いで右に大きく蛇行して、最後は急な登りを真っ直ぐに登り峠よりも少し高い尾根に出ます。意外と早く簡単に登れた感じがします。直ぐ右にコルヌ・ド・ソラボア(Corne de Sorebois 2896m)のピークがありますが、もう殆ど同じ高さです。左に少し下りると標識のあるソルボアの峠です。

登ってきた方向を振り返るとまぶしい日の光の中にヴァイスホルンやツィナールロートホルンが見えます。

ソルボア峠から、逆光の中のヴァイスホルン、ツィナールロートホルン、ベッソを望む
下に小さく見える小屋はソルボアのゴンドラ駅

ソルボア峠からのモワリ湖


反対側を見るとモワリ湖(Lac de Moiry)です。半分以上が雲の影になっていたものの、綺麗なトルコ石色をして横たわっていていました。
峠は、ほっと一息ついてゆっくり休んで、眺めを楽しむ絶好の場所です。



モワリ湖から右に視線を変えると、アニヴィエの谷に入って初日に登ったロック・ドルジヴァル(Roc d'Orzival)のピークも見えます。

ゆっくり休んでモワリ湖側へ下ります。細い道にになり最初はジグザグの急坂で一気に高度を下げます。モワリ湖のダムが近づいてくると、沢山の黒牛がたむろしています。ここの牛もトレイルの上を占拠していて大回りを余儀なくされました。迂回して草の上を歩くときは、スリップしやすいので注意が必用です。

もう直ぐダムまで下りてしまうのではないかと思うほど下りてきて、牛舎が近づくと分岐の標識に出ます。ここにも黒牛がいてその中のボスらしき大牛が前足で土を蹴りながら我々をにらみつけてきます。遠回りして急いで分岐を過ぎました。

モワリ湖側への下り始め のんびり見える牛ですが、結構怖い

モワリ湖へ落ち込む山腹を斜めに横切るトラバースのトレイルに入って、暫くは200m程の高度差を登ります。何箇所かガレ場もあり、ちょっと注意が必要です。この辺りには沢山のエーデルワイスが咲いていました。去年オーバーロートホルンからトゥフテルン(OberrothornーTuftern)を歩いた時に見たエーデルワイスに次ぐ多さです。

途中20人ほどの学生さんの団体とすれちがいました。「ボンジュール」「コンニチワ」の何時もの挨拶を続けていると、その中の1人の女性がMieに「日本人ですか?」と流暢な日本語で聞いてきました。ビックリして答えているのを聞いていると、日本語を専攻している学生さんのようです。これから後、日本との架け橋となって頑張るのだろうなと思うと嬉しくなります。

登りを過ぎれば、ほぼフラットな草地になり、トルコ石色の綺麗な水のモワリ湖を絶えず眺めながら、気持ちの良いトレイルが続きます。対岸にはトラン峠(Col de Torrent 2916m)とそこに通じるトレイルも綺麗に見えます。

トラン峠とそのトレイル モワリ湖のダム右下の道路はバスも走る
ケルンのある展望地       拡大


周りには沢山の花が咲き、自然に歌が出てきます。元気良くどんどん進むとやがて大きなケルンが現れます。少し湖に出っ張った所で、絶好の展望地であり休憩場所です。



お花畑の中を進むに従い、今まで小さかったモワリ氷河と峰から落ちそうに見える懸垂氷河がどんどん大きくなって見え出します。

        お花畑が続く      拡大 見え出したモワリ氷河

ツァテ峠


更にトラバースを続けると、下にモワリ氷河の駐車場が見えてきます。今日は日曜日のせいか駐車場は沢山の車でいっぱいです。

モワリ小屋へのトレイルは駐車場に下りなくても山腹を巻くように作られていて、ちょっと助かる気分です。

明日越えるツァテ峠(Col de Tsate 2868m)がどんなトレイルか気になっていましたが、用水池を挟んでV字の峠を見ることができました。殆ど雪が無いので、問題無さそうで一安心です。

氷河が近づいてきます。崩落が激しく、猛烈に荒々しいギザギザの氷河の連続です。それにポワント・ド・ムルティ(Pointes de Mourti 3564m)の峰から垂れ下がる懸垂氷河(Hanging Glacier)も特長ある形をしていて印象的です。
モワリ小屋が真上に見え出すと急登に入ります。登る人、下りる人沢山の人です。今回のヨーロッパアルプスの山歩きで一番の人出でした。それでも行列にならない所が良いところでしょう。

かなり岩がゴツゴツしていて急な登りだが、子供も歩くし、背負子に幼児を乗せた婦人もいる、肩車で子供を乗せて登る旦那もいる。スリップしたらどうなるのかと心配になるが、平気な顔で追い抜く勢いで登ってくる。体力が違うと云えばその通りだが、何か感性の点でも大きな違いがあるような気がする。

近づいたモワリ氷河、
右上は懸垂(ハンギング)氷河
モレインの上をちょっと歩く

最後の登りはちょっと応えたが、どうにか小屋に着いてゆっくり休んだ。改めて氷河を眺める。グランムンテ小屋からの氷河に比べれば小規模だが、その荒々しさには目を見張る。負けず劣らずの迫力です。

小屋からの正面 ポワント・ド・ムルティからの懸垂氷河

小屋の真下 小屋からの正面(拡大)

しばし小屋での休憩の後、更に登って氷河に近づくルートを歩いてみることにしました。登ってきた方向とは反対に小屋から進む道があり、ちょっと行くと左に入る踏み跡があります。確かマークがあったように思います。良く見ていないと分かりませんが、もし通り越してしまっても左に向かって石ころを縫って歩いて行けば踏み跡に出ます。踏み跡が分かれば、後は石だらけの中を所々にある黄色と赤のマークを頼りに登っていきます。浮石には注意が必要です。

拡大

登る途中から見る氷河


やがて氷河の末端に着きます。地図を見ると標高3000m程度になっているようで、隠れていた氷河が顔を出し、同じ氷河が形を変え、氷河が今にも下に流れ出すかのように見えます。

氷河の末端から上を見る 氷河の末端から南西を見る

氷河を下りてきたパーティー

周りはだれもいないと思ったら、直ぐ近くに氷河を下りてきた3人のパーティーが装備をザックに仕舞っているのが見えた。仕舞い終えると下りるらしく近くに歩いてきたので、何処の山に登ってきたのか聞くと、ここからは見えないがグラン・コルニエ(Grand Cornier 3962m)に登ってきたと言う。
詳しく聞くと、私の地図を使い、昨日レゾデール(Las Hauderes)からフェルペクル(Ferpecle)の谷に入りグラン・コルニエとダン・ブランシュ(Dent Blanche 4357m)の中間にあるダン・ブランシュ小屋(Cab. de la Dent Blanche 3531m)に泊まり、今朝からグラン・コルニエに登って氷河を下りてきたと説明してくれた。
ツァテ峠を越えてレゾデールに戻るというので、私達も明日ツァテ峠を越えると言ったら、いや違う明日ではなくこれから越えると言う。ウへー夜になると言ったら、ノーチョイスだと言う。全く想像を超えていて人間業とは思えない人達でした。








モワリ小屋(Cab. de Moiry)

インターネット情報;モワリ小屋(英)

目の前をモワリ氷河が流れる眺めの良い小屋。今回は別のトレイルから入ったが、麓まで車道がつながっていてバスの便もあり短時間で登れる人気の山小屋。
1泊2食で58CHF(約5800円)。今まで泊まった山小屋の中ではベッドのマットレスの幅が一番狭かった。日本の山小屋の敷布団の幅ほどではないが、上を向いて寝た時の肩幅に若干の余裕がある程度だった。
夕食は、お替りできるスープに、肉の煮込みと野菜の煮物にリゾット、デザートは果物だった。グラン・ムンテの食事と良く似ていてまずまず。
泊まった日は日曜日の晩だったが満室。シーズン中の宿泊予約は必須と思います。
朝は4時から起きだしますので、ゆっくりは寝てはいられません。
上から見るモワリ小屋(右)




2日目モワリ小屋からツァテ峠経由フォルクラ村へ進む