2日目
 プティ・モンテ小屋からグラン・モンテ小屋
 (Cab. du Petit Mountet to Cab. du Grand Mountet)


ジナル氷河から流れる谷を右下に見て、ベッソの山裾の急斜面を延々とトラバースしながら奥へ奥へと進むと氷河の世界にスッポリと包み込まれます。
インペリアル・クラウンと呼ばれる4千メートル峰群が周りを囲み、外界から遮断された別天地です。

トレイルの途中に何箇所かのロープとクサリ場があり、トレイルの終盤は石がゴロゴロしたガレ場やモレインの上を歩きますので、注意が必要です。歩いたときは天候も良く残雪も殆ど無かったせいかさほど難しさは感じませんでした。ただ、それなりの体力は必要です。何組に追い抜かれたか数えられませんでした。
黄色の線は歩いたトレイルの概略
右端の山裾を回りこんでから
山小屋まで約1時間と少々
今回はプティ・モンテ小屋をスタートしましたが、ジナルの村を出発した場合は30分ほど余分にみればよいと思います。

コース;
Cab. du Petit Mountet -(30min)Bridge -(1h50min)地図の2430m -(2h5min)小屋まで30分の標識 -(35min)Cab. du Grand Mountet -(1h)ケルン往復
[合計時間:グラン・モンテ小屋迄 5h(ケルン往復含んで 6h)] 
[標高差,:グラン・モンテ小屋迄の登り 986m (ケルンまで 1200m)、下り242m]  
[最高標高:グラン・モンテ小屋2886m(ケルン3100m)]

急な登りの始まり


プティ・モンテ小屋を出て、モレインの上に作られたトラック道を谷川に向かって下る。谷の反対側の斜面に、これから登るトレイルが良く見えるので、この下りは嬉しくない。

谷にかかる橋を渡りちょっとの間林の中を歩くとモレインの末端に着きここから登りが始まる。トレイルは細いがはっきりしている。周りにヤナギランの花などが沢山咲いていて、綺麗なところだが、とにかく登る。

プティ・モンテ小屋が
モレインの崖の上に小さく見え


ジグザグの急な登りを一歩一歩進む。次第に高度が上がり、谷の下に、ジナルの村が遠く見え出す。登るに連れて谷の反対側に朝出発したプティ・モント小屋がどんどん下になり小さくなっていく。この辺が一番きついところ。

ジグザグの急登が終って一段落、更に斜めに登りが続き草つきの穏やかな斜面に出る。地図上の2430m付近だと思う。プティ・モンテ小屋がやっと確認できるほどの大きさになり、左にはグラン・コニエル(Grand Cornier 3962m)の山が大きく迫りだし、右にはジナルの村への谷が遠くまで見通せる。腰を下して休むのに絶好のところです。

奥にダン・ブランシェのピークが見え出す
手前はグラン・コニエル


ここからは上り下りの少ないほぼ平坦なトラバースの道が続きます。途中土砂崩れ防止の支柱でできた半トンネルの下をくぐります。雨が降れば頭の上を水が流れ落ちるのかもしれません。ここを過ぎたあたりから、今までグラン・コニエルの陰に隠れて見えなかったダン・ブランシュ(Dent Blanche 4357m)の三角のピークが姿を現します。

真下の谷を埋めているのは土砂のように見えますが、良く見ると所々から青白く光った割れ目が見えます。土砂の下は氷河です。ジナル氷河(Glacier de Zinal)が伸びているのです。

左ポワント・ド・ジナル、中央ダン・ブランシェ、
右グラン・コニエル


トレイルは再び急な登りとなりロープと鎖の付いた岩の間を進みます。ここを越えると前が開いて氷河の流れが目に飛び込んできますが、周りは大きな石がゴロゴロと転がり、ゆっくりできない所です。道を見失わないように登っていき、モレインの上に出ると、「グラン・モンテ小屋まで30分」の標識が現れます。ほっと一息、まわりを見渡すと、もうそこは氷河の世界です。

左にオーバー・ガーベルホーン(Ober Gablhorn 4063m) 右にポワント・ド・ジナル(Pointe de Zinal 3789m)、その右にダン・ブランシュの完全な姿を見ることができます。 

ここまで幾つのパーティーに抜かれたことか。とにもかくにも、あと少しの所までやってきました。

標識を過ぎるとさほどの登りではなくなり、モレインのゴロゴロした石の上を歩いて行きます。左手に小屋が見え出したらもう目前です。
小屋からの眺めは、それは凄いの一言です。

小屋から見る  
オーバー・ガーベルホーン(中央)
小屋から見る
ダン・ブランシュ(右)とプワント・ド・ジナル(左) 



小屋でゆっくりした後、更に上に伸びるトレイルを歩くことにしました。氷河を右に見て狭い幅のモレイン上の踏み跡を登っていきます。小屋からはあまり見えなかったツィナールロートホーンから流れるムンテ氷河がどんどん大きく見え出します。モレインを登りきった所がちょっと広くなっていて大きなケルンが立っていました
ケルンの上部はベッソやツィナールロートホルンへ続く尾根が立ちはだかっています。私達は今、ジナルの村から見るベッソの山の反対側に、そしてツェルマットから見るツェナールロートホルンの裏側に居ることになります。

ケルンから上部 ケルンの上部、この山の裏がベッソの山

氷河の上部が良く見えるようになり、広がりもグンと増し、ピークも更に高さを増した感じで、インペリアル・クラウンの名をも凌ぐ景色といえます。下に小さな氷河湖が見え、右下にはグラン・モンテの山小屋が小さく見えます。
ケルンからダン・ブランシュを見る、
グラン・モンテの小屋の屋根が右下に小さく白く見える

右下の白い角形がグラン・モンテ小屋  拡大 


  オーバー・ガーベルホーン(上)と
小さな氷河湖(右下


ケルンの近くに腰を下してずうーと見渡した。4千メートルのピークが空に突き出し、氷河は峰から流れる滝のように岩を覆う。突然雷のように「ゴー」と氷河の崩壊する音が静寂を破って響き渡る。吸い込まれそうな美しさと迫力のある景色に飽きることなく見入った。幾つものピークがある。氷河の流れも幾つかある。地図を取り出し名前を確認しながら「ここまで来て良かったなー」と二人で喜び合った。

       ピークは、左からツィナールロートホルン(4221m)、      拡大
中央三角がトリフトホルン(3728m)、 
その右がヴェレンクッペ(3903m)右端がオーバー・ガーベルホルン(4063m)、

氷河は、左から中央がモンテ氷河(Glacier du Mountet)、
右端がオーバー・ガーベルホーン氷河(Glacier del'Obergabelhorn
)

  ピークは、左がオーバー・ガーベルホルン(4063m)、その右がモン・デュラン(3713m)、   拡大
中央がプワント・ド・ジナル(3780m)、右端がダン・ブランシュ(4357m)
氷河は、左がオーバー・ガーベルホーン氷河(Glacier del'Obergabelhorn)
中央がドュラン氷河(Glacier Durand)、右がグラン・コルニア氷河(Glacier du Gd. Cornier)


景色を満喫し山小屋に戻り、食堂に直行してビールで乾杯した。
夕方から夜半にかけてかなり強い雷雨が長く続いた。日中でなくて良かった。





グラン・モンテ小屋(Cab. du Grand Mountet)

 インターネット情報;
     Cab. du Grand Mountet(英、独、仏、伊)

幾重にも重なり合う氷河の流れを前に、周りをインペリアル・クラウンと呼ばれる4千メートルのピーク群にぐるりと囲まれた別世界の景色を堪能できる山小屋です。行く前はもっと狭苦しい空間に建つ山小屋かと思っていましたが、意外と空が広くて明るく感じました。
一泊2食付で1人66CHF(約6600円)でした。部屋も綺麗でしたし、夕食もスープと肉の煮込みにリゾットと野菜の煮物で、デザートは果物の缶詰でした。この立地条件ではまずまずだったと思います。
泊まった時は満室でした。ピーク時の事前の予約は必須のようです。
山小屋の窓を開ければこんな景色
足の早い人はジナルの村から日帰りで往復していました。グラン・モンテ小屋に泊まる人の多くは、ガイド付きの氷河歩きをする人達やピークを極めるアルピニスト達のようです。殆どが朝4時から起きて出発の準備に取り掛かるので、朝ゆっくり寝ようなどと思う人には向かない小屋です。
私達のように泊まって翌朝同じ道を下山というのは極少数のようでした。




1日目ソルボア・ゴンドラ駅からプティ・モンテ小屋へ戻る    3日目グラン・モンテ小屋からジナルへ進む