2日目
モワリ小屋からツァテ峠経由フォルクラ村
(Cab. de Moiry - Col de Tsate - La Forclaz)


モワリ谷(Val de Moiry)からエラン谷(Val d'Herens)に越えるには、普通、モワリ湖(Lac de Moiry)のダムからトラン峠(Col de Torrent 2916m)を越えてビラ村(Villaz)に下ります。

今回は前日にモワリ小屋に泊まったので、最短距離のツァテ峠(Col de Tsate 2868m)を越えました。どんなトレイルか少し心配していましたが、峠近くの登り下りが急なだけで残雪が殆ど無かったせいかスムースに越えられました。
参考に登り下りのトレイルを黄色のラインで概略示してみました。

フォルクラの村へ下りるトレイルは、トラック道や他の道が幾つも交錯していて分かりにくかった。フォルクラからここを登る場合は下るときよりも更に分かりにくいと思うので、絶えずチュエックしながら間違わないように登る必用があると思います。
用水池からツァテ峠へのトレイル
(モワリ谷側)
ツァテ峠からフォルクラ村へのトレイル
(エラン谷川)

コース;
Cab. de Moiry -(1h15)Moiry Glacier Parking -(50min)Lac de la Bayenna -(1h20min)Col de Tsate-(50min)農家 -(40min)La Tsate -(50min)La Forclaz
[合計時間;5h45min  標高差;下り合計1,613m 登り519m  最高標高;2,868m] 


駐車場の用水池から見るモワリ氷河とモレイン


昨日は夕方から雲が多くなって夜には軽い雷雨があったが朝は快晴。
モワリ小屋から先ず、駐車場がある用水池まで下ります。470m程一気に下りますので何とももったいない感じがします。

用水池から振り返ると朝日にモワリ氷河が輝いています。それに、モレインが異常に高く見えます。何時の時代か、モレインの上まで氷河があった訳ですが、その光景を思い浮かべるのはとても無理な高さでした。

モワリ氷河を映すBayenna池


休憩の後、用水池の対岸のモレインの上を左手に登り始めます。右手からは急な坂を登る別のトレイルもあるようですが、なだらかなほうを選びました。ザラザラのモレインの上を行き過ぎではないかと思うほど進んだ頃、標識があり右手に分かれます。ここからは草地の中を歩きます。
斜めに登っていくとポカッと小さな池の前にでます。名前はバイェンナ(Lac de la Bayenna)と仮名をふったらよいのでしょうか、綺麗な池です。ちょっと波がありましたがそれでもモワイ氷河が映って綺麗でした。



       峠へ登る途中、モワリ氷河を見る   拡大
左手の白い点がモワリ小屋


池を過ぎた所を斜めに真っ直ぐ歩いてしまい、モワリ湖を見下ろすように大きなケルンが前に見えだし、おかしいと気がつきました。地図を見るとツァテ峠は池から左に曲がり真っ直ぐに峠に向かうようになっています。分岐を見過ごしたらしいのです。戻れば大分下らねばならないので草の上のオフトレイルを左斜めに登って正規のトレイルに出ました。これでエネルギーを消耗して呼吸が乱れしばし休憩。振り返ると、昨日間近に見たモワリ氷河の全景が見えます。左手の山腹に白い点のようなモワリ小屋と、その上に末端まで歩いた氷河も見えます。
左に残雪が、右には高山植物の花見られるようになると、トレイルは砂礫の急登になる。上を見上げれば峠は直ぐそこだがなかなか近寄ってこない。今年のアルプスはとにかく暑い。汗ぐっしょりになってツァテ峠に着いた。
振り返るとヴァイスホルン、ツイナールロートホルン、それにベッソまで見え、登り始めた用水池とBayenna池も見える。
これから下りるエラン谷側は、アローラ(Arolla)方向に切り立った山が連なって見える。

ツァテ峠より東を見る
中央はヴァイスホルン、右端はツィナールロートホルン、
その下にベッソが頭を出している
        ツァテ峠から西南を見る    拡大
アローラ方向の山が見える

 写真を拡大して地図で調べて見ると
左端にアローらの村の正面に聳える尖塔のエギュイーユ・ド・ラ・ツァ(Aiguille de la Tsa 3668m)がかろうじて見え、その右に大きくダン・ド・ペロ(Dent de Perro3676)とダン・ド・ヴェージウィ(Dent de Veisivi 3418m)が重なって見える。中央手前はレ・ゾデール(Les Hauderes)の村に山裾が落ち込むプティ・ダン・ド・ヴェージウィ(Petite dent de Veisivi 3183m), この山の陰のピークがピーニュ・ダローラ(Pigne d'Arolla 3790m)、その右の白い山はラ・セルバンティーニュ(La Serpentine 3789m)、一番右の三角の山が モンブラン・ド・シェロン(M. Blanc de Cheilon 3970m)で、その右手前の茶色く見える所がディス湖に通ずるシェーヴル峠(Pas de Chevres 2855m)とリードマッテン峠(C.de Riedmatten 2919m)のようです。
 アローラ方向に見える山(拡大)  
 ツァテの峠からアローラ近辺の山が見えるとは殆ど思っていなかったので驚きでした。雲が無ければシャモニーのモンブランも見えるそうです。

エラン谷側のツァテ峠


ゆっくり景色を眺めてフォルクラ村に向けて下山。砂礫のザラザラーッとした急な道を一気に下りる。



モン・ミーヌ氷河


下りるに従い左手にフェルペクル(Ferpecle)の谷が見え始め、モン・ミーヌ氷河(Glacier du Mont Mine)とその周りの山が姿を現します。右手に頭がちょっと見えるのは、方向から考えるとアローラの主峰モン・コロン(Mont Collon 3637m)かもしれません。真ん中に見えるひと際高い山はブーケタン(Bouquetins 3838m)という山だろうか。
峠からエラン谷川側に入って、今までとは違った山が見るようになりました。

レ・ゾデールの村が見え出す


いつの間にか辺りは牧草地になり、小さな池と大きなケルンを左に見て、直ぐ農家(牛舎)の前の広い砂利道に出ます。農家の前を通って砂利道と交わるようにトレイルが下りていますが、周りは沢山の牛。右に左に牛の間をすり抜けるようにしてトレイルに出ると、下にレ・ゾデールの村が見え出します。アローラに向かう車道がその奥の山腹を縫うように続いているのが見えます。

一気に下ると、また広い砂利道を横切り一軒の小屋の横を通りジグザグに更に下りると数軒の小屋のあるラ・ツァテ(La Tsate)に出ます。人は住んでいないみたいだなーと覗き込みながら横を通り更に下ります。



沢山の花


この辺りは沢山の花で寝転がりたいところですが、勝手に足が先に進んでしまいます。

少し木が見えてきて、今度は人が住んでいるMotauという数軒の部落に出ます。ここから少し広い道になり林の中を歩き右下に道路が見え出し車の音が聞こえるようになればフォルクラの村です。



パラパラと建つ民家の中の道を進むと車道に出てバス停の前に着きました。周りを見渡しても店もレストランも無いので、舗装道路をポカポカと更に下りていくと、もう1つのバス停に出、その前にホテルがありました。
ありがたい!と裏のテラスに回ると、前にダン・ブランシェの山が雲間からグーンと顔を出しています。ビールで乾杯、バスが来るまでゆっくりとフォルクラ村の景色を楽しみました。

フォルクラの村 フォルクラのホテルの前庭から見るダン・ブランシェ(左)

エランの谷(Val d'Herens;ヴァル・デラン)と同名のダン・デラン(Dent d'Herens 4171m)という山がダン・ブランシェの右手にある筈だが、案内書やネットなどを見てもダン・ブランシェの山ばかりが登場してきてデランの山に触れられていない。先にグリメンツ(Grimentz)のロック・ドルジヴァル(Roc d'Orzival 2853m)に登ったときにダン・デランが見えたが、その後目にしていない。左上の写真で、右端に尖った山(モン・ミーヌ;Mont Mine 2914m)の陰にうっすらと頭が出している山がありますが、方向からすると、これがダン・デランかもしれません。
谷と同じ名前の山なので、エランの谷からはっきり見える所があるはずだと思うのですが。今回の旅ではエランの谷の何処から良く見えるのかは分かりませんでした。

レゾデールの村と、ダン・ブランシェの山
アローらへ向かうバスから


フォルクラの村からバスに乗り、レゾデールで乗り換え、アローラに移動しました。



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