Bホーバルメンからアルベン(Hohbalmen-Arben)



トリフト小屋(Trifthutte 2337m)からホーバルメンを通ってアルベン(Arben)に抜けるこのトレイルは、ウンターガーベルホルン(Unter Gabelhorn 3392m)の裾野をぐるっと半周するもので、ツムット(Zmutt 1936m)やシュタッフェル小屋(Stafel 2199m)から6〜7百メートル上を歩くパノラマ展望コースです。このトレイルからはツェルマット周辺の全ての4000m峰を眺めることができると言っても良いほどです。特に、歩くに従いマッターホルンがどんどん近づき、形も少しづつ変わっていくので、マッターホルンを眺めるには絶好のトレイルです。しかもコース全体が緑の牧草地で、あまりアップダウンもなく、爽快な気分を味わいながら歩くことができます。
ツェルマットからは標高差約1000mほどを登るか、ゴンドラでシュヴァルツゼー(Schwarzsee 2589m)に行き、ここから一旦下ってアルベン谷(Arben Valley)から登り出すこともできます。今回はトリフト小屋に泊まってスタートしました。
アプローチが長いせいだと思いますが、歩く人は少なく静かな歩きが楽しめます。
ホーバルメンから見るマッターホルン(4478m) 参考地図:No.2515 Zermatt Gornergrat
1/25000
 



 歩いた日;2010年7月12日
 コース;Trifthutteー(50min)Hohbalmenstafelー(15min)2656m往復(10min休憩)ー(15min)Zermatta分岐(5min休み)ー(40min)Matterhorn正面(10min休み)ー(30min)△マーク(10min休み)−(40min)Schanbielhutte分岐ー(25min)Stafel分岐ー(15min)仮設トレイル(5min休み)ー(50min)Zmutt(30min昼食)ー(50min)Zermatt
合計時間: 5h30min (総合計時間:6h40min)  標高差: 登り 404m 下り1,121m  最高標高:2,741m 



朝のトリフトヒュッテ前から、手前はホーバルメン分岐


殆ど雲が無い快晴。朝7時50分にトリフト小屋を出発。小屋の直ぐ近くにホーバルメンに向かう分岐がある。

上を見上げると、ヴェレンクッペ(Wellenkuppe 2903m)の山とその右のガーベルホルン氷河(Gabelhorn gletscher)が朝日に輝いている。気持ちの良い朝だ。

分岐から左に入ると直ぐ小川の橋を渡り南方向に向きを変えトラバース気味に草地の中を登る。最初はジグザグの登りがあるが、それを過ぎればさほどの急な登りではない。



トリフト小屋から300m程の標高差を登り西方向に回り込むと、丘陵状態のホーバルメン(Hohbalmenstafel 2620m)に着く。北・東・南方向が全て開け、大パノラマが一気に広がる。後ろを見ると少し小高い岡がある。地図に2656mとあるポイントだと思うが西方向も見える筈と登ってみた。展望は更に広がり、オーバーガーベルホルンもツェナールロートホルンも、そして一昨日登ったロートホルンヒュッテの背後の岩も昨日登ったプラットホルンも良く見える。

 
ホーバルメンの2656m付近から見る(左が西方向、右が北方向)  
印はロートホルンヒュッテがある位置、矢印はトリフト小屋のある位置
左からミットラーガーベルホルン(3685m)オーバーガーベルホルン(4063m)、ヴェレンクッペ(3903m)トリフトホルン(3728m)、ツェナールロートホルン(4221m)、ウンターエッシホルン(3618m)、プラットホルン(3345m)  


ホーバルメンの2656m付近から見るミシャベル山群
(北東方向)

北東方向は左の写真のように丁度逆光でパットしないが、ミシャベル(Mischabel)山群のドーム(Dom 4545m)やテッシュホルン(Taschhorn 4491m)等の高峰がはっきり見える。

左からナーデルホルン(4327m)、 ドーム(4545m)、テッシュホルン(4491m) 、アルプフーベル(4206m)、アラリンホルン(4027m)



東から南方向は光線も良くクリアーに見える。それこそパッパ・パーンと音楽が聞こえてきそうな大パノラマだ。東のモンテローザ(Monte Rosa 4634m)から南のマッターホルン(Matterhorn 4478m)まで氷河を抱く4000m峰が正面にずらりと並ぶ。写真の左下がホーバルメンの棚(Hohbalmenstafel) の所で、トリフト小屋を同時刻に出発した人達が休んでいる。

ホーバルメンの2656m付近から見る(左:東方向、右;南方向)
左からモンテローザ(4634m)、リスカム(4527m) カストール(4226m)ポリュックス(4091m)、ロッチャ・ネーラ(4075m、ブライトホルン(4165m)、クラインマッターホルン(3883m)、 マッターホルン(4478m)   


ゴンドラ中間駅のフーリ(下)とゴルナー氷河の谷


2656mの小高い岡からトレイルに戻って下を覗くとブライトホルンの真下にゴルナー氷河(Gorner gletscher)の谷が大きく口を開け、更にその下にはシュヴァルツゼー(Schwarzsee 2589m)への中間駅・フーリー(Furi 1886m)の建物が見える。
首を左右に廻したり上下に動かして注意深く見ないと、あまりにも広い範囲の眺望なので、せっかく見えてるものでも見落としてしまいそうだ。





羊とモンテローザとリスカムの山


ゆっくり眺望を楽しんだ後、トレイルに戻る。アップダウンの無い草地で、歩く左側は大パノラマが続く。15分程でツェルマットへ下る分岐にでるが、そのまま真っ直ぐに進む。見える景色が歩くに連れて少しづつ角度が変わるので、ついつい立ち止まっては同じような写真を撮ってしまう。
ゴルナー氷河が谷間から少し見える辺りで羊に出会った。羊にとっては景色などどうでも良い筈だが、こんな所で育つ羊を羨ましく思ってしまう。





歩くに連れてマッターホルンノの形が変わりどんどん近づく。一時的にマッターホルンを正面にして歩く所があり、右裾にツムット氷河(Zmuttgletscher)の谷が見え出す。シェーンビエールヒュッテ(Schonbielhutte)へ進むトレイルもモレーンの上に目視できる。4000m峰ながら、何時もマッターホルンの陰に隠れているダン・デラン(Dent d'Herens 4171m)もここからは見え易くなる。

 
 マッターホルンが正面になる
左からクラインマッターホルン(3883m)、マッターホルン(4478m)ダン・デラン(4171m)、テート・ド・ヴァルペリン(3798m)


2741m付近から見上げるオーバー・ガーベルホルン(左上)
左からモン・デュラン、オーバー・ガーベルホルン
ミットラー・ガーベルホルン、ウンター・ガーベルホルン

このトレイルで一番高い2741m付近に来て右側を見上げると、今まで見えなかったウンター・ガーベルホルンとミッター・ガーベルホルン、それにオーバー・ガーベルホルンが連なって姿を現し、その左に目立たないがモン・デュラン(Mont Durand 3713m)も見ることができる。4年前に泊まったグラン・ムンテ小屋(Cab du Grand Mountet 2886m)から見たモン・デュランがこのトレイルから見えるとは予想していなかったのでちょっとした感激であった。





ここからはゆるく下りだす。間もなく△マークの標識があり少し谷に張り出した絶好の展望地に出る。多分地図上で2705mのポイントだと思う。マッターホルンが目の前に迫り姿も正三角形になり見慣れたマッターホルンの形とは大分違ってきたが、これもまた迫力がある。

左肩に5年前に泊まったヘルンリヒュッテ(Hornlihutte 3260m)があるはずだが、と目を凝らすと、見えた! あんな所にと思うような所に建っている。

2705m付近から見るマッターホルン   印にあるヘルンリヒュッテ(拡大、左下)


モンテローザの上に飛行機雲



2705m付近になって、モンテローザの手前にゴルナー氷河の流れがはっきり見えだす。丁度その真上に、飛行機が垂直に飛び出すように現れ、綺麗な飛行機雲を描いてくれた。
その左には、オーバーロートホルン越しにミシャベル山群が並び、その横にフィンデル氷河(Findelgletscher)が今まで見たどの場所からよりも大きく見えた。


左はミシャベル山群とヒンデル氷河、右はモンテローザとリスカムとゴルナー氷河

 

2705mポイント付近を過ぎると、アップダウンのない穏やかなトレイルも終わり、アルベン谷の出口に向かった下りがはじまる。砂礫で覆われているのか茶色の谷に見えるツムット氷河が近づき、その上にダン・デランの山全体が姿を現す。右を見上げるとオーバーガーベルホルンがアルベン谷の真ん中に威容を誇るように立つ。
今まで誰も前後に人の姿を見なかったが、この辺にきてようやく逆コースから登ってくる数組のパーティーと出合った。

ツムット氷河とダン・デラン(左) アルベンの谷とアルベン氷河の上のオーバー・ガーベルホルン




マッターホルンを正面に見ながらどんどん下る。地図によると、この下り坂あたりをアルベン(Arben)と言い、オーバー・ガーベルホルンへ立ち上がる谷をアルベンガンデック(Arbengandegge)と言うようだ。
谷裾に下りるとシェーンビエールヒュッテの分岐に出る。これを左にとって下ると滝に出た。まるで、ここからマッターホルンを撮って下さいと滝が言っているようなロケーション。逆らわず、シャッターを押した。

マッターホルンを正面にして下る 滝越しのマッターホルン



滝から少し下った所で登ってきたヨーロッパ人カップルが「2日前にロートホルンヒュッテで見かけたように思うが」と声をかけてきた。小屋ではヨーロッパ人ばかりで記憶していなかったのを詫びて分かれたが、街中ではこんな会話は生まれない。山はやっぱり良い。

シュタッフェル(Stafel)への分岐に出、そのままツムット川(Tmuttbach)の左岸のトレイルを下る。途中、がけ崩れで本来のトレイルが閉鎖されていて、一旦川岸近くまで下ってまた登り返す仮設トレイルを歩くようになっていた。思わぬ登りにどっと疲れがでた。

いつの間にかマッターホルンは樹林の上に顔を出すだけになり、視界はどんどん狭まる。小さなダム湖の先にツムット(Zmutt)の集落が見え、その中の一軒のレストランに日本の国旗がスイス国旗と共に高々と上がっている。入るならこの店にと昼食に立ち寄った。「何故日本の国旗?」と聞くと「日本人のグループ(団体)が時々来るので」とのこと。商売の為の日本の旗でも、海外で日本の旗を見るのは悪い気がしない。

樹林越しに見えるマッターホルン 日本の国旗があがっていたツムットのレストラン、
マッターホルンの頭がほんの少し見える



ツムットを過ぎ谷に近い方の広い道を下る。1時間弱ほどダラダラと下ってツェルマットに着いた。
今日1日本当に良い天気だったが、夕方7時頃から猛烈な雷雨になる。スイスに着いてほぼ2週間、シトシトと降る雨には合わず、決まって夕刻に南国のスコールのような雨が降る。


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