Aガンデックヒュッテからヘルンリヒュッテ
(Gandegghutte - Hornlihutte)


 「ガンデックヒュッテ(Gandegghutte)のテラスの下に氷河が広がる」という言葉を何かで読んで、どんな山小屋か是非行って見たいと思った。また、マッターホルン(Matterhorn)に一番近い山小屋・ヘルンリヒュッテ(Hornlihutte)に泊まりクライマー達の雰囲気を味わいたい、あわよくば朝日に輝く赤いマッターホルンを間近に見たいと思った。
ガンデックヒュッテは何処にあるのか調べるうちに、どうせなら2つの山小屋を結んで歩いてみようという気になった。ゴンドラでクライン・マッターホルン(Klein Matterhorn)に登った後、中間駅のトロッケナー・シュテーク(Trockener Steg)で降り、一泊2日のハイキングが始まった。
リッフェルベルグ近辺から見たマッターホルンのパノラマ と トレイル

インターネット情報
    リンク;ツェルマットの山小屋泊りハイキング(英)
        Hike around Zermatt & Accommodations
 歩いた日;2005年7月11日&12日

 コース1日目 ガンデックヒュッテからヘルンリヒュッテ
   ;Trockner Steg-(30min)Gandegghutte(20min休み)-(2h10min)Furgg Station=(gondola)Schwarzsee(35min昼食)-(1h30min)Stafel分岐-(1h20min)Hornlihutte
(合計5h30min,標高差 下り597m 登り677m 最高点3260m)

トロッケナー・シュテークの駅を降りて外に出ると、駅の壁にガンデックヒュッテの大きな看板が目に入ってくる。その看板の矢印に従い先ず広い道を進む。クライン・マッターホルンのスキー場から氷河の上を滑り降りてきたスキーヤー達がスキーを担いで下りてくるのに出会う。すごいダウンヒルを楽しめるに違いない。
右上にはクライネマッターホルンへ行くゴンドラが時々走る。

ガンデックヒュッテへの登り
小さい池の横を通り、ガレ石だらけの道に入る。岩に矢印や目印が塗ってあるので、見失わないように歩く。正面にブライトホルンの白い山が徐々に大きくせり出す。登りを過ぎるとバーと氷河が目の前に広がり、ガッデックヒュッテの山小屋に着く。

歩き出してまだ30分、特に飲みたいわけでもなかったが、テラスの椅子に座って氷河を見下ろすのが夢だったので、コーラを頼む。聞き間違えかと思うような値段。0.5リットルコーラビン2本でCHF14(1300円弱)。後で知ったがシュヴァルツゼーでもヘルンリヒュッテでも同じ値段だった。協定料金のようです。しかも0.5リットルビールビンもコーラと同じ料金、値段は重量で決まるようです。余談ですが、下りてからスーパーで値段を見た、コーラもビールも0.5リットルでCHF1.25で同一価格でした。

山小屋の前のテラスの前はスパッと切れていて、その崖に氷がせめぎあい波を打つように押し寄せていて、怖いほど。その美しさを見ながらコーラをゴクリと飲むと、格別の味が喉越しにシュワーと広がっていきました。

                 ガンデックヒュッテのテラスから氷河を見る 拡大→
中央モンテローザ(4634m)、右端ブライトホルン(4164m)
左の氷河はゴルナー氷河、手前はウンターテオドール氷河

ガンデックヒュッテからフルック(Furgg)への下りの道は山小屋の裏側から始まる。下り口が分かりにくいので山小屋の人に聞いた方が良い。ガレ石の道で、途中何箇所か雪渓が残った所を渡った。危ない所では無いが注意して歩こう。
30分ほどで、トロッケナー・シュテークから下りてくる道と合流する。赤茶けたガラガラ石の間をペイントのマークを頼りに進む。

雲間から左にマッターホーンが見える。前を時々ゴンドラが通過する。

ガラガラ道をなおも進むと、前に何か動く気配、よく見るとスタインボックが群れている。スイスに来て始めてみる。3倍ズームしかない馬鹿チョンデジカメではこの大きさが精一杯

ガラガラ道から草地に変わるあたりで、前方が開けてくる。晴れていた空がいつの間にか雲が広がり、ピークは殆ど見えない。下にツェルマットの町が見え出す。深い谷あいのドンズマリにできた町なのが良く分かる。
フルックのゴンドラ駅が左下に見え、道を左に取る。シュヴァルツゼーまで歩くつもりだったが、急な登りでしかもトラック道路のようなので、歩くのを省略、フルックから4連のゴンドラに乗る。
シュヴァルツゼーは沢山の人、レストランのテラスで昼食。
ツェルマットの町を下に見て歩く

シュヴァルツゼーの池は空が曇っていたせいかパッとしない。池を右に見て登り出す。最初はだだっぴろい砂利道を登る。ついで尾根の左側に取り付き梯子やロープのかかった道に入る。整備された道だが注意して歩くところ。
ついで、尾根の右側に出て尾根伝いに歩く。
マッターホルンに向かって尾根伝いを歩く

尾根を過ぎると暫くゆるい登りの砂礫地帯を通る。右側にマッターホルンのハンギング氷河が大きく見え出す。
途中シュタッフェル(Staffel)に下りる分岐を過ぎて暫く行くと、尾根筋を歩く最後の急な登りに入る。
下りてくる沢山のハイカーとすれ違う。中にはスニーカーの人もいればスポーツサンダルの人までいる。良くあれで歩けると呆れながら関心する。

砂礫帯を歩く。マッターンホルンとその氷河
日本の団体さんにも会う。小屋どまりですかーとの問い。そうでーすと答えると、いいなーとの声、
小屋に行ってきた人が羨ましそうに言うのだから間違い無い、ヘルリンヒュッテ泊まりを決めたのは正解と確信した。
心ははやる、しかし足が前になかなか出ない、後から登ってくる人に次々と抜かれる。小屋に着いた時には多分今日最後の客ではなかったかと思う。

私達を追い抜いてきた人も殆どが下山し、小屋で夕食をとり宿泊したのは、我々2人と、一人でマッターホルンを登るイギリス人の青年、それと2人で登るドイツ人とイタリア人の愉快な青年達、それに水源用のボーリングをしている作業員2人の合計7人。小屋は満員と思っていたので、何でー、と拍子抜け。
イギリス青年が君達も登るのかと聞いてくる。とんでもない泊まるだけ、と答えると納得の様子。明日のクライミングの準備を珍しそうに見ている我々に、道具を見せて説明してくれる。

部屋はツインをとった。暗い階段を何回か曲がって上がる。何階か分からない。外から見て4階(一番上)の右端と分かる。ベットが二つあるだけの何にもない部屋、窓側に床が少し傾いているようでベッドに寝ると頭が下になるような変な感じ。トイレは水洗。手洗い所が断水で手や顔を洗えなかったが、ボーリングが完了すれば水は出るようになるそうです。

明日は快晴ですよ、と宿の女性が言ってくれる。早々に寝る。


 コース2日目 ヘルンリヒュッテからスタッフェルヒュッテ経由ツェルマット
   ; Hornlihutte-(50min)Staffel分岐-(1h)Schwarzsee分岐-(40min)Staffel-(20min)
//////Hohbalmen分岐(途中昼食)-(1h30min)Zumutt-(1h10min) Zermatt Apartment
//////(合計5h30min標高差 下り1578m 最高点3250m)

朝3時に目がさめる。窓をそっと開け、外を見る。星空だ、ツェルマットの町の灯が見える。クライマー達を起こしてはけないと思い、ベッドに留まる。
4時ごろ、クライマー達が起きだしたようなので、外のテラスに出てみる。空が少し明るくなったが、まだ星が見える。周りの山の形が薄っすらと見える。雲ひとつ無い快晴のようだ。
5時過ぎに服を着込んで山小屋の後ろからマッターホルンのとり付き近くへ登ってみる。ここからはマッターホルンを背にして全部を見渡せる。刻々と空と山のシルエットの色が変わっていく。

大分明るくなったころ、山小屋の3人のクライマー達と、小屋の下でキャンプをしていた男女の2人が次々とマッターホルンにとり付き、登りはじめた。登っている姿が薄明かりの中に見え隠れする。
登り始めたクライマー達

5時45分、全くの静寂の中、マッターホルンの先端が赤くなる。光は黄金色に輝きながらその速度を感じないほどゆっくりと下に広がっていく。
          朝日に染まるマッターホルン      

ツェルマットからも、ゴルナグラートからも、皆、こちらを向いてこの輝きを見つめているだろうなーと思う。登っている5人のクライマーを除けば、私達2人が今マッターホルンの一番近いところに立っている、と思うと、なんとなく幸せな気分になる。

マッターホルンを見ては振り返り、明るくなってきた東の方向を見る。マッターホルン全体が光に包まれた6時少し過ぎ、太陽がキラキラと光りながら顔を出した。ちょうどサース・フェー(Saas Fee)の方向から登る。登る太陽の少し左、小さい2つの尖った山のシルエットはきっと ドーム(Dom)とテッシホルン(Taschhorn)だろう。
ヘルンリヒュッテ上のマッターホルン取り付きから見る日の出
左からDent Blanche(4357m)、Ober Gabelhorn (4063m)Zinalrothorn(4221)Weisshorn(4505m)、Dom(4545m)Taschhorn(4491m)Stahlhorn(4190mMonte Rosa(4554m)  

朝日が強く当たりだした。マッターホルンの東稜・フルッケン稜が明るく照り返す。
全てが明るい日差しの中に入り、氷河の山の光のショーがようやく終わった。
へルンリヒュッテ上から、マッターホルンの東稜
山は左からBreithorn(4164m), LIMatterhorn(3883m), Furgghorn(3451m)




朝、ヘルンリヒュッテの部屋の窓から。
手前はフルック氷河、
右クライン・マッターホルン、
中央ブライトホルン、
左リスカム

ヘルンリヒュッテと
マッターホルン
昨日登ってきた
ヘルンリ稜

ヘルンリヒュッテから見るモンテ・ローザと
ゴルナー氷河(中央)
  

朝8時の遅い朝食。チーズとオレンジジュースがうまい。テルモスに紅茶を作りヘルンリヒュッテを出発する。
急な尾根もあっという間に下り、シュタッフェルへの分岐に入る。砂礫の傾斜に作られた細いトレイルをどんどん下りる。シュヴァルツゼーへの尾根道よりも歩きやすい感じ。大分下って振り向くと、ヘルンリヒュッテが小さく見える。

ダン・ブランシュ(Dentt Blanche)の大きな山と氷河を正面に見てなおも下ると、広い道のシュヴァルツゼーへの分岐にでた。ここから見るマッターホーンはスフィンクスのよう。いつの間にか雲が出ている。
                  
砂礫の道から振り返る
正面にダン・ブランシュ(4357m)

シュヴァルツゼー分岐付近から

シュヴァルツゼーからシュタッフェルへの道は草地のゆるい下り道。樹木の中の広い道にでると、そこがシュタッフェルのヒュッテ。できれば川向かいを登り返し、Hohbalmenからトリフト(Trift)に出てツェルマットに帰りたいと思っていたので左に道をとる。目的のトレイルは遥か上に見える。Mieは不安顔。距離も長いし逃げ道もないトレイルなので、断念し、分岐を右にとりツェルマットに直接もどることにした。
マッターホルンが良く見えるベンチで昼食。この辺から見えるマッターホルンは左右対称。ヘルンリヒュッテでは覆いかぶさってくるように見えたマッターホルンの壁も、ここからはさほどではないから不思議です。

谷に沿ってゆるい下りがずーと続く。Mieのヒザの調子も私のヒザもおかしい。ヒザの内側が痛い。ゆっくり歩く。何組もの登りのハイカーと出会う。ヨーロッパの人は本当に登りが好きだ。

このトレイルは整備された道で緑が多く花も咲き、のんびりと歩ける。
筋のトレイル、
正面右の山は多分オーバー・ロートホルン(3415m)

途中小さなダムがあり、フーベル(Hubel)へ行く少し高いところを通る道の分岐が左にあるが、最短の谷側の道をとる。暫く行くと古い建物が寄り添って建つツムット(Zmutt)の集落が右下に見え出す。レストランの旗が見えるが、早く帰り着きたい気持ちが勝って先に進む。

ツェルマットの町の下に流れる川を渡り、ちょっと登る坂がきつく感じた。
ツムットの集落







クライン・マッターホルン

クライン・マッターホルンの展望台は3883mあり、ヨーロッパで標高が一番高い展望台だそうで、ユングフラウ・ヨッホよりも310mも高い。完全な晴れでもなかったのに、その展望は素晴らしいものでした。

ヘルンリヒュッテ一泊の用意をして、クライン・マッターホルンへ向かうゴンドラに7時20分に乗る。山は雲で見えない。シュヴァルツゼーでは、深いガスで乗り換えの道が分からないほど。トロッケナー・シュテークから最後のゴンドラに乗る。途中、ガスがスーと消えて、重量感のある三角形の山がにゅーっと現れた。マッターホルンだ。
ウォーという小さい歓声。
乗客は少しの日本の団体客と、ブライトホルンに登るとみえるザイルを持った人と、他は殆どがスキーかスノーボードを持っている。
降りて地下道を真っ直ぐ進むと、一面の銀世界、氷河の上はパウダー状の雪だ。遠くにスキー場が見える。その先はイタリアとの国境だそうだ。乗客の多くは早速スキーやスノーボードを履いて滑って行く。かっこいいなーと思って見ていた。そういえば、もう何十年もスキーをしていない。
氷河を被った白いブライトホルンが左に大きく見える。登る人が蟻のように列を作って小さく点々と見える。
ブライトホルンを目指す登山者

トンネルを戻り、飾りっ気のないエレベーターに乗り、階段を上がると凍りついた展望台に着く。何故か誰もいない。
4000m級の山が皆同じ高さに見える。こうも簡単にこんな景色が見られて良いのかと思うほどの素晴らしさ。もっと天気が良ければモンブランもユングフラウも見えるそうです。

///////////////////////Kline Matterhornから(右は東北東、左は西北西の範囲)    拡大→
山は左からMatterhorn(4478m), Dent Blanche(4367m), Weisshorn(4505m), Dom & Taschhorn, 右端はBreihorn(4164m)



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