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生物の大量絶滅
朝日新聞2010年4月20日から)


私たち人間はいつ頃生まれたのでしょう?そして地球は・・・?


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繰り返される生物の絶滅  (朝日新聞「科学面にようこそ:2010年4月20日から)

                                                                              東京科学医療グループ・黒澤大陸


6500万年前に恐竜が滅び、2億5000万年前に生物種の9割以上が消えた大量絶滅。地球に様々な生物が現れてから5回繰り返された大量絶滅は、どんな原因や規模だったのか。そして、かつてない速度で生物の絶滅が進んでいるといわれる現代は6回目を迎えているのか。


◇今 6回目の危機か かつてない速度

白亜紀末の6500万年前の大量絶滅の原因がやはり小惑星の衝突だった、とする国際チームの検証結果が3月に発表された。直径10~15キロの小惑星が衝突、そのエネルギーは広島型原爆の10億倍に相当。高さ300メートルの津波が発生、大気中に硫酸塩やすすが放出され、酸性雨を降らせたり太陽光を遮り寒冷化を引き起こしたりした、と推定されている。

恐竜絶滅で目を引くが、5億4200万年前以降に、生物の種の7割から9割以上が絶滅する出来事は5回も繰り返されている。

地球上の生物は、カンブリア紀に種類が爆発的に増え、次のオルドビス紀末の4億4千万年前に最初の大量絶滅があった。デボン紀後期の3億7千万年前に2回目、続いて2億5000万年前のペルム紀末には生物の種の96%が絶滅したと推定される。4回目の三畳紀末の2億年前の大量絶滅を経て、恐竜が台頭した。

白亜紀末の大量絶滅で恐竜がいなくなった後、哺乳類(ほ・にゅう・るい)の時代が訪れたように、原因となった環境変化がおさまると、それを乗り越え、新しい環境に適応した生物が栄える。大量絶滅は、進化を促し、地球の主役を交代させてきた。

絶滅の原因は何なのか。気候変動や食料不足、生息域の消失、有毒物質などが、最終的に大量絶滅に結びつくと考えられている。

ただ、それぞれの時代の原因が白亜紀末のようにはっきりとするのか。

岐阜大の川上紳一教授(地球史)は「いろんな原因が考えられる一方で、5回すべてが天体衝突だという研究者もいる。地層や化石からでは判明しないことも多く、研究は手詰まり感がある」とみている。

元となる原因について、東京工業大の丸山茂徳教授(地球惑星科学)は「地球の中、あるいは宇宙に根元の原因が求められる」と話す。異常な火山活動、天体衝突や超新星爆発による放射線などだ。

異常な火山活動は、過去にあった超大陸の誕生や分裂にもかかわった「スーパープルーム」という地球の核近くから地表までのダイナミックなマントルの流れによって引き起こされたとする説が注目されている。

大規模な火山活動の証拠は、インドやシベリアなど世界各地にある洪水玄武岩と呼ばれる台地状の大規模な火山岩として残されている。

岐阜大の川上教授は「玄武岩は穏やかな噴火のイメージだが、大量のガスの放出も考えられる。例えば、火山ガスの放出を続けた三宅島が1万個もあるようなもの。地球規模で影響した可能性がある」と話す。

◇大噴火引き金か

さらに爆発的な現象として注目されるのが、ダイヤモンドを産出することで知られ、岩盤を貫くパイプ状の細長い火山噴出物(キンバーライト)だ。ダイヤモンドは地下深くの高温高圧条件下で炭素の結晶構造が変わってできる。それがゆっくりと上昇してくると、石墨になってしまうため、新幹線並みの速度で地殻を突き抜けて噴出する必要がある。

その爆発的な噴火は、直接的には有毒な火山ガス、吹き上がった粉じんで酸性雨や気候変動を引き起こし、光を遮られた植物は光合成ができず大気中の酸素が減るなどの生物への大打撃が続いたと推定される。

生物多様性の危機が叫ばれる現代は、大量絶滅時代なのか。

「人間の活動による生物の絶滅が加速している現代は、6回目の第3波にあたる」と、東京大の鷲谷いづみ教授(保全生態学)は話す。第1波は人類の狩猟能力が高まったころで大型の哺乳類が滅び、第2波は人類の分布が太平洋の島々にも広まって、鳥の絶滅が進んだ。

第3波の現代は、人口の爆発や産業の発達などで多様な生物が打撃を受けている。「現在は複合的。短い期間で進むと、生物の適応が間に合わない。残された生態系は非常にゆがんだものになる」

◇「勢い続かない」

国連のミレニアム生態系評価では、近年の絶滅速度は化石から推定される過去の平均速度の1千倍になっており、将来は現在の10倍以上になる恐れを指摘している。

現代は年間4万種が絶滅しているという説があり、地球に数千万種ともいわれる生物は、1千年後には全滅してしまう勢いだ。

ただ、鷲谷教授は「このまま進めば、大変だが、人間の活動が続かない」と予想する。東京工業大の丸山教授は「地球の活動に比べ、人間の影響はわずか。核実験の影響で1940年~80年は寒冷化したとの考え方があるが、それでも0・1度だった。ただ、人間が生きていくためには、生物多様性の危機を警鐘する意味はある」と話している。

        ◇        ◇

《筆者の黒沢大陸から》

港の桟橋から海面を見下ろし、海底がはっきりと見えて感動した記憶があります。むろん、都市部ではなく、仕事や旅行で訪れた汚染が少ない地域の海です。自分のことは棚にあげて、人間が少なければ東京湾でも同じように見られるのだろうか、人間はじゃまだな、と思いました。

この記事は、3月に発表された国際チームの検証をきっかけに書いたのですが、これまでも絶滅や人間の力の大きさと限界に興味を持って、「人間がいなくなった後」の世界のことを、ときどき想像していました。

テーマの「繰り返された大量絶滅」、過去に何回も大多数の生物滅び、96%もの生物の種がいなくなったことがあっても、地球には再び多様な生物が住む世界が戻ってきたわけです。地球と生命のダイナミックさに感動しました。人間が生きている時間とは違うスケールの世界、本当に人間はちっぽけな存在だと感じます。

とはいえ、人間だって、人間の力が及び、人間を支える生物を滅ぼして、人間を生き続けられなくするぐらいの力はあると思います。ですから、私たちが今の生活を続けるためには、生物多様性や環境の問題を考え、取り組む必要はあるでしょう。

記事を書き終え、大量絶滅の時空間スケールの目で見たら、よく見かける「地球に優しい」「地球を守る」というキャッチフレーズの「地球」を「人間」に置き換えてみたくなりました。

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