シアムの九天
 
ジム・トンプソンの家
 

運河をゆく
 
  故郷喪失 
 
  アユタヤの獅子 
 
随風舎

 
 
 アユタヤ紀行

 ワット・ラチャナダー1階南側
    左の写真は2階   photo 2010. 1. 3
 
  1階のフェンスには仏像の文様が施され、
  通路にその影を投げかけていた。
 
 
 
運河の水かさが多い11月、「ジム・トンプソンの家」の近くで、 十人ほどの少年達が泳いでいた。濁った黄土色の水に発砲スチロールが漂う。 運河沿いの細道を東へ行くと、「運河ボート」の船着場・サバーンチャーン橋がある。 バラックの売店があり、数人がたむろし、タイ将棋(マークルック)を指している。
 
交通渋滞のために復活した「運河ボート」は、通勤・通学の手段。 運河は自動車の普及によって、すでに裏通りと化している。 船べりにしぶきよけのシートが張られ、視線はもっぱら前方に注がれる。 両岸に干された洗濯物を尻目に、エンジン音唸らせて猛スピードで進行する。
 
西端の船着場、バンファー橋付近は運河の三叉路。 チャオプラヤー川上流と下流方面に分岐するかつての要衝。 白亜の多角形の要塞に旧式の大砲が並ぶ。 タイは東南アジアで唯一、植民地化を免れるが、 橋の欄干や民主記念搭へ向かう大通りの景観は、19世紀西洋風である。 日本と同様、西洋のモダン様式を取り入れ、侵略に備えたのであろう。
 
要塞の背後にワット・ラチャナダーがある。 その寺院の代表的な建造物は、洋風の尖塔が林立する外観である。 19世紀中頃に建造された建築本体は、ピラミッド型で中央に螺旋階段がある。 まるで天守閣のように、周囲が展望できる。
 
建築内部は不思議な空間である。 最上階の祠のような場所を除いて、各階に部屋がない。 通路が格子状に交差するだけである。 2階では、各通路の突き当たりに仏像が安置される。そこも通路である。