公害紛争処理制度への疑問 3

           ーまとめー      20131106
                    


   「公害紛争処理制度は、公害紛争を民事訴訟で争った場合、その解決までに多くの時間と費用がかかるなど、被害者の救済の面では必ずしも十分でなかったことから生まれた制度です。」
と、総務省HPでは説明されている。
 また、政府インターネットTV番組にあるように、民事裁判ともなれば、立証責任は原告側にあり、場合によっては数百万円という高額な調査が必要であり、そのような負担をしたとしても満足の得られる結果とは限らないと説明されており、、被害者が民事裁判を躊躇し、自ずとこの「親切な至れりつくせりの制度」を選ぶように誘導する。
 しかし、実態は公害苦情相談制度が機能していないのと同様、公害紛争処理制度も機能していない。にも関わらず実態からかけ離れた説明が番組では行われ、それを説明している公調委事務局審査官はその乖離をどのようにお感じだろう。

以下、公害紛争処理制度が特長とする点について現状を書きたい。
 
★・個人で調査するには数百万円の費用
 地方自治体が民民不介入と言わずに、環境省の低周波音講習会に真面目に参加して
 研修成果を現場でキチンと発揮しさえすれば、地方自治体の責務は果たされることにな
 り、調査費用は個人負担とならないはずである。自治体の中には、キチンと研修し、市民の
 ために責務を果たしている所もあり、そのような自治体が増えることを願っている。被害者
 の方は、あきらめずに自治体に根拠を示して粘り強く交渉してほしい。

★低廉な費用 公害紛争処理制度は民事裁判の1/4
 公害紛争処理制度の申請費用が3300円で裁判ではその4倍の13200円であろうと、弁護
 士費用からすると僅差である。弁護士の有無は申請人次第であるが、実際には公害紛
 争処理制度でも弁護士を代理人として依頼する必要がある(注)。
 
★迅速
 申請から手続き終了まで平均1年半かかる。また、元申請人によると係争期間が2年間で
 あった。民事裁判で控訴、上告を経て3審までいくのなら約10年かかり、それに比べれば迅
 速というに過ぎない。この元申請人の場合、裁判提訴から和解まで1年3か月であった。

★中立性
 裁判一審では被告は原告である元申請人の主張を受け入れたが、公調委では元申請人をクレーマーと裁定した。公調委は事業者を保護し、中立性を欠いていた。

★委員は本当に公害の専門家なのか?
 この問題は疫学的に扱われるべきである。疫学は現象学であり、現象を重要視すべきで
 あるが、メカニズムがわからなければ、科学的知見が不十分、因果関係が不明であるとして
 深刻な被害が認められず、低周波音被害者は今まで冷酷な扱いを受けてきた。
 任命される委員の専門性に問題があるのではないか。 


 公調委活動をPRするこのTV番組は2009年と2011年に制作されている。加藤修一氏国会質問主意書に対する答弁書では2007-2010年の4年間に公害審査会には、714件の申請数があり、その中の15件が審査され、そのうち和解に達したのは2件である。前ページ元申請人の経験からすると、和解に至った2件も申請人がどこまで納得できる内容であったのかは疑問に思う。何より、受け入れ難く、拒否するしかない和解案を公調委が提示することに問題を感じる。
 このように数字だけではなく、内容的にも貧弱、お粗末な実績でありながら、井坂弁護士のブログにあるように、公調委は大仰なスタイルで行われ、時代錯誤のお白洲のような雰囲気が漂うようだが、税金の無駄遣いである。天下り先の一つか。

 この制度を活用させる意図でTV番組を制作したのなら、内容に応じた有効な実践を望む。そして、訴訟では「被害者の救済の面では必ずしも十分でなかった」ことが理由でこの制度を設けたのであるから、その趣旨に沿って制度の抜本的な改革を求める。
 
  
 




















高崎エコキュート裁判代理人井坂氏ブログより
「・・・ 2回目の審理の場で委員長から『これ以上は素人では無理だ。・・・・・・・・・・早急に弁護士を立てるべきだ』」という趣旨の指摘を受けたそうです・・」「こうして、私がS氏夫婦の代理人として「公調委」(略します)の裁定手続に関与することになりました。


























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