公害紛争処理制度への疑問 1

           ー公害紛争処理制度とはー      20131105


 隣家によるコジェネ機器の設置や、住宅地に忽然と開店した商店の多数の空調機器により、突如として低周波音被害を被る人が増えている。被害者が市町村の相談窓口を訪ねると、都道府県の公害審査会や公害等調整委員会(以下、公調委)を勧められることがあるが、この公害審査会や公調委はどのようなものか。

 総務省の公害等調整委員会について、公害紛争処理制度は次のように紹介されている。

 「公害苦情は、地域住民に密着した問題であり、これを迅速かつ適正に解決することは、よりよい生活環境を作る上で極めて重要なことです。 公害紛争の迅速・適正な解決を図るため、司法的解決とは別に公害紛争処理法に基づき公害紛争処理制度が設けられています。」

 そして公害苦情については、次のような制度がある。
1. 公害苦情相談制度
  各市町村公害苦情相談窓口簡単な手続きによる解決 
 「住民の苦情を聞き、苦情の処理に必要な調査を行うとともに関係機関と連絡をとりあ
  って、当事に対し改善措置の指導や助言を行うなど、苦情の受付から解決に至るまで一
  貫して処理を行っています。」
  (管理人補足 ここで、問題解決に至らない場合は、公害審査会や公調委が勧められる)

2 .公害紛争処理制度
 各都道府県:公害審査会 国:公害等調整委員会 
 「公正・中立な第三者機関である公害等調整委員会や都道府県の公害審査会が被害者と
  加害者との間に入り、あっせん、調停、仲裁、裁定という手続で、こうした紛争を解決
  する制度です。」
  {管理人補足 紛争の内容や当事者間の関係、賠償金の有無などにより、あっせん、調
   停、仲裁、裁定(公調委のみ。原因裁定と責任裁定の2種)を選択する}

また、政府インターネットテレビにはこの制度についてわかりやすい説明用の番組が用意されている。

政府インターネットテレビ(別ウィンドウ) 公害で困ったらまず相談~公害紛争処理制度って何? 2009年制作
ここでは民事裁判と比較して、公害紛争制度の持つ利点が述べられている。            
① 民事裁判では、個人の責任で、加害行為と被害発生の因果関係を立証し、被害者の症
  状と原因と思われる事柄の因果関係を自ら調査しなければならず、それにかかる費用や
  時間が被害者にとってかなりの負担となる。調査の内容によっては数百万円かかるものも
  あり、かならずしも満足のいく結果は得られない。公調委は国の費用で専門の調査機関に
  調査を委託したり必要な鑑定を専門家に依頼できる。
② 裁判官は多岐にわたる事件を取り扱うが、公調委では、公害紛争処理を専門に取り扱う
  第一級の専門家が検討に参加し、専門的知見を活用できる。公調委が公害の被害につ
  いて、加害行為と被害との間の因果関係に限定して法律的な判断を下すこと  
③ 申請費用が民事裁判のおよそ1/4で、低廉。
④ 民事裁判より迅速で、適切な解決が図られる
⑤ 慰謝料の支払いや設備改善等、公調委は紛争解決後も調停、又は責任裁定で定められ
  た義務の実行の調査など、その後もフォローアップする。

番組ではデメリットに言及することはないが、加害側が参加を拒否すれば紛争処理は成立しない。
政府インターネットテレビ(別ウィンドウ) 「徳光&木佐の知りたいニッポン!」~「騒音や悪臭などでお困りの方へ 公害紛争処理制度」2011年制作
 ここでは知名度の高い徳光和夫氏を起用して公害紛争処理制度を一般向けにわかりやすく説明している。近隣の悪臭やコンビニ周辺の騒音による近隣迷惑、空調の室外機、犬の鳴き声、エアコンの音など、生活の中の身近な公害は法律がないので、このような問題で困っている場合も、気軽に敷居の低い公害紛争処理制度を利用するよう勧めている。日常生活で困ったことが起こっても、こんな制度があるなら安心だと錯覚してしまうような番組である。
 

 「一人でも被害を感じればそれは公害である」と明言しているが、はたして実態はどうであろうか。公害苦情相談窓口では親身に対応し、無料で相談に応じ、1か月以内に対処すると紹介されているが、当方在住の自治体公害苦情相談窓口では、民民不介入の一言で近隣同士の問題であると却下され、当方の被害は公害苦情の件数としてカウントされることはなかった。「親身の対応」も「調査」も「助言」も全く行われず、苦情相談窓口が機能しているとは言えない。

 また、終結した公害紛争事件の一覧を見る限り、和解に至る事件は少なく、その棄却率の高さに制度そのものに疑問が起こる。それどころか、その前段階で受理されず、門前払いされる件数が非常に多いが、広報でPRされるように親身な対応で満足できる解決が得られるとは疑わしく、実際、この制度を利用した多くの申請人が不信感を抱いている。


1  2  3