事故情報データバンクシステム 2 20130125

 
  2012年10月に消費者庁消費者安全調査委員会(事故調)が発足した。11月に、初の調査対象として、シンドラー製エレベーター、パロマ湯沸かし器、エスカレータ―など、5件が選定されたが、2件は「調査に支障あり」とのことで、公表は見送られていた。12月9日、エコキュートがこの2件のうちの1件であったことが朝日新聞朝刊で報道され、その後、多くの新聞、TVニュースでも取り上げられた。そして、その影響か、事故情報データバンクにおけるエコキュートと思われる商品の事故情報は以降約1か月半ほどの間に10件増えて、累積件数が55件となっている(2013年1月23日現在)。
 エコキュートによる低周波音の問題が広く報道され、周知の事実になっていくことは、被害者たちにとってありがたいことである。業者は低周波音に対し、有効な対策を持たず、無益な対策を繰り返し、苦情をいう隣家を執拗なクレーマーとして位置づける。「何処にでも生活騒音はある。お互い様だから我慢すべきだ。敷地内に何を置こうと勝手」という機器所有者や設置業者の声が多く、別次元の問題であることが、なかなか理解されない。よって、社会の認知度が高まることにより、この機器へ疑いの目を持ち、所有者が被害者と同じ消費者として、被害を認め、理解することが、円満な話し合いにつながり、解決の糸口となる。

 エネファームはエコキュートよりも稼働時間が長く、それだけ、被害をもたらす危険も高いと考えられるが、実際、それぞれの普及台数に比べると、エネファーム被害の発生率は高くなっている。 事故情報データバンクシステムにはまだ、家庭用燃料電池としては、4件の苦情しかないが、大阪ガスに寄せられている苦情件数は7,8件となっており(2012年11月現在)、この数値からすると、全国で少なくとも40,50件の苦情数があることになる。2009年5月号建築ジャーナルでは、エコキュートによる健康被害という特集記事が組まれており、自殺を始め、深刻な被害が幾例か示されているにも関わらず、各製造メーカーは、苦情件数なしとの回答を寄せている。それと同様、エネファームに関する大阪ガスの言う苦情件数も信頼するに値せず、実際の苦情件数は相当数あるのではないかと思われる。国会質問主意書37号*(参議院議員加藤修一氏)によると、あと20年ほどで、エコキュートやエネファームなど高効率給湯器が世帯数の9割まで浸透するそうであるが、早い時期に被害を調査、対策をしないと、社会の近隣関係を崩壊させ、低周波音が至る所で発生し、大きな社会問題となることは必至である。また、地方自治体の公害苦情相談窓口には平成19年から4年間で低周波音関連苦情が714件であったが、そのうち、公害審査会の審査に付されたのは15件で、調停成立は2件であるという。調停成立率は約13%と非常に低い。これと同様、残りの699件についても、きちんと苦情処理がなされて、解決しているとは、到底思えない。想像を絶する過酷な被害でありながら、公害苦情窓口で、受付もなされず、門前払いされた事例を知っているが、これこそ棄民と言わずして、何と言うのだろうか。
 

 また、37号答弁書から、2001年からの調停の件数とそのうちの調停成立件数をグラフにしたものが右図上である。グラフ化には低周波音による健康被害の防止に関する質問主意書と答弁書」へのコメント」表を参考にした。調停手続きを行なった件数は年々増えていき、そして、調停成立の割合は下がっていく。これは、低周波音被害が世に広がりながらも、解決がより困難になっていくことを表している。また、調停申請から手続き終了まで平均1年半を要するようである。一旦、低周波音被害に遭遇すると多大な影響を受けながら、手続きに時間が掛かり、解決の道は極めて険しい。もともと公害は、認められにくい闘いの歴史を持っているが、低周波音解決は非常に困難で、絶望的という実態がよくわかる。

 右図下は、消費者庁・国民生活センター事故情報データバンクから、低周波音と推測される事故情報累積件数を表したものである。ここでも、年々、低周波音被害は増加傾向を示す。特に2012年に入って件数が急に増え始め、2013年は一段と多くなりそうな気配である。2009年5月に販売の始まったエネファームも、徐々に事故情報が寄せられている。環境省の低周波音への対応は、参照値を例として、先進国として恥ずべきものであるが、消費者庁の取り組みに期待したい。消費者庁は事故情報データバンクをただ集計するだけではなく、事故を予防するのに役立ててほしい。
 

 当方は2010年12月末に被害にあったが、この被害が低周波音によるものである確証を得て、同様な被害を集めるのに時間をかけ、被害仲間とともに2012年9月号建築ジャーナルに寄稿した。また11月にはエネファームを国会質問主意書にとりあげてもらった。そして、次は、エネファームがエコキュートと同様、事故調の調査対象となるのを待ち望んでいる。

 *181回国会質問主意書                        
低周波音による健康被害の防止に関する質問主意書第37号2012年11月12日  質問本文 答弁本文
低周波音の健康被害対策に関する質問主意書63号2012年11月16日      質問本文 答弁本文