海をテーマにした俳句
  
季=新年
           
初凪の波こまやかに三河湾 坂口 春潮
初凪に力を抜きし波寄する 山田 裕理子
初凪や波の運びし貝光る 池野 美佐子
初凪の光の窪み番ひ鳰 加藤 耕子
祖母恋し正月の海帆掛舟 中村 草田男
初凪に舷あらふ舸子ひとり 山口 草堂
たちまちに日の海となり初景色 鷹羽 狩行
船宿の飾りは海へ放ちけり 佐川 広治
初怒涛噛みて放さぬ虹の脚 すずき波浪
人日や艀だまりにシャツ干され 館岡 沙緻
初日あげ海は一気に軽くなる 松田 秀一
初市の港は声を荒使ひ 松田 理恵
しらじらと明けゆく海に初荷船 藤井 雅美
初荷船鳴門若布の荷を降ろす 久保 辰雄
浦々の菊あつめゆく初荷船 岡本 まち子
鰤の背に雪ぶっかけて初荷船 能生 利代
初日の出水平線をいま離れ 松下 美伸
たたみくる波おだやかに初日の出 奥村 田鶴子
浦住みのこの豊かなる初日の出 佐藤 明正
海のさまここに極まる初日の出 磯野 充伯
旗雲をつらぬき初日いま海に 中曽根 康弘
初漁のどの船も灯を太く航く 林 乃婦子
初釣りの荒磯を一過朝の雨 山本 照子
初釣りや防寒服につつがなき 伊藤 郁男
初網の大漁なりし船囃子 長谷川 浪々子
初漁の波頭かがやく親子船 法橋 せつ
潮けぶる波頭初日をいただける 中曽根 康弘
漁始海に一礼海女もぐる 美濃地 礼子
海峡に小船の布陣漁はじめ 青木 初子
大漁の旗青竹に漁始め 石原 かおる
漁小屋に湯呑伏せ置きお正月 山本 ちまき
航跡も初日が染めて連絡線 板部 麦生
洗はれて櫓櫂細身や注連飾 大野 林火
若潮の濃きを汲みたり舟つるべ 山崎 冬尊
磯道に若潮迎ふ人と逢ふ 牧野 みつ子
大前に若潮汲の蜑揃ふ 斉藤 朗笛
若潮の船端叩きふくれ来る 中山 緑雨
磯宿の賑ひ初日見の客に 松元 桃村
一舟の走れる沖を初景色 宮島 冨司子
一湾に一舟もなき初景色 平野 春陽
入船に出船年賀の笛鳴らす 日置 知翁
魚見台に立ち初凪の日の出待つ 森 登三哉
浮寝鳥乗りて初日の波頭 友永 一郎
元旦の光茫灘のうねりより 萩原 徳次郎
大灘に船影見えず初日の出 吉田 龍雨舟
大濤にをどり現れ初日の出 高浜 虚子
沖釣の海におろがむ初日の出 中谷 克子
海境に現るる一舟初景色 岡田 文子
初漁の神酒吹きかけて舵を守る 姫宮 研石
元旦の七島晴れとなりにけり 高橋 悦男
伊豆七島海に溶けゆく初景色 斉藤 草水
元日の出帆旗ある異国船 五十嵐 播水
灯台の光芒うすれ初明り 柳沢 仙渡子
黒潮の大うねりして初明り 船岡 昌幸
環礁の波がしらより初明り 三崎 悦子
火の山を置きたる灘や初明り 岡本 まち子
初市の躍れる鯛を糶りにけり 細見 しゅこう
初市の手打響けり鰤の上 城内 里風
初糶や蛸のはりつく台秤 暮内 千恵
初競の祝儀相場に納まりし 萩江 寿友
沖へ沖へ水脈太く曳く初霞 青木 泰夫
大堤防国原鎮め初霞 出井 康想
杖に指す利島のあり処初霞 坂根 巌雪



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