海をテーマにした俳句(秋)

  季=秋




青北風や小港の道ここに尽き 吉岡 恵信
膨らみて渦とはなりず秋の潮 椎橋 清翠
秋の潮寄せて破船の錆洗ふ 奥村 麦秋
水際の水透きとほり秋の海 島崎 伸子
秋の浜一握の砂惜しみ返す 鷹羽 狩行
山の端や海を離るる月も今 与謝 蕪村
亡母や海見る度に見る度に 小林 一茶
ふるさとの月の港をよぎるのみ 高浜 虚子
湾の潮しづもりしきりぎりす 山口 誓子
海をみて佇てば海よりあきの風 久保田 万太郎
船の名の月に読まるる港かな 日野 草城
敬老といふ日の海を見に行けり 長谷川 双魚
秋潮の沖の黒さや塩屋閉づ 澤木 欣一
海峡をつなぐ大橋天高し 木村 山花
大桟橋突端の秋惜しみけり 西嶋 あさ子
港の灯一つ一つに秋ふかむ 稲垣 敏勝
下北の月の港に核のごみ 長田 のぼる
軍港もかくなりにけり秋しぐれ 酒井 一鍬
神留守の海を照らせり標識灯 鈴木 萌
「回天」の母港の波止場鯊を釣る 羽立 みちこ
舷梯をあぐればいよよ月の航 久米 泊灯
秋刀魚船帰港の水尾を太くひき 後藤 芝津代
潮騒の高まる夜半銀河濃し 小野里芳大
燈台のほか人住まぬ島の秋 大久保 橙青
船窓に故国の月を嵌めにけり 小川 三奈


季=冬へ