海をテーマにした俳句 (春)

季=春



石蓴掻く男に別の岩場あり 工藤 ミネ子
青海苔の掻棹ひけば舟移る 本郷 刀朗
赤潮の波をころして波止のどか 水野 朱堂
朝東風や鴎大漁の帰船追う 早坂 雅州
一湾に棹つき立てて浅蜊舟 尾花 よしみ
荒東風や海に生るる波がすり 杉本 すみ
竜飛海女時雨るる礁に荒布干す 大久保 橙青
飯蛸を取るたいまつのゆらぎけり 中井 ユキ子
旗立ててB子舟は又沖へ 高浜 年尾
B子のとれて讃岐に春来る 山下 輝畝
渦潮に海の奈落といふ昏さ 岩崎 美代
海開けや軋む流氷まだ岸に 浅野 ミサ
貝寄風や鬼界島へ渡る船 有馬 朗人
貝寄風にこぞりて貝の嘆き寄す 上田 五千石
観潮船己れ傾き渦を見す 藤原 昇
入港の汽笛はやさし春夕べ 細井 和子
花曇り白き巨船の出港す 望月 燦女
桜蝦干して防潮堤高し 新村 寒花
桜鯛明石大門の色変へる 天野 莫秋子
鰆来て瀬戸の内海活気づき 宇野 政江
一斉に鋏振り上げ汐まねき 和才 ふさ子
浜風のほどよき強さ白子干す 橋川 かず子
強東風の鴎はとべり波の穂を 水原 秋桜子
艫綱のゆるきは水漬き島の春 鷹羽 狩行
泊船の軋む纜余花の風 倉橋 弘窮
花冷に出航船がドラ鳴らす 室岡 青雨
潮流に身を任せたる流し雛 山本 愁星子
入江とも思はれぬ波涅槃西風 稲畑 汀子
海苔網の張られて湾をせばめけり 中村 桑摘
ひらかなの柔かさもて春の波 富安 風生
春疾風鳶f吹き上ぐる港口 小林 俊彦
焼き玉の匂ひ舳先に彼岸潮 鷹羽 狩行
揚舟に砂かたよりて彼岸西風 桂 信子
ほたるいか捕はれし身の光りけり 村野 陽子
差し遡る潮におくれて水温む 秋光 泉児
玄海の干潟平らにC五郎 中村 春逸
若布刈舟出でて飛燕の土佐泊 水原 秋桜子
干し上げし目刺に残る海の色 柿沼 常子
やどかりの恋育ちつつ忘れ潮 大藪 筍史
若布干す磯の香りを干すごとく 野中 小夜子









季=夏へ