海をテーマにした俳句(冬)



  季=冬
揚舟に烏群れゐて冬ぬくし 北垣 庸子
磯山はかもめのねぐら冬の海 島村 茂雄
出船より入船に日の短かり 後藤 日奈夫
浮寝鳥水の動きに逆らはず 太田黒 たもつ
冬近き海鳴り挽歌とも聞きし 桑田 青虎
海に出て木枯し帰るところなし 山口 誓子
凩の果はありけり海の音 池西 言水
この港障子を洗ふさびしさよ 水原 秋桜子
欠航といふも冬めくもののうち 高野 素十
北欧の船腹垂るる冬鴎 秋元 不死男
移民船冬空へ旗ちぎれ飛び 五十嵐 播水
耕牛やどこかかならず日本海 加藤 楸邨
観測船寒夜すばるへ打電する 冬原 梨雨次
寒泳の出を待つ群はかたまれる 河野 南畦
朽舟を白しと思ふ冬の浜 桜井 青路
冬波の標的のごと座礁船 石垣 百代
岩かげに舟傾けて海鼠突く 宮脇 寿子
波頭割れて冬日をまき散らす 浜坂 みち子
二ン月のさむさ重ねし波の色 本多 遊子
波の花飛ぶ風音と変りけり 下谷 行人
冬海や今日大荒れの襖濤 林  星夢
冬怒涛噛む岩々に神在し 大橋 敦子
冬怒涛衰ふるときかへりみず 山田 みずえ
冬凪ぎて寡黙の波の夕べ燃ゆ 石原 八束
冬凪にタンカー波を立てず航く 五十嵐 播水
抱擁を解くが如くに冬の濤 加藤 三七子
泊船の灯の息づけり冬の靄 伊東 礼子
泊船の除夜の汽笛の一斉に 亀山 士洋
白濤のたてがみ冬の周防灘 石川  忠
極月の破船の胴をむしり焚く 飯山  修
波涛挽歌冷え切りて面上げゐたる 山田 みづえ
砦めく浜の揚げ舟虎落笛 四の宮 白帆 
吊すもの多く浜小屋冬ざるる 久崎 冨美子
浜焚火煙にかざす指太し 西村 成子
灯台も鎖して氷海音を断つ 川瀬 カヨ子
雪を踏み行く氷海の渚まで 大橋 宵火
日輪のほか氷海は何もなし 竹腰 八柏
大鮃跳ねて入日を早めけり 園部 雨汀
夕暮のはかりに重き寒鮃 有馬 朗人
フィヨルドを航く雪渓をま正面 角  淳子
寒の雲垂れて人無き船だまり 後藤 望洋子
冬海にひとり漕ぎ出づ思ひあり 大橋 敦子
リスボンの旅のひと日の寒霞 小沢 香織
やわらかに海エメラルド冬霞 増田 元子
船の吐く水に寄り合ひ冬かもめ 小田島 寿子
ふゆじほの音の昨日はわすれよと 久保田 万太郎
冬汐といへどもぬくし岬の果て 鈴木 真砂女
冬浜に浪のかけらの貝拾ふ 上田 五千石
冬の浜跼みて拾ふ何もなし 大内 迪子
冬渚駈けてきのうが遠くなる 伊東 乃理子
燠となる冬夕焼や海の果て 加藤 三七子
むらさきの冬夕焼を掌にすくふ 古舘 曹人
一湾の気色立ちをり鰤起し 宮下 翠舟
鰤起し大佐渡小佐渡つらぬけり 皆川 磐水
帆船のマストは高し冬の雲 野口 和歌江
水脈曳きて水脈のなか航く冬日和 鷹羽 狩行
冬濤や燈台のこる無人島 山崎 寥村
流氷に無人灯台しりぞかず 森田  峠
羅針盤指す北の海雪曇り 大橋 幾生


俳句のペ^−ジへ戻る