生体の受動的な電気的特性と機械的特性

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  未熟な左手が作った生体物理に関するノートです。誤りがございましたら、ご連絡下さい。



生体の受動的な電気的特性

 生体内の電気的特性を表現する上で導電率と誘電率が問題とされます。生体組織や細胞の電気的特性は周波数によって異なる周波数依存性を示し、周波数が高くなると生体内の導電率は増加し、誘電率は減少します。その変化の過程には値が急激に変化する周波数の性質(分散)がみられます。

導電率

 導電率とは、電気の流れやすさを示す指標。低いほど抵抗値が大きく、高ければ電気が通りやすいことを示します。

≪生体特性≫

高周波での導電率>低周波での導電率 →高周波程電気が流しやすくなります。
細胞内外液中のNa、Clイオンに関係します。
組織内での導電率 : 血液>骨格筋>脂肪
細胞内液の導電率>細胞膜の導電率 →細胞膜は、絶縁体で電気を通し難い性質があります。


誘電率

誘電率とは、電気のためやすさを示す指標です。低いほど電気をためにくく、絶縁体としての役割を果たし、高いほどより多くの電気をため込めます。

≪生体特性≫

低周波での誘電率>高周波での誘電率  →低周波ほど電気をためやすくなります。
組織内での誘電率 : 血液>肝臓>骨格筋>脂肪>骨


分散

  誘電率又は、導電率が急激に変化する周波数部分が3ヶ所存在し、その部分を特別に分散といい、周波数の低い方からα分散、β分散、γ分散と呼びます。

≪α 分散≫

  数100Hz付近でみられる分散。体液内のイオンの移動速度に関係しています。


≪β 分散≫

  1MHz付近でみられる分散。細胞膜の電気容量と細胞内液抵抗に関係しています。
低周波数ではコンデンサとして働く細胞膜によってインピーダンスが高くなるため、細胞外液中を電流が流れます。
高周波数ではコンデンサとして働く細胞膜によってインピーダンスが低くなり、電流が流れやすくなります。


≪γ 分散≫

  20GHz付近でみられる分散。水分子の回転に関係しています。
電子レンジによる加温は、この現象が利用されています。


異方性

  方向によって性質が異なることを異方性といいます。
血液は組織の中で一番導電率が高いので、腕の長さ方向の電気抵抗は、太さ方向に測った電気抵抗より小さくなります。異方性は、生体内における電気的性質に限らず力学的特性、光学的特性、熱的特性などでも見られます。



機械的特性

圧力

 単位面積あたりに垂直にかかる重力(ある点に加わる力)

単位換算
Pa1Pa=1[N/m2]=1/100[hPa]
hPa1hPa=100[Pa]
bar1bar=1×105[Pa]=750mmHg
atm1atm=1.013×105[Pa]=1013[hPa]=1.013[bar]=760[mmHg]
mmH2O1mmH2O=9.8[Pa]=1/13.6[mmHg]=0.1[cmH2O]
mmHg(torr)1mmHg=1.3×102[Pa]= 1/760[atm]=13.6[mmH2O]

単位の大小関係: atm > kgf/cm2 ≧ bar > mmHg > hPa > cmH2O > mmH2O > Pa


応力 σ

応力

  物体内部で形状を維持する抵抗力(内力)をいいます。単位面積あたりに働く力で表されます。
  応力


ひずみ ε

  力が作用した時の物体の変形をいいます。単位長さ当りの伸びで表されます。
  ひずみ


ヤング率 [N/m2]

  ヤング率が高いものは、硬く、伸び難いことを表します。
  ヤング率


応力とひずみの関係(フックの法則)

  弾性体では、外力によって生じるひずみの大きさが比例関係を示します。
  σ [Pa]=E・ε  
  σ:応力  E:縦弾性率(ヤング率)  ε:ひずみ


ポアソン比

  縦ひずみに対する横ひずみの比をいいます。
例えば、血管であれば、横よりも縦方向に伸びやすいためポアソン比は小さくなります。
  ポアソン比


コンプライアンス

  伸展のしやすさ、伸びやすさを表している。
同じ圧力でどれだけの容積変化があるかをみる。コンプライアンスが大きいと小さい圧力で大きく伸びる。
コンプライアンス=刧X/儕








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