物質の構成と物質量

HOME : 試験案内 : 目次 : 参考書 : Link : 参考文献 : メール



毒物劇物取扱責任者試験の基礎化学でよく出題されている所をまとめてみました。
誤っている点がございましたら、メールで指摘して戴けると嬉しいですm(_ _)m。


物質の構成

物質の構成


(1) 純物質と混合物の違い

  純物質は、それぞれの物質固有の性質を持っている。特に沸点・融点は、その物質によって一定の値を示す。逆に混合物は、同じ成分物質(純物質)からなる混合物でも、混合する割合によって融点・沸点が変化する。


(2) 元素

  それ以上の簡単な成分に分けることができない物質
例えば、水(H2O)であれば水素ガス(H2)と酸素ガス(O2)とに分けられ、又それを分解すると水素元素(H)と酸素元素(O)に分けられる。水素元素や酸素元素は、もうこれ以上は分けることができないため元素といえる。
周期表
覚えておきたい元素記号と元素名


(3) 単体と化合物

  単体とは、1種類の元素からなる物質をいう。酸素であれば、酸素元素という1種類の元素が2つで構成されたものであり、ナトリウムは、ナトリウム元素という1種類の元素1つで構成された単体である。
  化合物とは、2種類以上の元素からなる物質をいう。水であれば、水素元素と酸素元素の2種類の元素で構成されたものであり、塩化ナトリウムは、ナトリウム元素と塩素元素の2種類の元素で構成されたもの化合物である。
例) 単体 : 水素(H2)、酸素(O2)、窒素(N2)、炭素(C)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ナトリウム(Na) etc...
   化合物 : 水(H2O)、塩化ナトリウム(NaCl)、硫酸(H2SO4) etc...
覚えておきたい化合物


(4) 同素体

  同素体とは、ただ一種類の元素でできた単体で、お互いに性質の異なる物質同士をいう。
例えば、同じ炭素という単一元素で構成されたダイヤモンドと黒鉛(鉛筆の芯)は、見た目(色、透明度)、硬さ、電気伝導性などが異なっている。
例) 酸素(O) : 酸素(O2)とオゾン(O3)
   炭素(C) : ダイヤモンドと黒鉛
   硫黄(S) : 斜方硫黄、単斜硫黄、ゴム状硫黄
   リン(P) : 黄リン、赤リン
SCOP(スコップ)と覚える



原子と分子とイオン

  物質を構成している粒子として原子・分子・イオンがある。

(1) 原子

  物質を構成している基本的な粒子原子である。各元素に応じて原子があり、原子の種類(原子という粒子に存在する陽子の数で分けたグループ)が元素といえる。


(2) 分子

  分子とは、その物質がもっている性質をあらわせる最小の粒子をいう。例えば、酸素分子は酸素原子2つであらわされますが、これを酸素原子1つであらわすと酸素分子の性質を持たなくなり、酸素分子とは呼べません。このように原子が幾つか集まって特定の性質を持つことのできる最小の粒子を分子といいます。水であれば酸素原子1つと水素原子2つ、二酸化炭素であれば酸素原子2つと炭素原子1つ、アンモニアであれば窒素原子1つと水素原子4つの集まり。
しかし、物質の中には分子に相当する粒子がないものもあります。鉄や銅などの金属や塩化ナトリウムや硫酸銅のようなイオンからできている結晶がそれにあたります。


(3) イオン

  原子は、電気的に中性であるが、原子が電子を放出したり、あるいは電子を受け取ると正または負の電荷を持つ粒子に変化する。このような粒子をイオンと呼ぶ。正に帯電したイオンを陽イオン、負に帯電した陰イオンという。
陽イオン : 水素イオン(H+)、ナトリウムイオン(Na+)、カルシウムイオン(Ca2+) etc...
陰イオン : 塩化物イオン(Cl-)、水酸化物イオン(OH-)、硫化物イオン(S2-) etc...

原子と分子とイオン



原子の構造

  原子は、中心に正の帯電している原子核があり、その周りに負の電荷をもつ電子が回っている。
原子核は、正の電荷をもつ陽子電荷をもたない中性子からなる。
正の電荷をもつ陽子と負の電荷をもつ電子の電気量は互いに等しく、又原子中の陽子の数と電子の数は等しいため原子全体としては電気的に中性である。

原子の構造

(1) 原子番号

  原子核の中の陽子の数原子番号という。


(2) 質量数

  原子核中の陽子の数と中性子の数をあわせた数質量数という。陽子と中性子の質量はほぼ等しいが、電子の質量は、これらの約1/1840と極めて小さく、原子の質量としては無視できるため、原子核の質量を原子の質量としている。
元素記号の表記としては、原子番号を左下に、質量数を左上に付けて表す。


原子番号と質量数


(3) 同位体

  原子番号が同じで質量数(中性子数)の異なる原子同士を互いに同位体と呼ぶ。
同位体は、化学的性質がほぼ同じで物理的性質が異なる
例えば、同位体の例は互いに同位体となる。


同位体と同素体


(4) 原子量

  原子量は、各元素の質量の大小関係を数値で表したものである。
原子は、非常に小さいため原子1個の質量をグラム単位で表すと非常に小さい値になって扱い難い。
例えば、水素原子1個の質量は、1.67×10−24g、酸素原子1個の質量は2.66×10−23gである。
そのため、原子量は、質量数12の炭素原子1個の質量を12とし、これを基準として他の元素の原子1個の相対的な質量を比の関係で表し数値化したものである。
※ 原子量は、問題文で与えられるのですべて覚える必要はない。
  ただ、水素(1)と炭素(12)と酸素(16)は覚えることをお勧めします。


原子量


(5) 分子量

  分子の質量の大小関係を数値で表したものが分子量である。
分子量は、分子を構成する原子量の総和である。


(6) 式量

  ナトリウムイオン、塩化ナトリウムなどのように分子を持たないものの大小関係を数値で表したものが式量である。
式量は、その成分を構成している原子量の総和である。



物質量(1mol)

(1) 物質量

  質量数12の炭素原子12g中に含まれる炭素原子の数は、6.02×1023でこれをアボガドロ数という。このアボガドロ数個持つ粒子の集合を1molという単位で表し、そのmol単位で表した物質の量を物質量と呼ぶ。
これは、原子や分子は、非常に小さな粒子であり、このような粒子1個1個を数えたり、1個の質量を測ったりすることは困難で煩わしいため、6.02×1023個の粒子の集合体を1molという単位で表すことで簡単な数値として扱うことが出来る。この考えは、12個を1ダースという単位で表すのと似ている。
又、1mol当りの粒子の数は、アボガドロ定数と呼ばれ、その値は6.02×1023/molである。


物質量


(2) モル質量

  1mol当りの質量モル質量と呼ぶ。その単位はg/molが用いられている。
モル質量は、原子であれば原子量にg/molをつけた質量になり、分子からなる物質では、分子量にg/molをつけた質量、組成式で表される物質であれば、式量にg/molをつけた質量となる。


モル質量



物質に関する基礎法則

(1) 質量保存の法則 (ラボアジエ)

  化学変化が生じても、変化の前後で物質の質量の総和は一定に保たれる。

質量保存の法則


(2) 定比例の法則 (プルースト)

  同じ1つの化合物を構成する成分元素の質量の比は、常に一定である。

定比例の法則

例) 1分子の水と2分子の水(各1mol)

H(水素元素)O(酸素元素)
1分子の水 (H2O)1×2=216×1=162+16=18H:O:水=1:8:9
2分子の水 (2H2O)2(1×2)=42(16×1)=324+32=36H:O:水=1:8:9


(3) 倍数比例の法則 (ドルトン)

  2種類の元素から2種類以上の化合物を生じる場合、一方の元素の一定の質量と化合する他方の元素の質量は、それらの化合物の間で簡単な整数の比になる。
例) 一酸化炭素と二酸化炭素(各1mol)

一酸化炭素(CO)二酸化炭素(CO2)比(CO:CO2)
炭素の質量( g)12×1=1212×1=121:1
酸素の質量(g)16×1=1616×2=321:2


(4) 気体反応の法則 (ゲーリュサック)

  反応で消費又生成する気体の体積の比は、同温・同圧で簡単な整数に比となる。

気体反応の法則


(5) アボガドロの法則 (アボガドロ)

  気体の構成単位は、いくつかの原子が結合した分子で、同温・同圧で同体積の気体は、気体の種類に関係なく同じ数の分子を含む。

アボガドロの法則








目次