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コースは、サウザンプトン(英国)→ベルゲン(ノルウェー)→ラーウィック(英国・シェトランド諸島)→トースハウン(デンマーク・フェロー諸島)→アクレイリ(アイスランド)→イーサフィヨルズル(アイスランド)→レイキャビク(アイスランド)→ナノルタリーク(グリーンランド)→セント・ジョンズ(カナダ)→ニューヨーク(米国)。
このコース日程には、この間に、8日間の終日航海日があり、クルーズ日程としては18日間のクルーズである。 クルーズ船名は Caribbean Princess カリビアン・プリンセス、カーニバル社の船である。(最近、カーニバル社がプリンセス社を買収統合。その結果、この船はカーニバル社の船ということになった。) 総トン数11万トンを超える、いわゆる大型客船。 いつものように、私達は、ツレアイとの2人参加である。
揺れの少ない客室を確保するために今回も船は個人手配、船の手配の手続きはPTSクルーズデスクに依頼した。
航空機は関西空港からロンドンまでは大韓航空、帰りの ニューヨークから関西空港までは中華航空を利用した。往きはロンドンまで、復りはニューヨークからでは航空券の往復割引が利かないので、割高な片道航空券の少しでも安いものをインターネットで探して、往きと復りの航空機が別会社になったわけである。座席はエコノミー利用である。
ロンドン London
8月26日夕刻、ロンドン・ヒースロー空港に到着。
ここで、航空機利用に関して、私達には予想外のことがあったので、参考のために説明しましょう。良い意味での”予想外”でした。
最近、Web等でも American Express Gold Card の宣伝を目にすることが多いのではないかと思うが、そのカードの一種に「デルタ スカイマイル アメリカン・エキスプレス・ゴールド・カード」がある。American Express とデルタ航空が提携してサービスするゴールドカードである。
デルタ航空などスカイチーム加盟の航空機を利用することが多い私達、利用価値もあるかも、と入会を申し込んだ。会費年27000円。 2人も入会する必要はないので、ツレアイの名義で1人だけ入会。
そのカードの特典の1つとして、ツレアイのデルタ・マイレージカードが「ゴールドメダリオン」にグレードアップされた。スカイチーム航空機利用でのマイル獲得数が増えるし、航空券がエコノミーでもVIPラウンジが利用できるはずだ。
関西空港でのチャックイン時に私達の機内預け荷物に「プライオリティ」のタグが付けられたのを見て、そんな特典も付いていたのを思い出した。この機内預け荷物のVIP扱いは実に有難い。人間がVIPラウンジなど使えなくても旅行そのものに何の影響もないが、機内預け荷物が人間と一緒に無事に着くか着かないかは、旅行そのものに大きく影響する。
もう一つの予想外。ロンドン到着前にスチュワーデスが私達の席にやって来て「ご利用下さい」とクーポンを差し出した。クーポンには「入国審査でFast Track が利用できる、Fast Trackレーンへ進め」と書いてある。同行者ということで私の分もある。
ヒースロー空港に到着して arrival(到着) のルートを進み「Fast Track」のマークがあったのでそちらに進むとFast Trackレーンがあった。Fast Trackのレーンには数人が並んでいる。こちらは入国審査の優先レーンということらしい。Fast Trackレーンの横には通常の入国チェックインの列があり…まさに長蛇の列。ロンドン(最近は、ロンドンだけではないらしい)での入国審査は非常に厳しく、時間がかかるそうだ。
私達はFast Trackのレーンに並び、簡単な質問だけで baggage claim へ行けた。 こんなサービスも、やはり有難い。
ロンドン 8月27日
クルーズ船への乗船は明日8月28日なので、今日1日、ロンドン市内観光ができる。
ツレアイはロンドン経験があるが、私はロンドンは初めてである。初めてのロンドンなので見たいものはいろいろあるが、1日しかないので観光できる場所は限られている。だからこの際、いわゆる市内観光は諦めて、博物館・美術館行きに徹することにした。
先ずは、大英博物館 British Museum、ここだけでも1日でも済みそうにないが、折角のロンドン初体験である。博物館だけでなく、美術館も一っくらいは見てみたい。で、ナショナル・ギャラリー National Gallery へも行きたい。
大英博物館の場合は、私達のように、短い時間をフルに使って大英博物館を楽しむために、いくつかの作品を挙げた「これだけは見よう」式のガイド本がいくつかあったので、そのコピーを持参した。そのガイド本の案内通りに見るつもりだったが、しかし入館してみると、眼を見張るようなものがずらりと並び、どうしても立ち止まってじっくり見てしまう。
中でも、アッシリアのアッシュール・バニパル王のライオン狩のレリーフの前では、彫りの線の見事さに見惚れて、じっくりと見た。矢を何本も射こまれたライオンの姿が殊に素晴らしい。
後は、ほとんどの展示室を駆け足で回り、館内のカフェで遅い昼食をとって、ナショナル・ギャラリーに急いだ。
← 大英博物館 は
人でいっぱい
↓ ナショナル・ギャラリーも
ナショナル・ギャラリーもほとんど駆け足で見て回った。
展示は時代別等ではなく、作品をこの館に寄贈した収集家別になっているようだ。
どこの部屋だったか、ライオン狩りの絵画があった。ルーベンスの作品である。
先に見た大英博物館のライオンはどれも、矢を何本も射こまれて横たわる姿だったが、こちらは、ライオンが御者の背中に飛び乗って御者に喰いついている画。小さな絵だが、先ほど見た大英博物館のライオン狩のレリーフを直ぐに思い出した。
まるで、同じ場面を、ルーベンスが、「実際にはこんな筈はない。死んで横たわるライオンに混じって、累々と横たわる人間の死体もあった筈だ。自分であれば、こう描くね」と言って描いたもののようにさえ思える。どちらも、勇壮な作品だ。
大英博物館のものは、人間様は絶対強いのだ!感が溢れているが、
(歴史物語風にいえば、王の権力の強大さを見せるために、王が彫刻師にこのように描かせた、と説明されるようです。それにしても、彫刻師の腕も素晴らしい。)
ルーベンスのものは、いかにも現実にありそうな、人間と動物の関係だ。近代的というべきか。 いずれにせよ、どちらも、見ごたえがある。
しかし、1日で2つの博物館・美術館を見るのはきつい。いつか、それぞれをせめて丸1日かけて見てみたい。
8月28日 クルーズ1日目 出港
今日は先ず、クルーズ船の乗船地サウザンプトンまでバスで行く。
National Express の高速・長距離バスを、日本からインターネットで予約しておいた。ロンドンからサウザンプトンまでほぼ2時間で行く。サウザンプトンのバス停留所は鉄道のサウザンプトン駅前なので、バス停から埠頭まではタクシーで。
午前11時前には乗船のチェックイン、パスポートやクレジット・カードのチェックを受け、クルーズ・カードをもらう。クルーズ・カードは、キャビン(客室)の出入りのキーでもあるし、船内でのキャッシュ・カードでもあり、そして何よりも、船内でのIDカードである。30分ほど待合いスペースで待ち、乗船。
キャビンに手荷物を置いて、直ぐに、昼食をとるために15階のブッフェ・ホライゾンコートへ行く。海側(窓側)の席はまだ少し空いているが、予想以上に混雑している。この時間にすでに乗船しているのは、ツアー客ではなく個人旅行客ばかりの筈だが、それにしても多い。
この船、今回は満室だそうである。客数3000人以上、うち日本人が約100人だとか。日本人100人の内、ツアー客90人、個人客10人。今回は日本人の参加が多いのも目立つという。日本人コーディネーターも参加。心強い。
夕刻に出港。これからノルウェーのベルゲンに向かうが、間に1日の終日航海日がある。
8月29日 クルーズ2日目 終日航海
終日航海。海が見えるだけ。
暇だから、ぼんやりと考えた。大英博物館の館内の様子などを思い出す。
大英博物館に入館して直ぐにあるロゼッタ石の次に目に付いた像は、ラムゼス2世像だった。見事な彫りの、美しい胸像だ。
思い出してみると、しかし、妙な気がしてきた。そのあまりに美しいラムゼス2世の風貌が。
ラムゼス2世像は、彼の本拠地エジプトにはうんざりするほど沢山ある。しかし、そのどれもが堂々としている。堂々とした位置に、堂々とした姿で立っている。いかにも、最高権力者であることを見せつけるように。
大英博物館のこのラムゼス2世像は…そうではない。立って(置かれて)いる場所は、周りに雑多な(失礼!)小さな像がごろごろと(これも、失礼!)置かれていて、決して、彼が最高権力者であることを見せつけるような堂々とした場所ではない。エジプトの歴史上最高のファラオであるラムゼス2世の威厳などとても感じられない。言い過ぎかも知れないが、それはまるで、その場のその他大勢の展示物を代表する、可愛い人形のようにさえ見える、その胸像が非常に美しいだけに。
そうなのだ。ここ大英博物館は物が多すぎるのだ。狭い場所に多くのものを置き過ぎなのだ。ここの様子はまるで物置のようだ。
大英博物館の展示物を、まともにそれらしく展示しようとすれば、大英博物館の今のスペースの10倍でも足りないだろう。ここは狭すぎる。
ベルリンのペルガモン博物館を思い出す。
見学者を数千年前のその場所にいるかのように錯覚させるような、臨場感のある、広々とした展示。贅沢に広いスペースをとったその場所。国力があった時代にドイツが獲得した”ドイツの誇り”を、今、精一杯の努力を払って展示しているのだ。その心意気も素晴らしい。
大英博物館は”大英帝国の威信”といわれるそうだが、今、国としてのイギリスを”大英帝国”という表現で考える人は少ないだろう。
嘗て”大英帝国”は、多くの物を獲得し過ぎたようだが、現在のドイツがペルガモン博物館に使っているような贅沢を、今のイギリスには、精一杯の努力を払ってもそんな余裕はないようだ。
で、ふと考えた。
ペルガモン博物館にはアッシリア時代の遺物等の展示コーナーがあったが、そこは「オリジナルは大英博物館にある」という解説文が付いていた。そうであれば、大英博物館のオリジナルそのものをあのペルガモン博物館に展示すればどうですか? アッシリアのアッシュール・バニパル王のライオン狩のレリーフなんかをここに展示すればすごいことになりますよ。 いやいや、そんなことをすれば、ここもスペースが足りなくなってしまう。いっそ、ヨーロッパのどこかに広大なスペースを確保して、「嘗てヨーロッパの大国が”獲得”した人類の遺産を展示する大博物館(名前はどうでもいい)」として、大英博物館・ペルガモン博物館etc.etc.の展示物を全部ここに移動して一堂に展示すれば素晴らしいじゃないですか。それら展示物がもともとあった場所は今は政治的に物騒なので、この場所で保存・維持するのだ、とか何とか説明をつけて。
これは決して夢ではない。EU(ヨーロッパ連合)を考えてみて下さい。現状はどうであれ、もともとの目的は、ヨーロッパ各国が連合して、これまでヨーロッパ内部で戦争をして互いに破壊・傷つけ合った歴史にサヨナラしようではないか、だそうです。素晴らしい! 今から30年、40年前に、こんなこと考えられましたか? ま、考えてた人がいたから EU ができたのでしょうが、我々一般の凡人には想像することもできなかった。それが…今、できているのです。国家の枠を超えた「人類の遺産を展示する大博物館」なんかありえない、などと言えますか?
ベルゲンに近づくと、ノルウェー沿岸の美しい景観が見えてくる。
午前10時前にはベルゲンに到着。
ベルゲンに到着して間もなく「重要なお知らせ(Important Information)」 という船内放送が流れた。どうやら、天候が悪いために、予定の寄港地に寄るのを止めて、ここベルゲンに明日も滞在するらしい。しばらくすると、キャビンのドア・ポストに英文の説明文が配られた。
「グリーンランドで低気圧が発生し、明日、それがアイスランド上空に達する見込みである。海は相当荒れる見通し。従って、明日の予定寄港地ラーウィック、明後日の予定寄港地トースハウンの寄港予定を取消し、明日もここベルゲンに滞在、明後日にアイスランドのアクレイリへ向けて出港、アクレイリには2日間の終日航海を経て到着をする予定である。我々(船)は乗客の安全を第一に考えている。」
内容は理解したが、暗雲が垂れ込めたようで、気持ちは落ち込む。殊にラーウィックはツレアイが楽しみにしていたところだ。実に、実に残念。 ”北大西洋”のもつ暗いイメージをチラチラと感じる。いやな予感。
ここで2日間滞在になったのでゆっくり時間がある。ベルゲンは沿岸急行船の旅をした時に歩いてまわったので今更観光する必要はないが、あれから5年経っている。お土産の買い物がてら街へ出てみた。街の中心部まで、船から無料のシャトルバスが出ている。船主催のオプショナル・ツアー(船では ショア・エクスカーション という) がここベルゲンでもいくつかあるが、私達はどれにも参加しなかった。
街のほぼ中心、魚市場へ行ってみたが、そこで驚いた。
奇妙なバスが走っている。観光用のバスなのだが、椅子の部分より上は無蓋の、いわゆるトロッコ様の車両が数台連結され、その先頭でそれらトロッコ様車両を引いているのは、オモチャの機関車を模した車なのである。遊園地じゃあるまいし、と思ったが、それが実際に客を乗せて街なかをゆうゆうと走っている。
魚市場それ自体はテントが増えたかな、と思った程度だが、周りの建物を見てまた驚いた。
右の写真は魚市場を背にして湾の方を向いて撮ったものだが、写真にある建物はホテル等々で、世界遺産ブリッゲンはこの対岸になる(従って、ブリッゲンはこの写真には写っていない)。
写真のほぼ真ん中にある、黒っぽい倉庫様の長い建物だが、あれは倉庫ではない。ベルゲンの Information つまり観光案内所なのである。5年前にはあんな不恰好なものはなかった。
不恰好と思うかどうかはその人の主観の問題だろうが、ブリッゲンや魚市場、そして停泊するヨットの数々etc.etc.この界隈はそれなりの景観をなしている場所なのだ。そこに、黒っぽい倉庫様のものがヌッとあるなど、私は、不恰好だと思う。ベルゲン市の観光案内所であるのならば、それらしい建物・それらしい場所がありそうな気がするのだが。
写真の左端の建物は5年前に私達が宿泊したホテルだが、ホテルの名前が変わっていた。また、建物自体も小奇麗になっているようだ。「立地最高なので買収されたんだ、宿泊料金が高くなってるよ、きっと」とツレアイが言ったが、そうだろうなと思う。
観光地ベルゲンの変貌には少しばかりショックを受けた。それにしても、観光客の増加は世界的な現象のようだが、世界は全体的に、そんなに豊かになったのかな等と考えた。
天気はあまり良くない。翌日のベルゲン2日目は雨模様だった。
海が見えるばかり。島影もない。
気象の悪いところを航行しているのだろう、船の揺れを感じる。酔い止め薬などを服用し、あまり船内で動きまわらないようにする。
気温がぐんぐん低くなっていくのを感じる。北極圏に近づいてゆくので当然だ。毛糸のカーディガン等着込んで風邪を引かないように気を付ける。
時間たっぷりなので、シアター(劇場)で行われるレクチャーを聞きに行った。英語でのレクチャーだが、英語の勉強も兼ねて。スライドなどの映像もあるだろうし。
今日のレクチャーは「オーロラの仕組み」。このクルーズのこれからの航路がオーロラ地帯といかに合致しているか、今年がいかに多くのオーロラ出現が期待できる年であるか、等々、オーロラへの期待をいやが上にも高めるレクチャー内容。ただし、締めのコトバは「No Cloud (雲が無い)が条件です」。そうでしょう、それが絶対条件だ。このクルーズのこれからの航路の気象予報がいかに芳しくないことか。心配ですねえ。
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