eoさんの旅ノート
 北大西洋横断クルーズ   2013年夏
   
出港〜ベルゲンアイスランドNo.1 こ こ ナノルタリーク・セント・ジョンズ
9月4日 クルーズ8日目 イーサフィヨルズル Isafjordur

イーサフィヨルズル
 

 朝7時頃、イーサフィヨルズルに到着。

 アクレイリと比べれば家の数が少ないが、街の背後の雪山はアクレイリよりも多いようだ。
 山の雪に陽が当たってやけに晴れやかで、まだ陰になっている街並との対比が鮮やか。

 私達はここイーサフィヨルズルではオプショナル・ツアーの予定はない、と言うか、予約を失敗した結果(単なる うっかり?)、オプショナル・ツアーの予定はない、ということになった。

イーサフィヨルズル  

 街なかを歩いてみた。

 ここらあたりの港はどこもフィヨルドの奥にあるので波はほとんどないが、特に今日は天気も穏やか。水面は鏡のようだ。

 港に停泊する船はヨット等の”遊び”の船ではなく、みな漁船なのだが、どの船も、水面に映えて美しく見える。
 数分歩くだけで、雪山と港との美しい景観に出会える。
 雪山と水面との美しいハーモニーが、展望写真(下の3枚のうちの真ん中、2枚目)だけでは分かりにくいので、左右半分づつの写真も配してみました。
イーサフィヨルズル
イーサフィヨルズル
イーサフィヨルズル

 この景観をほぼ正面に眺めるところ、つまり、この写真を撮っているこちら側は車道なのだが、その背後が高台になっており、そこに住宅街がある。私達は、車道から高台に上がり、住宅街を歩いた。瀟洒な住宅が続いている。住宅街を歩いていた時、 Good Morning !  という大きな声に振り向くと、若い郵便配達のオニイサンだった。穏やかな気持ちのいい街。平穏で平和。生活の苦労というものを感じさせない。少なくとも、経済的に安定した暮らしの人々が住む街だとはっきり感じられる。
 アクレイリの街を歩いた時も同じことを考えたのだが、アイスランドは数年前の経済破綻から立ち直ったとは聞いていたが、その痕跡すら見えないのはどういうことだろう?  いわゆる”貧しい生活をする人々”がいない(見えない)。海辺も歩いてみると漁村らしい雰囲気もあったが、感じることは変わらない。わが国日本でも問題になっている”格差”が、この国では、少なくとも、私達の眼には見えない。ここイーサフィヨルズルは”田舎”なので…というなら、アクレイリは? アクレイリはアイスランド第2の都市である。決して”田舎”ではない。
 国の経済のあり方? が日本などとは違うのだろうか。

 アクレイリもそうだったが、ここイーサフィヨルズルでも、観光客向けの店舗は港附近に数軒あるだけ。ここの住民達は観光客とは別世界に住んでいるという感じ。街を挙げて観光客歓迎などという雰囲気は全く感じられない。観光に依存する街ではないのだ。

イーサフィヨルズル

 

 写真右側の住宅地が、高台の住宅街である、と思う。

 夕刻6時頃、次の寄港地レイキャビクへ向け、イーサフィヨルズルを出港。

イーサフィヨルズル  外海に出ても、連なる岸壁の頂きが、なめられたように高さが揃っている。
 氷河時代、巨大な氷河がここら当たり全体を覆い尽くしていたのだろう。どんなに大きな氷河だったのだろう?

 この夜、最上階の外デッキは、空を見上げる人、人で埋まった。
 昨夜のオーロラの出現を聞いた人々が大挙して最上階の外デッキに押しかけたのだ。皆、空を見上げるのに良い場所を確保するのにウロウロしている。にわか?プロカメラマンがカメラの三脚の脚を広げて置く場所にも苦労する有様。寒いので防寒着等を着こんで、ほとんどの人がじっと立ったまま空を見上げている。
 なんとなく驚くのは、大半の人が厚着なのに、半袖姿の人が数人いることだ。上着だけでなく下も短パン姿。これは今に限らずクルーズ中を通して見られたことなのだが、今夜、最上階の外デッキで皆が空を見上げている時も、厚着の人々に混じって半袖・短パンの人もその姿で空を見上げていた。欧米人は日本人とは皮膚感覚が違うとはよく聞くが……寒くないのかな。

 ところでオーロラは? 自然は無情。これだけの大勢の人々の熱い期待に応えようとはしなかった。空には星も少しは見えているというのに、オーロラは見えない。
 寒い夜に外デッキで3時間もじっと立っていて何も起こらなければ、諦めもつく。 夜も更けると、外デッキの人もまばらになってきた。

イーサフィヨルズル  実は、私は気になっていたのだ。
 空高く、ではない。低いところ。暗い海の、遠くの水平線のあたりに、小さいが、ぼ〜っとした淡い光があった。念のため、カメラに撮った。確認すると確かにオーロラだ。(点は、星だと思います)
 しかし、見える光はこれだけだった。
9月5日 クルーズ9日目 レイキャビク Reykjavik

 レイキャビクには、ずいぶん前に旅行社のパックツアーで来たことがある。  ここは見どころの多いところだが、だから、私達はオプショナル・ツアーには申し込まなかった。

 船は街近くの埠頭に停泊。埠頭から出ているシャトルバスで街の中心部に出てみた。
 バスを降りたすぐ目の前に大きなガラス張りのビルがあった。美しいビルだなと思って見上げていると、そのビルはアイスランドのバブル絶頂期に工事が始まり、工事中に例の経済破綻に襲われて工事が中止してしまったそうだ。それでも、今はガラス張りの美しいビルとして目を引くのは、その後、なんとか工事を再開して今の姿になったのだろう。

チョルトニン湖 ハットルグリムス教会
 レイキャビクの街なかにある チョルトニン湖をゆっくり眺め、商店街を歩き、そして、ハットルグリムス教会に入ってみた。
 ハットルグリムス教会はアイスランドでも最も高い建物ということで、レイキャビク市内でもよく目立つ大きな建物である。入ってみたのは私達も初めて。プロテスタント系教会で、シンプルな内装とステンレスの巨大なパイプオルガンが目を引く。

 街を歩き始めてから随分時間が経つし、「トイレはないですか?」と教会のスタッフに尋ねたら「外に出て、アア行ってコオ行ったら small house (small houseを強調して言われた気がした)がある、それがトイレです」という返事。公衆便所だな。言われた通りに行ったが、small house らしき建物は見当たらない。その代わり、日本の公衆電話ボックスくらいの大きさのボックスがある。私達が、これ?という感じで見ていると、通りかかった若い女性が「それはトイレ」と教えてくれた。
 ヨーロッパのほとんどの公衆便所はチップ、つまり、なにがしかの料金が要る、すなわち、有料である。公衆便所といえど、お金を全く持っていない時にはとても入れたものではない。   その「トイレ」のボックスには、何やら説明文が書いてあるが、料金らしい表記はない。その若い女性が私達を見ていたので「 How Much ? 」と訊くと「 Free(タダ)」と言って笑った。そうなのか。
 入って、用を済ませ、出てきて…そして感心した。実に合理的にできているトイレだ。私も、これを読んでいる貴方も(多分)トイレ研究家ではないだろうから、ここで詳しい説明はしないが、実に合理的で素晴らしい公衆便所である。これまでいろいろな国で、公衆便所を何度も使用してきたが、洋の東西を問わず、これほど質の高い公衆便所は初めてだ。
 公衆便所のことなぞをわざわざ書くのか、と思われるかも知れない。公衆便所なぞ、通常、まともにテーマにされるようなものではない。しかし、私は気になった。ここの公衆便所の質の高さは、何を意味するのか。
 目立たないものの整備に配慮するということは、決して、どこの国でも当たり前に行われているわけではない。アイスランドという国、または国民は、精神的に非常に健康的なものを持っているのではないかと、なんとなく考えた。

 夕刻6時頃、レイキャビクを出港。向かう先はグリーンランドのナノルタリーク。そこに着くまでに2日間の終日航海がある。
 アイスランドともこれでお別れ。グリーンランドはデンマーク領である。

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