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北大西洋横断クルーズ
2013年夏
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ただ、海が見えるだけ。
終日航海も2日目。午後、グリーンランドに近づいてくると、最上階外デッキにいる人から「氷山が見える!」の声が聞こえ始めた。
グリーンランドといえば、言わずと知れた、氷の島を想像する。私達も氷山がゴロゴロしている場所をなんとなく想像していたが、私達が行くナノルタリークはグリーンランドの南端といっていい場所。グリーンランドは広い。グリーンランドの北部はどうだか分からないが、最近の地球温暖化のご時世、氷山ゴロゴロの時代ではないようだ。それでも、少しは流れてくる。
デッキから見えた氷山の写真をスライドショーにしてみました。 スライドショー (写真9枚)
どれも、広い海に、それだけポツンと流れていたものです。氷山ゴロゴロなんて、いくつもが群れて流れてくるということはありませんでした。 この大きさは氷山ではなくて流氷じゃないか、と思うかも知れませんが、大きさはまぎれもなく氷山。 どれも船のすぐ近くを流れていたわけではなく、かなり遠い場所の氷山を望遠レンズで撮ったのもあります。 大きさは、小さいものでも2〜3メートル、大きなものは数十メートルはあるかと思われます。 流氷といわれる比較的小さな氷は、多分、ここらあたりに流れてくるまでに海水に溶けてしまっているのはないかと思う。 |
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9月8日 クルーズ12日目 ナノルタリーク Nanortalik
ナノルタリークに近づくと、さすがに”グリーンランド”の雰囲気は出てくる。
朝8時頃、ナノルタリークに到着
どんよりとした天気。今にも雨が降りそう。
ここに大きな港は無いので、テンダーボートでナノルタリークに上陸した。
そこそこに緑もあり、散らばってある住宅もなかなか瀟洒。これだけだとこれまで見たアイスランドの街とそれほど変わりはないが、住民の顔貌を見ると、ここはいわゆる文明の地とは少し離れているのだということがなんとなく分かる。
案内所やこの地域の展示物等を並べた”博物館”等はあったが、案内所に小さな売店があった以外は土産物屋が全く無い。これは、観光客を迎える街としては非常に珍しい。
しかし、住民は私達観光客に非常に愛想が良い。すれ違っただけで「 サンキュー ! グッバイ ! 」と言って、にこやかに挨拶する。
横道に入って歩いてみると、ひなびた浜辺に打ち捨てられたような船があった。精々10人乗りほどの小さな船だが、嘗ては遊覧船として客を乗せたのだろう、船腹に「 Nanortalik ナントカ(忘れた、とにかく、遊覧船であることを示す語だった)」の文字が見えた。
ある時代、海に浮かぶ沢山の氷山の間を縫うようにしてこの遊覧船で客を案内したのではないだろうか。今は使われなくなった遊覧船。嘗ては氷山と雪に囲まれていたナノルタリークは、地球温暖化の影響をまともに受けているに違いない。
祝い事があると客を招いて茶とケーキを提供するという、この地域の伝統行事がスポーツセンター(体育館)で行われると聞いたので行ってみた。入ってみるとすごい熱気で、訪れた客で超満員。茶とケーキを貰う(勿論無料)のに長蛇の列。
女性の住民数人が、並んだ客に、紅茶やコーヒーそしてパウンドケーキ1切れをテキパキと、にこやかな表情で渡していく。パウンドケーキは、見た目は素朴だが、美味。
ほぼ中央にステージが組まれ、住民数人が踊りやコーラスなどを聴かせてくれる。 私達客に精一杯のサービスを提供しているのだということが、よく分かる。
上の写真で、写っていない手前(写真の下になる)は詰めかけた客(船の乗客)でぎっしりなのである。3000人を超える船の乗客のうち数百人は今ここにいるのではないかと思えるほどだ。 このスポーツセンター(体育館)はその人数でもゆっくり入れるほど大きい。
この建物の造りの立派さにも驚く。天井・梁(横木)は舟の形を模して、木製だが、写真の右側の壁面にかかる梁の見事さ(写真に写っていないだけで、左側の壁面も同じ)。この写真ではよく分からないかも知れないが、その梁は、何枚か重ねられた木板が、美しい曲線を描いて曲げられている。
テンダーボート乗り場の近くに役所の小さな建物があり、その入口のボードに船名のリストが掲載されていた。「〇月△日×時 ABC号(船名)」というように、日付順にずらりと船名が並んでいて、私達も知っている船名が多くある。勿論、今日の日付には私達の船カリビアン・プリンセス号入港が書いてある。なるほどね。ここナノルタリークが観光船の入港に期待しているのがよく分かる。
おそらく、入港する観光船は”入港料”を支払っているのだろう。それも、この街の人々が大変愛想良くなるほどの額を。
考えてみれば、ここのような希少な観光地を守るためにこのようなことが行われているのも、なんとなく理解できる。
天候は相変わらずで、時々雨も降る。そして、寒い。
本船へ戻るテンダーボート乗り場も、みな私達の船の乗客ばかりだが、長蛇の列。霧も出てきて、海の向うに浮かぶ本船が霧の中に霞んで見える。私達は早くテンダーボートに乗れたが、船に戻っても、霧は深くなるばかり。 そのうち、あたり一面霧に包まれ、船はすっぽり霧に包まれたようで、まわりの海も見えない感じだが、陸からも海に浮かぶ本船は見えなくなったそうだ。こうなるとテンダーボートは動かない。私達よりも少し遅く乗り場に並んだ人々は、寒さに震えながら、霧が晴れるのをじっと待ったそうだ。
午後6時頃、ナノルタリークを出港。2日間の終日航海を経て、カナダのセント・ジョンズへ向かう。
9月9・10日 クルーズ13・14日目 終日航海
相変わらず、見えるのは海ばかり。
天気も悪く、海も荒れて、波は高い。が、この大型船はあまり揺れない、さすが。
高い波が白い泡をふき、湯気のようなモヤを立てている。そのモヤが時々、虹色に美しく輝く。
9月11日 クルーズ15日目 セント・ジョンズ St. John's
セント・ジョンズを目の前にして、船はかなり速度を落とし、ゆっくりと進んだ。セント・ジョンズ港は湾の中にあり、その湾の入口が狭いのだ。船は陸地にかなり接近して進んだ。
朝8時頃、セント・ジョンズに到着。
天気はどんより、今にも雨が降りそう。
セント・ジョンズはカナダのニューファンドランド島の東端にあり、晴天の日が世界一少ない都市だとか、世界一霧の深い街としてギネス認定されているとか、あまり明るいイメージの無い都市である。港が湾の奥にあり、その湾の入口が狭い…そして、霧が深い、となれば、外海からの船は入りにくい、近づきにくい…なんとなく、妙に”孤独”を感じさせる都市でもある。
ここでは私達は午後からのオプショナル・ツアーに申し込んであるので、午前中は街なかを歩いてみた。
カラフルな色彩の家並み、そして、道路の壁の人物像は、見て分かる通り、絵である。
郵便局のポストの色が派手!
この街は意識的に明るいものを求めているのかも知れない。
参加したオプショナル・ツアーは「スペア岬、セント・ジョンズとシグナル・ヒル」昼12時半から午後4時半まで。
スペア岬は灯台で有名で、ニューファンドランド島の東端にあり、カナダの最東端の灯台であるそうな。 岬の端の断崖にある灯台よりも、周りにある荒れた草原の方が目についた。
その後に案内されたのは、ペティー・ハーバー Petty Harbour という漁村。今朝の収穫である魚(ほとんどオヒョウ)をさばいている小屋等を覗かせてくれた。どうということもない普通の漁村だと思うが、なんとなく可愛い漁村、という印象をもつのは何故だろう。先の、魚を処理している小屋等でも、観光客が来ることを予想している感じ。Whale Watching の看板もある。ここも観光地なのだろう。
この後はシグナル・ヒルへ。私達を乗せたバスはセント・ジョンズの街なかを抜けて高台へぐんぐん上がって行った。シグナル・ヒルはセント・ジョンズ市街を一望できる展望地なのである。
シグナル・ヒルの地名の由来は、嘗て、入港する船に合図を送る場所だったとか。頂上にあるのはカボット・タワーといわれる、1897年建造という、砦様の古い建物。なかなか趣がある。
よく見てみると、タワーの上にはためく旗のうち、最上部で目立っている青い旗は、あれれ! プリンセス・クルーズ社の旗である。
カリビアン・プリンセス号が入港したのを確認するとすぐにセント・ジョンズ市がプリンセス・クルーズ社の旗をこのタワーに掲げたのだろう。セント・ジョンズ市がクルーズ船の入港を非常に期待しているのがよく分かる。
この後、簡単な市内観光をして船へ戻った。
午後5時頃、セント・ジョンズを出港。このクルーズの寄港地はこのセント・ジョンズが最後。2日間の終日航海を経て、あとは下船するだけのニューヨークへ。
船は港を出て、狭い水路をゆっくりと進んだ。
シグナル・ヒルにいる大勢の人々が皆こちらを見て手を振って送ってくれた。船のバルコニーからも沢山の手が振られてそれに応えた。
9月12・13日 クルーズ16・17日目 終日航海
相変わらず、海が見えるだけ。
船が南下するにつれ、気温が少しづつ高くなっていくのが分かる。 今は夏なのだ!
日本人コーディネーターとの雑談で「今回のクルーズ、天気がもひとつでしたね」というと「とんでもない! 今回はとても良かった」と彼女は言った。「アイスランドの3日間がずっと天気だったなんて奇跡! オーロラも見えたんですよ! グリーンランドもセント・ジョンズもそこそこ観光できたし、今回のクルーズは本当にラッキーでした!」と。
9月14日 クルーズ18日目 ニューヨーク New York
早朝、自由の女神と シルエットの摩天楼が私達を迎えてくれた。
午前7時頃、ニューヨーク着。
今回もいい旅でした。
北大西洋横断クルーズ
2013年夏
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