着物の制作過程

 振袖「月光」の制作過程をご紹介します。この作品はお客様のご要望で月下美人をモチーフにして 2014年8月~11月にかけて制作し 第44回日本伝統工芸近畿展に出品しました。

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1. お客様のご要望に沿い、月光に映える月下美人を黒地に表現しました。厳密に縮小した図案。

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2. 仮仕立てをした白生地に青花で図案を基に下絵を描きます。

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3. 生地白のままで残したい部分を糯糊で妨染します。糯粉に糠と塩をまぜて蒸した糯糊を筒で置き、おがくずをまぶしてよく乾燥させます。

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4. 生地に水を引き、蒔糊を施します。蒔糊は糯糊に亜鉛末を練りこみ、よく乾燥させ粉状に砕いた糊で細かい点描が表現できます。

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5. 防染糊や蒔糊が完全に乾くと布糊や大豆の汁を引いて糊を定着させます。染料で色を合わせ下色の紫を染め、蒸しをして糊を洗い流します。

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6. 防染糊が洗い流され、花と蒔糊が白抜きされます。

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7. 再度、月下美人の花を糊伏せします。

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8. 紫色の上から水を引き、再度蒔糊を施します。

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9. 植物染料の三度黒で染め、糊を全て洗い流します。

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10. 挿し友禅をします。大きな花を胡粉で丁寧にぼかします。ここで着物の表情が決まります。

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11. 蒸しをし、糸目を洗い流し、湯のしをした生地に金箔、銀箔を貼ります。

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12. 細部にわったて、仕上げの作業をします。

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13. 仮仕立てをして完成した「月光」

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14. 「月光」部分

近年は振袖を創る機会がほとんどなくなり、娘達に創って近畿展に出品して以来十数年ぶりの制作になりました。とても緊張し、時間もかかりましたが この様な機会に恵まれた事を感謝します。又、伝統工芸近畿展に入選しお客様にも記念になり大変喜んでいただくことができました。

    

訪問着「耀春」の制作過程をご紹介します。この作品はれんぎょうをモチーフにして2012年6月から7月にかけて制作しました。

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1. スケッチブックより。早春にさわやかな黄色い花を咲かせます。着物をイメージしながらスケッチをします。

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2. 着物の寸法を厳密に縮小した方眼紙に細部にいたるまで図案を描きます

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3. 仮仕立てをした白生地に露草の花の汁をしみこませた青花で図案を元に下絵を描きます。

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4. 青花の下絵に沿ってゴム糊で糸目糊置きをします。この作業は駒井達夫氏に依頼しました。糸目糊置きの後水洗いすると青花は消えます。

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5. 生地白のままで残したい部分を糯糊で妨染します。糯粉に糠と塩をまぜて蒸した糯糊を筒で置き、おがくずをまぶしてよく乾燥させます。

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6. 生地に水を引き、蒔糊を施します。蒔糊は糯糊に亜鉛末を練りこみ、よく乾燥させ粉状に砕いた糊で、細かい点描が表現できます。

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7. 防染糊や蒔糊が完全に乾くと布糊や大豆の汁を引いて糊を定着させます。染料で色を合わせ地色の黄色を染め、蒸しをして糊を洗い流します。 地色の上からもう一度花や軸などを残して全て糊で伏せます。これを堰出しといいます。

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8. 糊が乾くと、真水を引いて再度蒔糊をします。蒔糊が均等に撒けるように下から電気を当て確認しながら作業を進めます。白く見える部分に墨色が入ります。

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9. 蒔糊が完全に乾くと布糊、豆汁で地入れをし墨色の濃淡で染めます。再度蒸しをして糊を洗い流します。

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10. 生地白の部分に、顔料の胡粉を染める場所を作るため花と軸を糊で伏せ、糊叩きを施します。

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11. 糊叩きの上から顔料の胡粉を染めます。

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12. 最後の蒸しをし糊を全て洗い流し、ゴム糸目を揮発水洗して取り去ります。湯のしをし生地を元通りの風合いに戻します。仮仕立てをして作品の完成です。

春を待ちわびたように花を咲かせるれんぎょうに出会った時は空気まで黄色く感じます。その印象を黄色い地の色で表現し、 花はあえて墨色で染めました。地色の上から墨色が重なる事でやわらかさがでるように工夫しました。