HR少年(平成のラジオ少年)が本当に少年だった頃は、「手回し計算機」や「計算尺」を使っての計算が主であった。従って、桁数が多かったりrootの入った数式の計算は誰もが嫌がり、専ら計算図表を使ったラフな計算で済ませていたものだ。幸か不幸か、ラジオの回路部品はバラツキが結構あったので、それでも十分だったが、IT技術のすざましい進歩をとげた今日、その恩恵にあずかるのも悪くはなかろうとEXCELを使って「トラッキングエラー・シュミレーション」を試みた。結構使えそうなので掲載してみる。
1.スーパーヘテロダイン受信機の宿命・・・トラッキングエラー
電波が過密になればなるほど選択度の高い受信機が望まれる。ストレート受信機ではこの選択度に限界があり、今日の受信機は殆どがスーパーヘテロダイン方式となった。しかし、それにもいくつかの欠点がある。その一つがトラッキングエラーの発生だ。
左の図にトラッキングエラー計算に必要な要素を全てを表わした。
入力回路
L1:入力同調コイル Cta:浮遊容量とトリマーの合成 Cm:バリコン
発振回路
L2:発振コイル Cso:浮遊容量 Cpt:パッティングコンデンサー
Cto:トリマーコンデンサー Cm:バリコン スーパーヘテロダイン受信機は、到来電波の周波数と局部発振周波数との差がIF増幅回路の周波数に一致した時に受信ができる。実際の選局行為は局部発振回路のCmを可変して行ない、局部発振周波数は受信周波数よりIF周波数分だけ高くしてある。発振回路に連動して動く入力回路のCmと同調コイルL1の共振周波数が丁度IF周波数
(455khz)分だけの差を持てば理想なのだが、理論的に不可能である。そこで、局部発振回路のバリコンにパッティングコンデンサーCptなるものを直列に接続し(発振周波数の変化幅を少なくする)、局部発振周波数で決まる受信周波数と、入力回路の共振周波数が一致しやすくしているのだ。
2、シュミレーション
入力回路の同調周波数は上に示した記号を使って式で現すと、
Fa=1/2π√L1×(Cta+Cm)
となる。同様に発振回路の同調周波数(発振周波数)は
Fo=1/2π√L2×{Cso+Cpt×(Cm+Cto)/(Cpt+Cm+Cto)}
となる。ここで、コイルの単位をμH,コンデンサーをPfとし、周波数をkhzで現す事にすると1/2πの定数項は
159,155と計算される。
これらの条件でバリコンの容量Cmを最大値から最小値まで変化させた時、受信周波数
(発振周波数からIF周波数を引いた値)と入力回路の共振周波数との差がトラッキングエラーとなる。
計算が面倒なのは昔も今も変わらないのだが、HR少年なら持っているだろうExcelを使えばいとも簡単に算出してくれる。「Excel 2000」(←ここをクリックすると別画面で開きます)に計算式を載せましたので試してみてください。
表の中で太い赤字となっている部分を変更すれば全て計算に反映されます。自作派の皆さんのお役に立てば幸いです。(ついでながら、パッティングコンデンサーは高価のようですが、50pf程度のトリマーと固定コンデンサーの組合せで十分目的にかなう事がシュミレーションすれば判ると思います。)(05/3/10完)
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