昭和33年製・30年製と古いラジオの修復が続いた。ところが今回はさらにそれを上回る29年製のポータブルラジオである。
正直なところ、アチコチに錆が発生し、真空管も1本が残っているだけの危なっかしい品物だったので迷っていた。
東京に単身赴任中のゴルフ仲間に不足の真空管の入手を依頼したところ、簡単に手に入ったとの知らせがある。他に使い道の無い真空管であり、
無駄にするのも惜しくなり修復する事にした。
px−415型ポータブルラジオ
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セットの外観 | 修復前の内部の様子 |
1 分解と清掃
普通ならば軽く埃を吸い取る程度で済むのだが、このセットは錆がアチコチに発生しているので分解せざるを得ない。
マイナス頭のネジも錆で埋まっているから恐々の解体であったが、何とか破損する事無しに分解できた。
50年の年月を経たセットの内部の様子をじっくりご覧戴きたい。
掃除機を回しながらミニターでワイヤーブラシを掛け、ブラシのあたらない所は鑢を使い錆を落とす。
埃・汚れは刷毛を使い部品を破損しないよう注意しながら清掃する。更に錆びを落とした痕はマジックインクを塗り錆び防止をしておいた。
2.回路図のCAD入力
貼付られていた回路図
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裏蓋には回路図が貼り付けられている。回路のチェクの前にCAD入力を済ませておくようにしている。その方が頭に入りやすく、
思い込みの錯誤を防止できるからである。(写真のクリックで別画面が開きます)
このセットは出力管のバイアスの与え方に工夫が見られる。B電源のマイナス側の接続をグリッドバイアス抵抗を分割した箇所に行っており、
思い込み錯誤を犯しやすい回路となっていた。その為もあって、使用部品点数が少なく、電解コンデンサーは1個で済ませている。
3.回路チェック
これくらい古いセットになると、部品の劣化が伴うと考えるべきである。そこで、部品一つ一つをチェックした。その結果、
使われていた全ペーパーコンデンサーの絶縁抵抗劣化が観測された。電解コンデンサーは外観を見るだけで交換の必要性が判る。(上部写真参照)
しかし、他の部品には特に異常は見つけられなかった。あれだけの錆が発生する保管状態であったのに驚きでもある。(後の動作チェックでも部品不良は発生していない)
4.動作チェク
交換した部品
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怪しいと判断した部品を全て交換し、再組み立てして動作チェックに入る。最初にオーディオステージの真空管2本だけを挿入し火を入れる。
ウンともスンとも言わない。それもそのはず、A電源のスイッチが破損していたのだ。B電源のスイッチは健在だったのでこちらをA電源用に使う事にして、B電源はのスイッチはトランジスタを使った回路を新設しまかなう事にした。
これでOKのはずと改めて火を入れる。ところが今度はものすごいハム音が出る。あわてて電源を切る。B電源は何回も使った実績のある安定化電源だから問題ないはず。怪しいのはA電源だ。電池充電用の電源を使ったのだがこれが拙かったのだ。乾電池に置き換えると正常な動作となり一安心する。
次に高周波段の真空管を挿入し最終チェックに入る。バリコンを回すとガサガサ音がするものの受信できた。ところが、音がやたら歪んでいる。厄介な事になったと一瞬思ったが、単純な接続ミスをやっていたのだ。前述の通り3S4の出力管のバイアスはB電源のマイナス側の接続点をグリッドバイアス抵抗の途中に加える事で得ている。頭で理解していても、実際のB電源接続はグランド側にやっていたのだ。電池を使えばこんな間違はないのだが、日本では67.5Vの積層乾電池の生産は大分前に廃止となっている。
ガサガサ音は多分バリコンの羽の間に錆びが紛れ込んだ為であろう。掃除機で改めてゴミ・ホコリ吸い取り、何回か回転を繰り返している内に止まってくれた。
5.最後の仕上げ
B電源のスイッチをトランジスタ回路で作れば修復は完了となるのだが、ふと良からぬ考えが出てきた。何のためのB電源スイッチなの?・・・電解コンにB電圧がかかりぱなしにはなるものの他に負担はかからない筈だ。しかも、B電池は現実には入手不可能である。外部電源に頼るはずだから、そちらでON/OFFすれば良いではないか!。と言うう事でB電源のスイッチ回路の新設は止める事にし、修復完了となったのである。むしろ、専用外部電源の製作が重要になってきたのです。製作状況はは改めて行うことにし、今回の修復作業を完了させたのであります。修復後の内部写真を下に示す。(05/2/6完)