since 04'03/10   平成の隠居

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  知らぬ間に面白いICが出回っていた。単純な物ほど錆びた脳に刺激を与えるには好都合だ。その一つが今回のメインテーマ「可変型シャントレギュレータ」だ。 TO−92に「C1093]のマーキングがあるのでトランジスタと思いこみ遠回りをしたのはつい先ごろだ。お陰ですっかり愛着を覚え色々使い始めた。 その中のいくつかを掲載して見る。・・・お楽しみに!


GEKO-201 車載用外部電源

 GEKO-201は一部のマニアの中で人気の高いハンディーGPSだ。 移動した軌跡をパソコンに取り込み、地図上に表わす事が出来るので中々便利だ。(嫁のHP掲載の例 ←クリック)
 このGPS、単4のNI−MH電池2本で動作するのだが電池の消耗が激しい。動作中は100mA以上の電流が流れ連続使用は10時間が限界のようだ。 そこで「シガーライターから使えるGEKO専用電源」を連休までに製作するよう指令が出た。 どうせ隠居は暇だから時間は十分にあるので問題なしと気楽に息子から出た注文だ。
電源を待つGEKO

 

 意地に懸けてでも作り上げ無ければ隠居の面子が廃る。早速作戦を練ることになる。先ずは部品探しだ。 電気部品はなんとかなるとしてケースが重要だ。シガーライターに接続する使い方だから大きなケースは見栄えが悪い。 ジャンク箱の中から絶好のケースが見つかった。25×25×40mmのプラスチックケースで元々車載オーディオの電源フィルターに使われていたものだ。 これに回路をぶち込むのはいささか大変と思ったがほかに適当な物が無いのでやむを得ない。また発熱が問題になりそうで気になるところだ。 14Vの電圧を3Vにまでドロップさせ、0.2Aの電流を流すのだからシリースレギュレータでは2.2Wも熱を出す。 降圧型スイッチングレギュレータであれば熱の問題は解決するがサイズが問題だ。どうしようかと迷っている内に格好の部品が見つかった。 「コイル一体,他励型降圧スイッチング方式レギュレータIC」といささか長い名前のついたサンケン製のIC SI−8401L だ。 以前にジャンク基板から取り外した部品だが、仕様が不明のためお眠りになっていた。検索技術を駆使し漸く仕様が明らかになり陽の目を見ることになった。
コイル付スイッチングICとシリースレギュレータ
  SI−8401L外観

 このICは3端子レギュレーターICと同じ感覚で使えるよう設計されている。ただ、 出力電流が0.5Aと申し分ないのだが電圧が5Vの固定出力である。目的を達するには更に2Vの電圧を下げねばならない。メインテーマの「シャントレギュレータ」 の出番がようやく回ってきたのだ。
 最初はIC出力にシリースにダイオードを接続し電圧降下させる簡易的方法を試みたが、レギュレーションが悪くとても使えたものではない。 やはり真面目に取り組まねばならぬと完成させたのが上に示した回路図である。回路図中のupc1093がNEC製のシャントレギュレータIC で回路記号がツエナーダイオードに類似している。多分に機能が類似しているかであろうがツエナーと同じ記号を使っている例もあり何が正しいのか不明である。

 これから先は技術的に理解したい人への横道です。 シャントレギュレータの基本動作はその等価回路(←をクリック)を見ると解理解が早い。 回路図中のツエナーダイオード類似の記号の中身は点線で囲まれた回路となっている。REF端子に加わった電圧は基準電圧との差分が増幅されパス・ トランジスタのベースに加えられる。パス・トランジスタはON状態に導びかれるからRsに電流が流れ電圧降下が生じその結果、 REF端子の電圧(R1とR2で分圧され加えられている)も低下し基準電圧との差が0になって回路は安定する。安定した時の出力電圧は、 Vo≒基準電圧(Vref)×(1+R1/R2)で求められる。横道はここで終わり。

 上の回路でスイッチングレギュレータICの出力5Vはトランジスタ2SD401Aとシャントレギュレータupc1093で構成されるシリースレギュレータ に加わる。その出力電圧も上式で計算され、upc1093の基準電圧は Vref=2.495V であるから R1=1.2K,R2=4.7Kで計算すると  Vo=3.13Vとなる。運良く標準数の抵抗値で目的達成だ。より正確に希望電圧を得たいならばR1かR2のいずれかを可変抵抗にして調整すれば良い。 ついでながら希望する出力電圧はR1とR2値を選ぶことで得られるが、計算は面倒だ。そこでExcelを使えば簡単に算出できる。 関心のある方はEXCEL(←)をクリックし実際に値を入力し試してください。
 バラックで実験し目的が達せられたので残るのはケースの中への実装だ。プリント基板はありあわせの物からケースサイズに合わせて削り出し、 必要な部品用の穴空けとパターンカットを施す。小さいだけに加工は大変だが工作の面白みも味わえた。
削出し手作り基板に全部品を実装 ケースに収納   ケーブルを接続し完成

 上に実装状況を写真で示した。我ながら上手く小さなケースにこれだけの部品が収容できたと感心する出来映えだ。 最後にデータ取得したので下表に示しておく。先に計算した電圧値に良く合致している。気にしていた損失は0.8W程度におさまり、 手触り温度計では殆ど発熱を感じなかった。
[GEKO専用電源データ]
入力電圧 出力電圧 全損失
負荷電流=0A 負荷電流=0.2A 負荷電流=0.4A 負荷電流=0.2A
10.0V 3.12V 3.11V 2.92V 0.62W
13.2V 3.12V 3.11V 2.95V 0.79W
16.0V 3.12V 3.11V 3.05V 1.06W

 注文を受けたのが土曜の夜。全て完成したの2日後の火曜日の午後であった。 正味2日間で完成させた上に、今回も全て保有するジャンク部品で目的達成が出来た。「シーラカンス健在なり」とエールを送っているのであります。 (06/04/26完)

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デジタル電圧計用 DC/DC電源
温度計が変身した電圧計

 わが館には太陽電池と蓄電池と自作のコントローラーからなる非常用電源システムがある。 通常はケーブルテレビ受信機の電源をまかない若干の余裕がある。さらに活用の道を開きたいとこの電源システムの作り直しを考えている。 その手始めに蓄電池の電圧をモニターする電圧計を作ることにした。もともと秋月電子から購入したデジタル温度計(キット)が使われずに眠っていたので これを電圧計に改造することにした。
 この温度計にはICL7136なるICが使われており、9Vの乾電池で動作するよう設計されている。電圧計に変更してしばらく使っていたのだが、 表示電圧に異常を示し出した。理由は簡単、A/D変換のもととなるREF電圧(100mV)がバッテリーの消耗で変化してしまったのだ。 一方で、12Vの能力十分な蓄電池があるのに何故に別の乾電池が必要なのか、どう考えても理不尽ではないか。 ICL7136の消費電流は100μAと極めて少ないから普通であれば乾電池でも良いのだが、電圧精度を上げるには外部で基準電圧を作る必要があり、 それに必要な消費電流は本体の消費より多くなってしまう。いっそのこと蓄電池を電源とし安定化した電圧を得て、 それで電圧計を動作させればば全てが解決するではないか。
 ところが、この考え方には問題がある。ICの測定用入力ピンと電源ピンを接続することになるから正常に動作しなくなる。 普通は諦めてしまうだろうが何としても解決の道を探すのがシーラカンスの流儀である。そして簡単に解決の道を見つけ出した。 DC/DCコンバータを使い、1次側と2次側を分離してやればよいのだ。幸いな事に手持ちにCOSEL製のDC/DCコンバーターが有ったので実験してみた。 たしかに問題は解決したが消費電流が65mAにもなってしまう。結局目的に適したDC/DCコンバーターを作るのが早道なのだ。

  右に示した回路は2Vの太陽電池から12Vの蓄電池へ充電を可能にした昇圧回路である (鉛蓄電池の補充電参照)。
 この回路のコイル1mHをトランスに変え、その2次側の出力を整流してやればDC/DCコンバータになる。 さらにその出力をシャントレギュレーターで安定化すれば狙いが達成できるはずだ。コイルはもともとラインフィルターを使っていたので、 巻線が2組から成り立ち巻線比が1対1のトランスと同じである。むしろ2次巻線を自由に巻ける力(=部品製作能力)があればブロッキング発振回路を作り もっと簡単な回路で目的が達成できる。手持ち部品を生かし工夫を加えて目的達成するのが面白みである。
電圧計用 DC/DC電源回路

 左が本電源の最終回路図である。左半分は上の図と全く同じで、定数のみが電圧の関係で変わっている。トランスの2次側は、 ダイオードで整流された後シャントレギュレータに加わり9Vの出力を得ている。出力電圧は150kと56kの比で決まり、近似計算式
   Vo≒基準電圧(Vref)×(1+R1/R2)
を使った計算値は9.18Vとなる。[EXCELを開き電圧計算(可変シャントレギュレータ)を試してください]
 ついでながら upc1063のREF端子の入力電流は1μAと微小なため近似計算式が全く問題なく使える。
 今回の負荷は電流が100μAと僅かなためシャントレギュレータで十分であるが、 負荷が大きい場合にはトランジスタを追加してシリースレギュレータを構成させる必要が有ろう。
 回路の発振強度は2SC1815のベースに接続されている56kの抵抗で決まる。56kの場合、発振開始の電源電圧は10Vで、 消費電流は15mA(Vcc=13.2V)のデータが得られた。発振出力の1部を帰還させて自動制御すれば理想的ですが、 今回のように負荷が一定の場合にはそこまでの必要は無いのでこの回路で落着いた。
モジュールの部品面 モジュールのパターン面

  回路が決まれば後は実装である。20mm×40mmの基板上に全部品を搭載しモジュールが完成した。左にモジュールの表と裏を示す。

 最終目的は「太陽光発電非常用電源システム」の構築にある。電源コントローラーを作り直せば全システムを再構築できる。 その時にはシャントレギュレータをコンパレーターとして使うことになりそうなので、引き続きこのページにて紹介できることになと思っている。(06/05/02完)

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ツェナー電圧チェッカー

 最近「勿体無い」と言う日本の表現・生活態度が世界中で注視されているようだ。シーラカンス年代は子供の頃に普段の生活の中でそれを教え込まれ、時代が変わっても教えを大事に守っている。そして物を捨てることは「勿体無い」を通り越し「罪悪」とさえ思ってしまうのだ。

中古ツェナーダイオード

 その証が左の写真である。ジャンク基板から取り外したツェナーダイオード群だが5−60本はあろう。 ところが肝心のツェナー電圧が判らず単なるゴミと変わらないのだ。
 一方で、25V近辺のツェナーダイオードを必要とする場面があり、「勿体無い」精神が如何に役立つかの立証の意味も込めて電圧チェッカーを作ることにした。
 ツェナー電圧を調べるには高抵抗でダイオードに電流を流し、そのの両端の電圧を測れば良い。このように簡単だからチェッカーを作ることもなかったのだが、 今回は25Vと比較的電圧が高く、流す電流も少ない使い方ではあるがチェックが結構面倒なのだ。そこでシャントレギュレータで定電流源を作りチェックする事にした。

2種類の定電流回路

 定電流回路はシャントレギュレータの応用例には必ずが出てくる。右に示した回路はツェナー電圧チェックを加味した定電流の応用回路例である。
 上に示した「吸込み型定電流回路」の電流は

   Isink=Vref/Rcl ・・・(1)

で表わされる。また下の「吐出し型定電流回路」の電流は

   Iout=Vref/Rcl +Ika ・・・(2)

となる。
 一般にシャントレギュレータが動作するには最低0.5mAのカソード電流Ikaを流す必要があり電源電圧Vccの影響も受ける。これを嫌ってIkaの影響を受けない「吸込み型定電流回路」を採用する事にした。
 一方、電源電圧の値はチェック可能なツェナー電圧を決める事になりその最大値は次式となる。

Vz=Vcc−(Vref+Vce) ≒ Vcc-Vref ・・・(3)

 ここでVceはトランジスタのコレクタ-エミッタの飽和電圧で、電流が数mAと少ない場合Vrefに比べれば僅かなので近似式がなりたつ。

ツェナー電圧チェカー回路図 

 これらの事を加味し、作ったチェッカーの回路を左に示す。
 電源には12V入力24V出力のDC/DCコンバーターを使った。コンバーター出力を図のように入力電圧に足し算する接続をし36Vの電圧を得ている。シャントレギュレータupc1093のVrefは2.495Vであるからチェック可能な最大ツェナー電圧は(3)式よりおよそ33Vとなる。この値で不足する場合にはVc cを高くすればその分高く出来る。世の中で高いツェナー電圧は40Vどまりであるからこの回路で実用上殆ど問題ないであろう。

 ツェナー電圧測定には測定電流を定める必要がある。本チェッカーではディップスイッチで測定電流を 0.1mA,1mA,5mAが選択できるようにした。勿論組合せで6mAも可能である。吸込み型定電流回路を使ったため、最小電流を0.1mAまで小さくすることが出来たのは嬉しい。
 測定電流に対応したRclの値は(2)式で求められ計算結果を下に示しておく。製作したチェッカーは複数の抵抗を直並列に接続し目的を達した。なお使うシャントレギュレータのVrefを正確に測定すれば計算どおりの結果が得られので気持ちが良い。(並列抵抗の計算にはExcel活用イロイロが便利です。)

 測定電流に対応した抵抗値  Rcl(0.1mA)=24.95kΩ  Rcl(1mA)=2.495kΩ  Rcl(5mA)=499.0Ω

  完成したチェッカーの外観を左に示す。電圧測定にはアナログテスター・デジタルマルチメーターを使っているが、流れる電流が大きいとその分測定ツェナー電流が減少する。特に0.1mAでの測定の場合にはデジタルマルチメーター等の測定電流が少ない計器を使うのが望ましい。

 世の中アメリカの影響を受けてか消費経済が蔓延している。お金を出して買い求めるのではなく「工夫をこらし汗を流して目的を達成する」シーラカンス流儀は捨てたものではない。今回も全てをありあわせのジャンク部品で完成させ、「勿体無い」精神が捨てられる運命にあったツェーナーダイオードに息吹を与えた。勿論、目的の電圧のツェナーダイオードを探しあてる事が出来たのは言うまでもない。(06/05/09完)

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ミリオーム計測 専用電源

 我が工房には超安物の P-10 なるDigital Multimeterがある。テスター替わりだから贅沢はいえないのだが抵抗測定にはいささか不満がある。0.1Ω以下の抵抗測定できないのだ。そこで、このDigital Multimeterでミリオームの測定を可能にする専用電源の製作を試みた。
 ミリオーム測定の動作原理は未知抵抗に定電流を流し、その両端の電圧をDVMで測定し抵抗値を計測する方式だ。
 数式はオームの法則そのもので R=V/I と表わす事が出来る。ここで電流Iを既知の値とすれば電圧測定だけで抵抗が求められる。例えば、未知抵抗に1Aの電流を流し両端の電圧が1mVであれば抵抗値は1mΩである。この理屈からすれば我がDVM P-10 の最小分解能は100μVなので、分解能100μΩのミリオーム計が実現出来ることになる。必要なのは一定電流Iの供給装置、すなわち定電流源を実現すればよいのだ。これは前項のツェナー電圧チェッカーと全く同じ考え方で実現できる。

ミリオーム計測アダプター回路図 

 左に示したのが今回製作した専用電源の回路図である。既製の12VのACアダプター出力をコイル一体,他励型降圧スイッチング方式レギュレータIC SI-8501(1A出力)で5Vに降圧し、シャントレギュレータupc1093とトランジスタ2SD401Aの組合せで「吸込み型定電流回路」を構成し1A、0.1Aの定電流源を実現している。測定精度を確保するには正確な抵抗値を選択(合成)することにかかっている。正確な電流計を使い、電流を測定しながら合成抵抗を作る方法がより実用的であろう。
 測定方法は本アダプターにて被測定抵抗に電流を加え、Multimeter(DVM)で電圧を測定するだけである。流す電流を1Aとすれば電圧の読みそのものが抵抗値となる(単位はVからΩ読替え。例えば測定電圧が1.00Vであれば1.00Ω、150mVであれば150mΩ)

 この抵抗測定法は4線式である。電流供給と電圧測定が独立して行えるので面白い使い方がいろいろ出来る。例えばプリント基板のブリッジ箇所を探し出す様な使い方が可能なのだ。DVMの片方を電流源の片方と同じ箇所に接続し、残りの片方を探針として任意の箇所に触れて電圧を観測すればよい。

 製作した実機の様子を下の写真に示した。 使用したACアダプターのケースに全部品を収容できたのでコンパクトにまとめることが出来た(補足3参照)。なお、元々ののACアダプターとして、また5Vのレギュレーター電源としても出力端子(リード)さえ追加すれば実現できる事を申し添える。(無駄を嫌う人のために・・・)
ACアダプター(オリジナル 空きスペースに全部品を詰め込む ケースをかぶせて完成
           

補足

  1. 12V AC電源アダプターの使用理由:ネジ止め式ケースで改造がしやすかったため。
  2. スイッチングレギュレータ使用の理由: アダプターの出力電流が500mAと小さく、シリースレギュレータでは1Aの電流が取れなかったため。
  3. 測定電流を1Aとすると発熱が大きく長時間の測定には不向き。0.1Aの測定電流を推奨する。1Aで測定したい場合にはしっかり放熱の出来るケースにて製作されることを推奨する。

(06/06/02完)

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