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「JJYの受信実験」

 日本の標準電波「JJY]は、40Khzで「おおたかどや山標準電波送信所」(福島県田村市都路町)から、60Khzで「はがね山標準電波送信所」 (佐賀県佐賀市富士町)からそれぞれ送信されている。標準電波は周波数精度が高いのみならず精度の高いタイムコードが送信されている。 これを利用した電波時計が商品化され最近では千円を切る価格で売られるようになった。しかし、標準電波を直接を受信しタイムコードを耳で聞いてみたい衝動と、受信周波数の最小記録達成を目的に挑戦した。

60Khzの受信を目標に!

 NictのHPに主要都市の標準電波の電界強度予測値 が掲載されている。これによれば我が館での電界強度は60Khzの方が10db以上強い。また60Khz用のバーアンテナが秋月電子通商から売り出されている。 この二つの理由で60Khzの受信に挑戦することにした。ちなみに館と夫々の送信所との距離は下のようになっている。(電子国土地図にて計測した値)

「おおたかどや山標準電波送信所」 603.35Km − 館  465.88Km −「はがね山標準電波送信所」

 具体化に向けて始動開始

受信機ブロックダイヤグラム

 メーカーが商品化しているJJY受信用のICを使うのでは余りにも面白みが無いので、トランジスタで実現させる事を基本とした。
 電界強度予測値は神戸市にて70(dBμV/m)前後である(NICTのHPの掲載値)。我が住まいは若干送信所に近い明石ではあるが、バーアンテナの実効高はそれほど期待できないから、高周波増幅が必要な雰囲気である。他の事を加味して作ったブロックダイヤグラムが左図である。例え簡単な物でもブロックダイヤグラムを作っておくと実験・製作等がやり易くなる。場合によっては部分実験を先行させることも可能になるのだ。

回路図と主要部品

 ブロックダイヤグラムから個々の回路を頭に描いて部品を集める。その上で必要ならば回路実験を重ね、全体回路を作り上げるのがシーラカンスのやり方である。途中の説明は割愛し受信部の最終回路図を下に示す。なおビートオッシレーターは必ずしも必要でない事が判ったので別基板に組み立てることにした。(後述参照

JJY(60Khz)受信回路・・・ストレート方式

 主要部品は何といってもバーアンテナである。60Khzと低い周波数は手がけた事が無く全く見当がつかない。幸いにも秋月電子が目的に近いのアンテナを販売しているので購入する事にした(電波時計用60kHzパーツセット¥700)。
 RF増幅用の高周波トランスはバーアンテナを調べた結果、455KhzのIFTを流用可能と判ったのでありあわせを流用した。
改造したバーアンテナ

 バーアンテナの同調容量は0.012μFが使用されている。インダクタンスを計算すると600μHになる。 出来れば再生をかけ動作Qを高くしたいと考えていたので正確な同調がとれるようトリマーコンデンサーの接続をする予定だ。その分インダクタンスを減らす必要があるので、10ターンほど巻きほどいた。また、増幅回路との結合用2次コイル25Tを追加した。(再生は結局綺麗にかけることが出来ず、巻き線を追加したが不要となってしまった)
 455KhzのIFT(同調容量200PF)のインダクタンスは600μHである。全くの偶然であるが、0.012μFを追加すれば60Khzに同調する。 IFトランスの調整範囲は広いのでマイラーコンデンサー10%精度を使い目的が達成できた。
 
 ビートオッシレーターは、TVの漏洩電波でまかなえる事が判った。若干説明を加えておく。
 TVの水平発振周波数は15.725Khzであるからその4倍高調波は62.9Khzとなる。 しかも同期のとれている状態では極めて安定した発振をしている。受信周波数とで発生するビートは2.9Khzとやや高いが、それを気にしなければ無理にビーとオッシレータ作ることは無いと言うことになる。ただしTVの近く(数m以内)で無ければ動作しない制約を受けるのは我慢する必要がある。 
 本実験では4.9152Mhzの水晶発振ユニットの手持ちがあったのでそれを1/80分周し61.4Khzを得ている。結合は粗くて良いので別ユニットとして組み立て、リード線をバーアンテナに絡ませる方法をとった。
AF出力IC MC34119 の応用回路例

 検波出力は増幅してスピーカーで聞けるようにした。狙いは、耳でJJYの時刻信号をとらえ、目で比較対象の時計と対比しようとの魂胆からである。既に、イヤホーン用のAF回路はあるのだが、SPをドライブする回路は無かったで、ジャンクのボードに組み込まれていたAF出力用の MC34119(モトローラ製)を外して使う事にした。同社の資料から応用例を左図に示しておく。使用部品が少なくて済み、電源電圧5Vでも出力400mW(負荷32Ω)が得られる魅力あるICである。

組み立て調整

 その他の回路部品は全てあり合わせで間に合せた。中古ユニバーサル基板(5mmピッチ)にバーアンテナを含め全部品を搭載し、パターン面を銅線でつなぎ配線を完了させる。ただしAF用のMC34119はピッチが1.27mmのSO-8パッケージの品物なので直接搭載が不可能だ。このためサンハヤトの変換基板にICと周辺部品を組み込み、モジュール化したものを搭載した。全体の様子を下に示しておく.

部品搭載面の写真 パターン配線面の写真 AFモジュール

  最後は調整であるが厄介な事になった。手持ちのSSGは100Khzからしか動作せず、60Khzの信号は取り出せない。止む無く、6Mhzの水晶発振子と1/10分周のIC2個で1/100分周をさせ60Khzを作り、それで調整することにした。(いきなりJJYを受信するのは余ほど運が良くない限り不可能であろう)
 調整はピーク同調を取るだけだから比較的容易だ。トランジスタ検波のバイアス調整も簡単である。ダイオードの順方向電圧を利用するバイアス回路としているため、半固定抵抗器で出力が最大になるようにするだけである。但しビート音が発生する状態にしておく必要がある(TVの水平発振出力もしくは60Khz近辺の発振出力が加わるように準備しておく)。
 調整完了したなら、後は実際にJJYの信号受信である。バーアンテナを水平にし、方向を変えると時刻信号が受かるはずだ。最大音になる方向に固定し、ここで同調・検波バイアスの再調整をして受信ビート音が最大になるよう微調整する。
 これで、受信部は全て完了である。後述のビートオッシレーターとの組み合わせによる受信音をお聞き下さい。再生時間は約1分間です。なお、スタートから20秒後にJJYのコールサインをモールス信号で聞く事が出来ます。

JJYの受信音 ←をクリック!
(05年/11月/14日 15時44分20秒から約1分間)

 来年(2006年)の1月1日には閏秒が追加される。その瞬間を是非録音したいと願っている。成功した暁にはここにその瞬間のタイムコードをお聞かせする予定である。興味のある方は覗きに来てみてください。
 さらに我が人生の中で、受信周波数の最低記録をここに達成したのだが、世の中には更に低い周波数が運用されている。JJYの40Khzを下回る25Khzが存在するらしい。この受信に次は挑戦したいと願っている。それで何のプラスになるのと冷やかされているのだが!(05/11/14 完)

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ビートオッシレータ

 JJY(60Khz)受信用のビートオッシレーターは、受信部とは別ユニットで製作した。 すべてDigital ICで構成されているので部品さえ調達すれば製作は極めて簡単である。

水晶発振器

 発振には手持ちの水晶発振ユニット(4・9125Mhz)を使用し、その出力をIC2個で1/80分周させ61.4Khzを得る。電源は5Vである。注意点は、1/10分周のさせ方である。HC4040で1/8分周しSN7490に加えるが、1/5分周に先に加えその後で1/2分周させることだ。理由は分周出力のDutyを50%にする為である。出力は矩形波となっているから、簡単なCR Filterで波形をなまらせた方が良さそうである。全体構成とユニットの写真をを示しておくので、製作意思のある方は参考にしていただきたい。

     
 ブロックダイヤグラム ユニット部品面 ユニットパターン面

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