オンとオフを切り分ける


3.組織で充実した時間を過ごすために

 「オンとオフを切り分ける」

 よく、仕事(オン)平素(オフ)を切り分けて心身のストレスを低減させ、あるいは解消させたりすることが必要であると言われている。確かに、常に緊張状態にあるオンと、気持ちをリラックスさせたオフを意識的にでも切り分けることが大切であることは間違いないことではあるが、複雑に白と黒が入り組んだ迷彩柄の模様に対して白と黒を明確に分離することが難しいように、実際の行動の中でもオンとオフを明確に分離することは色々な状況もあり難しいであろう。この話題は既に「組織で充実した時間を過ごすために」の中の幾つかの文章でも少し紹介してきたが、仕事を単なるビジネスと割り切ることができない場合(例えば自己研鑽などを含むような場合)ほど該当するような気がする。

 例えば、気持ちが
オンの状態で悩んでいることがオフの状態でも何かのきっかけで閃くことがある。したがって、オフの状態とは何でもかんでも全てが完全なオフの状態では無いのであろう。また。オンの状態で悩めば悩むほど睡眠時に夢にまでその繰り返しが出てくることもあるらしい(場合によっては夢の中で数式を展開したり、思わぬ閃きを感じることも有るとどこかで聞いた)。さらに、非常に深刻な場合には、このことが自分自身の神経を攻撃して病んでしまうのであろう(夢の中で何か強大な敵と戦っているような場合もある)。多分、こうしたことの繰り返しによってもっと心身が病んでしまうと「鬱病」への進行へとつながっていくのかも知れない。

 しかし、やはりそうは言っても精神状態を長時間にわたって同じ状態に緊張させておくことは良くないので、例えば趣味やスポーツやリクレーションなどで気持ちを切り替えることも大切なのであろう。案外こうした精神のリラックスが
オンの時に悩んでいた課題に対してもオフの状態でも意外にも有効な解を瞬間的に与えることになるのかも知れない。

 重要なことは、
「何でもかんでも根性で乗り切る」とか「必死に努力して成し遂げる」とかで残業して、または休日を潰して出勤して仕事を進めるのではなく、一旦は心身を休息してから考えて行動することを心掛けたいものである。心身に余裕が無ければ良い仕事は多分できないであろう。

 著者の現役の時代に、当時の役員が新人研修に来て声高々に話していたことではあるが、
「人間はギリギリまで詰まればそこから打開策が生まれてくるので切磋琢磨すれば研究開発も進む。だから、必死になって仕事をすべきである。」と言った考えはやはりはっきり言って間違いである。

 この逆に、心身ともにあまりにも余裕がありすぎるもの良くない状態であろう。著者は、
「適度な心地よい緊張を持って同時にある程度の心身の余裕が無ければ良いアイデアは生まれない」と自分自身の経験から感じている。「オンとオフを切りわける」ことは決して簡単なことではないが、心に少しの余裕を持ちながら仕事に対峙していくことが必要なのであろう。


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