興味を持つことが自分を助ける | |
3.組織で充実した時間を過ごすために 「技術は単体でなく体系で考えよ」 技術は単独(あるいは単体)で考えれば、また、決まったやり方(例えば作業標準とか言われるものなど)に従って行えば、与えられたその課題(作業)に対しては十分に目的を達成できるかも知れない。企業や組織の中での仕事として、その対価としての報酬を受け取るためには多分それで十分であると思う。しかし、そのような行動は上司や組織からの指示のみで動いている作業と思われるので、多分それ以上の発展や成長は望めないであろう。 例えば、ガラス製品中に流出した色々な異物の分析結果を「製品の歩留りの向上」と「品質の改善」のための対策に対して用いる場合を考えてみよう。ガラスの製品中に黒色の異物が流出した場合には、X線などを用いた精密な分析によってその異物がニッケル(Ni)とイオウ(S)の化合物だと明らかになった場合には、我々は硫化ニッケル(Nickel SulfideあるいはNixSy)と同定する。 確かに、欠点そのものを考えれば「硫化ニッケル異物」で間違いない。しかしながら企業や組織の中での仕事は決して1つの学問ではないしそれだけを答えても何も役立たない。すなわち、知識や知見に基づいて解決に結びつけるように「仕事」をして行かねばならないのである。そして、硫化ニッケル異物とわかった場合にはその影響は市場や業界に対しては非常に大きい。 すなわち、硫化ニッケル異物を含むガラス製品が強化される場合には(例えば車両用の強化ガラスとかビル用の強化板ガラスなど)、α相からβ相への相転移に伴う体積膨張によってガラス内部で発生した微小なクラックが急激に伸展して瞬時の破損に至る。この現象をガラス業界では「自然破損:Spontaneous Breakage」と呼ぶ。ガラス市場で、建築ガラスや車両積載ガラスが破損する事故の中にはこうした原因で破損した強化ガラスが多分多く含まれると考える。 この場合には、強化ガラスの製造技術(熔融技術や加工技術)そのもののへの根本的な対策が必要になる。また、硫化ニッケル異物の得られた化学組成や結晶状態の詳細な情報(解析データ)から、この異物の相転移の温度の違いや破損に至る危険率を読み取らなくてはならない。真の原因を追究するならば、この黒色異物の流出の根本的な対策まで至るのであろう。 このようなガラスの欠点や欠陥を総合的にまた根本的に解決するためには、分析した黒色異物そのものだけではなく関連する多くの現象や周囲への影響も十分に考慮しなくてはならないのである。そのためには、直接指示された仕事(調査や研究や実験など)をそのまま単純に処理するだけではいけない。自分自身の技術の棚卸しを行いつつ将来の技術の世界(ネットワーク)を作っていくことが最も大切になる。 単なる1つの技術でもそれを体系的(あるいは総合的に)に考えることは決して容易ではない。また、自分ひとりだけで考えられる課題の全てを処理することは難しい。すなわち、協力してもらえる友人を増やして、有益な議論ができる仲間を増やして、また経済的あるいは戦略的な利便性を維持できるように上司や決裁者とも組んで行かねばならない。そしてなにより自分自身も与えられた課題に対する疑問や影響を感じながら新たな技術分野にも知識や知見を増やしながら対峙して欲しいと考える。 全ての技術はつながっている。理系や文系を問わずその影響や関連性を常に考えて行動することが大切である。技術は決して単体で考えることなく体系的に考えることが必要になる。
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