「楽しく仕事が出来ているかい?」


2.上司と上手に「たたかう」方法

 闘いでなく提案すること

 上司からの指示や言葉がどうしても納得できないということは実際の仕事の中では沢山ある。また場合によっては、上司自身が自分の考え方ややり方を無理矢理に押し付けるような高圧的な態度で部下を動かそうとすることもある。上司やその指示を受ける部下の性格やお互いの仕事のやり方の違いによって、両者の行動のパターンは大きく異なるであろうが、上司はさらにその上の上司からの指示によって(究極的は最高権力者の社長からの命令によって)、ほとんど毎回高圧的な態度をとることもあるだろう。

 しかし、部下は権力的にもまた場合によっては能力的にも上司に劣ることがあるので、自分から勝ち目のない闘いを挑んでは
「自滅の道」をたどってしまうことになる。たとえ「鬼畜」のような上下の関係であろうが、常に闘い(闘争)の姿勢は一歩後ろに置き、先ずは「提案」という前向きの姿勢で対峙して欲しいものである。また、個々の「提案」に対してもそこに至る過程や背景も含めて考えておき、丁寧に論理的に説明できるようにしておきたい。

 例えば、新しい方法ややり方を提案する場合においては、単純に
「この方法で実施したい」とか、あるいは「こうして実施すべきである」などと単純に手短に言うのではなく、「この方法をいつまでに実施すれば具体的にこのような利点があり、その結果として組織や部署に対してこのような利益をもたらす」ということを得られたデータや整理された資料に基づいて具体的にまた定量的に示すことが必要であろう。また、将来的な利益の還元に対しても説明できるようにしたいものである。

 しかしながら、
「敵もさるもの、引っ掻くもの」である。上司が自分の立場を主体的に考える場合には、なんだかんだと屁理屈を並べて部下が自分自身で最善と思って提案したものでも拒否してくることがある。そのような場合には、上司の性格ややり方も十分に考えながら対応したいものである。

 例えば、技術的な内容や学術的な考え方が好きな上司であるならば、得られたデータの内容や蓄積した結果を定量的に強く説明したい。また、利益や損益などの経営的な内容を気にする上司であるならば、総合的なコストメリットを定量的に分かり易く説明すべきであろう。そのような技術よりも損益が優先する場合でも、技術は経営の根幹となるので必ずきちんと把握しまとめておくべきであろう。

 ただ、部下も上司も人間である以上、お互いの説明や対応の中には強く感情的になる場合もある。そうした場合には、やはり提案の裏には賢い闘い(バトル)の気持ちも持ちたいものである。しかし、どんな場合でも無計画な先制攻撃では勝ち目がない。ある意味、専守防衛になってでも論理的に上司の気になる部分を突いて辛抱強く堀を埋めていきたい。部下からの提案は上司との知恵比べである。提案しながら、また議論しながら、相手の癖や考え方から、落としどころ(方向性)をよく読んでいきたい。

 ただし、どんな場面においても、部下が提案した内容が上司に全て受け入れられることはありえない。このようなことも上司との議論の中で考えに含めておきたい。上司の癖ややり方をある程度理解できるようになれば、仕事も研究も色々な業務も比較的やり易くなる。

 上司も人間であるので、どのような状況でも行動のパターンは大体同じような流れの中にいる。そのパターンがある程度理解できるようになれば、色々な業務はかなり楽になるはずである。日々の業務や課題の中からこれから提案すべき内容や項目を整理しておこう。課題には多くの場合には類似的なパターンがある。人材育成や技術力の何らかの強化、新たな顧客の開拓、新規の技術や装置の導入など、それぞれの組織や部署によって目的や行動パターンが異なる。そのために、日常の業務から課題を整理しておき重要な項目を体系的にまとめておこう。

 例えば、新規の装置の導入に対しては、現在の会社や組織の課題を整理しておき、そのために必要な技術やそれを実現できるための装置を提案できるように準備する。また、関連する分野や組織も多いので、それらの賛同も得ておくことが必須の課題となる。日々のコミュニケーションや人為的な交流が非常に重要となる。


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