「楽しく仕事が出来ているかい?」


2.上司と上手に「たたかう」方法

 公私を上手に区別して行動する

 「公私混同」とはよく言ったものだ。公的機関においても役人や政治家などの個人の利益のためならば、いわゆる「私」となり、組織や機関の利益のためならば「公」となる。予算や費用に対しても、「公」「私」の区別が非常に大切であることがよく言われる。

 上司と部下の上下の関係に対しても、
「公」「私」を区別して対応したいものである。ここでいう「公」とはすなわち企業や組織の利益につながる行動であり、おそらく「私」とは自分自身のための行動であろう。つまり、「公」は事業開発や企業の成長に関する内容、すなわち関係部署における計画に対する成果や効果が如何にして早く、高く、そして高品質で得られるのかを報告することである。このようなものには、それに至る仕事や作業の進め方やまとめ方なども含まれるのであろう。こうした「公」の作業や結果に対しては、上司ととことん議論しても差し支えないはずである。しかしながら、このような本質的な内容に対して、逃避や回避の行動をとる上司がいるならば、それはもはや議論の対象とはならないでろう。そのような状況にある場合には、部下の自分自身の将来も考えた行動も選択肢の1つとなるのであろう。

 一方、
「私」は、部下の直接の利益となる部分であり上司への個人批判も含まれると考えられる。少なくとも個人批判には主観的な部分が多く、「役に立たない上司」とか、「配慮に欠けた上司」ということを直接上司に向かって発言することは職場の状況を一挙に悪化させてしまう。一般的には、たとえその様に思っていても、「公」の方から婉曲的に議論をしていきたいものである。

 例えば、部下への対応がいわゆるパワハラ的であるならば、先ずは周囲の同僚や先輩たちとよく相談してその原因から少しずつ解消していくように考えたいものである。案外、上司も
「公」「私」を混同していて、その結果として「公」としての業務においても「私」の態度が出ていることも頻繁に見られる。こうしたことは、上司も部下も人間であることから大きな違いはないようである。ただ、就業や業務に対しては、一見して「私的」なことでも明らかに「公的」であることが多い。

 例えば、過勤務が多すぎて疲労しているとか、あるいは作業ミスや仕事に気持ちが入らないなどの状況に対しては、明らかに
「公」の中に含まれる場合も多い。特に、安全衛生的な要因が含まれる場合には、上司は部下や組織のメンタルヘルスや安全衛生の維持と改善、あるいは作業環境の改善を行うことが必須の役割となっているので、これらを無視したり軽視したりする上司はもはや組織の一員として明らかに失格である。

 上司と言う立場は非常に責任の重い立場である。仮に、安全衛生の管理を怠って万が一にも重大な事故や障害が生じる場合には上司に対しても書類送検も有り得る。上司はこうしたことも常に念頭に置き、いわゆる
「鬼畜状態」であるならば、その部下はその職場を離脱することも解決策の1つでもあるのかも知れない。何はともあれ、そのような不幸な状況に陥らないためにも、部下と上司との間には同僚や先輩の力を借りて、総合力でできるだけ良好になるようにしておくことも肝要であろう。ここで良好な状況という意味は、お互いに意見交換できることを意味している。

 著者の過去の経験であるが、自分自身が手一杯の状況の中で次々と指示を出す上司がいた。上司自身の科学的な興味が先行してしまって上司自身でも
「あれもこれもしたい」という状況であったのであろう。決して、悪意を持ちあるいは意地悪な気持ちで作業を指示していたのではないだろうが、部下にだけ作業をさせて自分はデータだけをまとめることしか行わない、いわゆる昭和の時代のやり方に対して、著者も明らかに「イラッ」ときたようである。上司の持つ時間は机上の作業だけであり作業する時間も十二分にあるのに、指示するだけの態度に対してついに「切れた」状態になったのであろう。「私は心身が疲れ切っているので休みます」「捨て台詞」を言い放って「年休届」を出して帰宅した。

 その後、同室の同僚や部下の援助もあって事なきを得たが、その時の状況においては、
「年休届」が上司の机めがけて宙を舞ったらしい。何事も、尾ひれが長くなるものであるが、かなり苛立って行動したのであろう。今から思うと、事後の経過がある意味でラッキーであったのかも知れないが、少し練ってから行動することが事後の安全に対しても良いのであろう。

 どちらにしても、あまりにも
「公」として行動できない上司の場合には、時々こうしてジャブを出すことも必要なのかもしれない。ただ、上司にも個性があり、人格も個々に異なるので、その辺の状況は日頃から読みながら相手をすることを勧めたい。そして、「公」に対してあまりにも納得できない行動や指示の場合には、自らが身を引くこと(異動願いなど)も1つの解決策かもしれない。どちらにしても、日常から対話の雰囲気を構築しておくことを願いたい。


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