「楽しく仕事が出来ているかい?」


1.部下を伸ばす上司と部下を駄目にする上司

 安全第一は業績よりも優先すべし

 多くの社員やメンバーを集めて、
「我々の組織やチームが実施している項目の中で何が一番重要なのか」を問うと、多くの場合に以下のような答えが返ってくる。

 
・企業や組織の年計を達成して目標をクリヤーすること。
 ・企業の売り上げ向上に貢献して黒字を確保すること。
 ・○○開発や△△事業を成功させること。
 ・自分に与えられた目標値を達成させてクリヤーすること(結果的には昇給につながる)。


 このように整理してみると、彼らにとって一番重要なことは、業績、売上あるいは給与や成果に関することが大半であろう。しかしながら、ほとんど全ての場合においては、企業や組織で活動するために最も重要なことは間違いなく「安全と衛生」である。すなわち、
心身ともに健康で怪我や病気がなく安全に組織やグループ内で活動ができることが求められているのである。

 上記のように我々が研究開発や業務遂行をするために最も重要なことが
「安全と衛生」であるならば、本来、この項目は本書においてももっと前に議論すべきであると言われるであろうが、ここではあえて後の方に最も重要な項目として記載することにした。ここまでに著者の幾つかの議論を読んで頂いて、「安全と衛生」の重要性に気が付いているならば、その読者は自身の業務遂行に対して十分な資質を持っていると理解できる。いっぽう、この章で初めて「安全と衛生」の重要性に気付いたならば、よく自分たちの取り組み姿勢を思い出して、未来に向かって改善と向上をしていって欲しい。

 ○○ハラスメント、残業、出張、異動、配置変え、年計目標の達成、昇給、昇格、あるいは懲罰など数えきれないストレスの中で研究開発や技術開発を行っている。場合によっては、よく企業での目標未達などで見られるように、自らが設定した目標に対して到達しようとして背伸びしてもできない「ジレンマ」もストレスの大きな要因となるのであろう。

 人材育成や教育においては、こうした種々のマイナス要因を一つずつ排除していかねばならない。たとえ短時間や短期間で排除できなくても計画的な改善も考慮していくことが求められる。場合によっては私的な要因や家庭内でのストレスに対しても、仮に直ぐに改善につながらなくても、双方通行の相談ができるようにすべき場面もあるだろう。

 新人や若手の技術者の教育や人材育成の活動中には、こうした
「安全・衛生」の重要性や必要性を強く意識させ、さらにそれらの項目に対しても、いわゆる本来業務と同様に教育を受ける者から自発的に改善案や提案が出てくるように仕向けるのも上司や教育者の重要な仕事の1つとなる。

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