「楽しく仕事が出来ているかい?」 | |
1.部下を伸ばす上司と部下を駄目にする上司 部下の能力を伸ばす技 オンリーワンを目指す 一般的には、既に結果が出ている過去の出来事に対しては想像力が要らない。既に公表された論文の内容や研究の成果に対して、新たに総合的な調査を行って多面的に考察してそれらの現象や作用を考察しながら現在実施している研究開発や実験の結果に対して活用していくことは明らかに未来の出来事になる。例えば、試験や分析の結果を解析して製品や開発品の性能を正確に知り、それらのデータに基づいて製品や部品の改良や改善を行うことは明らかに過去には達成できなかったことであり、未来に対して画期的な想像力を持って事業や研究開発を創造していかねばならないことと同じである。そして、これらは明らかに未来に起こることであり、設定された目標に対しては全ての情報や知見を集めていくことが強く求められる。 そのような研究開発の活動の中では、我々は決してナンバーワンになる部下を育てるのではない。将来において、オンリーワンになる部下を育てることが非常に大切になる。そして、ナンバーワンになるためにはさらに教育を受けた者が自分自身で切磋琢磨して切り開いていかねばならない。ナンバーワンは元々目指して生まれるのではなく、オンリーワンの中から優れた者が成長してなるのである。 ナンバーワンになるためには、自分自身の周囲の状況や競争相手の状態をよく理解して、同時に興味の領域の拡大を積極的に行いながら自分自身を作り上げていくものであり、決して上司や教育者が教えて育てるものではない。そして、そのような多くの競争の中で自分自身を高める意識が持てなければ、ずっとオンリーワンで業務や研究を遂行することに徹するべきであろう。その方が、教育者や上司、あるいは教育を受けた若手や新人にとっても大きな負担にならないしお互いに心地良い(幸せな関係)であろう。なぜならば、同じ企業や組織の中ならばオンリーワンの若手は常にその部門で一番(ナンバーワン)で業務遂行ができ、彼らに勝るライバルはいないからである。そのような状況ならばおそらく企業や組織そのものが大きく衰退しなければ、多分一般的にいう定年までには一目置かれる技術者(あるいは技能者)になれるかも知れない。 しかし、ナンバーワンに対してはそのような単純な意識では決して到達できない。ナンバーワンとは、特定の業界や事業分野における研究活動で明らかに他よりも秀でることであり、多くの場面では教育を受ける側になる自分自身の意識改革が必須となる。すなわち、人脈(ヒューマン・ネットワーク)の形成、点でなく面で技術を網羅する(いわゆるI型でなくπ型)、担当する技術分野だけでなくその周辺の技術や製造や営業の情報も総合的に整理できる(世間でいう技術馬鹿ではなく総合的な解析や考察ができる)、そして近い将来に自らが教える側になれることなどが自分自身の技術力や知識に加えて備わっていなくてはならない。こうした技術者は未来の若手技術者を育成できる能力を十分に持ち、競合する他社に対しても同等以上の力を有すると考える。 オンリーワン(あるいはナンバーワン)になるためには、上司や教育者からの未来を見据えた丁寧な育成が必要であるが、同時に自己啓発させるための仕掛けも重要であると考える。研究開発の部門に属するならば、学会への参加(聴講だけでなく発表や講演も自分自身が積極的に行う)、講演会や勉強会などへの参加(積極的に新しい技術を知って学ぼうとする)、そして懇親会などでの他社や研究機関の技術者との意見交換や質疑応答が欠かせないのである。上司や教育者は少なくともこうした骨太の技術者を育成するためにあらゆる仕掛けを利用すべきである。社内や学内の発表や対外的な技術交流会(学会、講演会あるいは勉強会)に参加させる、課題を設けて総合的な解決型の仕事をさせる、あるいは場合によってはプロジェクトの一部を任せる、などの仕掛けを利用すべきであろう。 このような未来の創造的な人材育成のためには、上司や教育者は自分自身が担当する技術分野の内容や将来の展望に対しては十分に把握しておかねばならない。そして、ある意味での「野望」を抱いて技術の枠を膨らます計画も考えねばならないであろう。我々は、単なる興味や趣味で若手技術者を育成してはいけないのである。
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