「楽しく仕事が出来ているかい?」


1.部下を伸ばす上司と部下を駄目にする上司

 部下の能力を伸ばす技

 教育者が日々すべきこと
 
 誰もが周知のことと思うが、人材育成や部下の教育は決して短い時間には達成できない。日常の業務や研究や開発を円滑に遂行するためには、日々の変化する状況を正しく把握して、進歩していく技術力を有力なアイテムとして常に身に着けておかねばならない。そのためには必要な技術情報を積極的に吸収することが大切である。
研究開発や研究所の基礎研究を行う技術者ならば、学会活動や技術的な講演会には積極的に参加することが重要となる。講演会には、学会や関係団体、あるいは関連企業(分析装置メーカーや技術支援の企業など)の企画などがあるが、業務状態が許されるならばできる限り参加してもらいたいと思う。特に、そのような外部からの情報や技術を吸収する絶好の機会には部下や若手の技術者をどんどん投入していくべきである。

 教育者だけでなく、上司や研究開発を統括する技術者や責任者は、日々大きく変化していく技術を体系的に把握して、自部門の業務や研究開発に積極的に応用していかなくてはならない。分析技術を例にとると、最新のToF-SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析装置)や顕微ラマン分光法などの分析や評価の技術は、10年以上前からガラス製品の評価や異物や欠点の分析に利用されてきた。そして、これらの最新技術をガラスや薄膜の製品に対して従来の分析技術と共に応用的に利用できるならば、分析技術そのものではなく如何にして自分たちの課題や問題に対して活用できるかを日常的に考えておかなくてはならない。

 また、上司や教育者に対しては、多くの分析技術者が陥り易いトラップ(罠)があることを常に意識してもらいたい。分析技術はデジタル化の推進に伴って日々着実に進化している。分析装置もコンピュータ制御による高機能化や自動化が進み、分析技術者が装置の状態(機嫌?)を意識的に調整しながら分析条件を最適化することがほとんどなくなっている。しかし、今のような便利な時代になればなるほど分析技術者は基本的な技術をきちんと理解していないといけない。すなわち、物理や化学の教科書に記載された原理や作用に対しては正しく理解して、分析技術に対して装置の機械的な駆動や機構も含めて正しい操作が必須となる。さらに、得られた結果に対しては、その正確さや精度も十分に把握できることが望まれる。すなわち、真値に対する値の妥当性や近似性、正当性あるいは標準試料との比較やその補正方法の合理性、得られた値に対するばらつきや限界値に対する理解、など数えたらきりが無いのである。

 こうした色々な課題に対して、教育者は常に受講する者に対して気を配り、基礎的な技術や応用的な技術、さらに最新の技術の情報を意識的に収集して、適時実施している現在のミッションに応用していくことが必要になる。

 「情報収集が無いところには技術の進歩は無い。」このような地味な活動こそが技術レベルを引き上げ有能な若手や中堅の社員(研究員)を育てるのである。上司や教育者は情報を適時開示していくことが良い。
 
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