「楽しく仕事が出来ているかい?」 | |
1.部下を伸ばす上司と部下を駄目にする上司 部下の能力を伸ばす技 技術だけに頼ってはいけない 試験・分析や評価・測定のための分析装置が更新されたので、「これからは従来よりもさらに良い仕事ができる」とか「交換部品が無くなったので新規装置を購入しなくてはならない」とか、また「今の装置を更新すれば測定の精度が向上するし時間も短くなる」などと言われ、どこの企業や研究所でも既存の分析装置の更新の幾つかの理由として多額の金額を投入して高額の装置を代替購入する。そのために、しばしば、分析装置そのものが本当に老朽化していないのに関わらず最新の装置が代替導入される。 確かに、分析装置の更新や代替は、試験と分析の業務の効率化を推進して、場合によって測定やデータ解析などの処理時間を大きく短縮する。 しかし、ここで少し考えてもらいたい。 新しい分析装置は製造メーカー側の効率化の推進や種々の考え方の変化から、測定条件の選択やデータ解析などの条件設定、あるいは解析するためのプログラムのアルゴリズムの詳細はほとんどの場合に我々には開示されていない。近年の分析装置は、ディスプレイ上で与えられた条件の選択のみで全ての測定と解析ができるようになっているので、簡単に操作方法を即席で受講した分析担当者であればほぼ既定の方法で簡単に測定と解析ができ、そしてそれなりの分析結果を得ることができるであろう。このブラック・ボックス的な操作方法に対しては、著者が大学院の学生時代に、当時のSEM-EDX(走査電子顕微鏡にエネルギー分散型のX線分析装置を装着した分析装置)タイプの電子線マイクロアナライザーで測定と解析を実施していた頃においても装置メーカーのマニュアルには使用方法のみが記載され大部分はブラック・ボックスであった。 例えば、電子線を用いた微小部の組成分析においては、サンプル表面に照射される電子線のビーム径の大きさや電子線の照射時の加速電圧や電流値の設定は、測定するサンプルに対する材質や表面状態に大きく依存する。つまり、分析技術者はディスプレイ上の条件選択だけでなく、これらの複数の条件や設定を最適に選択しなくてはならないのである。すなわち、分析装置の付随する測定と解析のプログラムやソフトをそのまま使って、全ての分析業務を上手にまた正確に実施することはできないのである。 測定されたデータを解析する場合でも同様に十分な注意が必要となる。例えば、バックグランドだけを考慮しても、それが正しく設定されて妥当な方法で引かれているのか?近接する特性X線同士の干渉が無いのか?あるいは標準サンプルが正しく設定されているのか?など、確認すべき項目は非常に多い。 こうした分析技術やノウハウに関する基礎的な情報は、分析装置などに付随する解析ソフトだけでは十分に理解することは難しい。すなわち、日常的に基礎から分析技術に関する知識やノウハウを積み重ねておくことが必要となる。固有の分析技術を把握して、装置の測定や解析のアルゴリズム(問題を解くための計算手順や解決するための方法や手順)を知ることは、得られた分析値の妥当性や精度や正確性の検証に対して極めて重要である。 測定とデータ解析の限界を正しく理解して、また適用できる範囲を正しく認識していけることは最も重要となる。そして同じくらい大切なことは、分析や測定を要求する側のニーズ(要求)を正しく把握しておくことである。求められる技術的な内容と持っている技術力の高さとそれらを応用できる能力(Capability)がタイムリーに発揮できれば、いくつかの課題は解決に至るであろう。是非、有能な部下にはそのような成功体験を経験させたいものである。
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