本編1 目に映ったのは、見慣れた天井だった。 「―――え!?」 由佳は飛び起きた。 ザーーー。 「さっきまで公園にいたのに―――」 少女の脳裏に一抹の不安がよぎった。 「まさか…夢オチってことはないでしょうね」 由佳は昨日の出来事が夢なのか現実なのか確かめるために、カバンからタロットカードのケースを取り出した。 昨日失くしたはずの死神のカードもそこにあった。 「う〜、何が何だかワケ分かんないよぉ〜」 由佳は頭を抱えて、そのままベッドに倒れ込んだ。 ◆◆◆ しとしとしと。 ふと立ち止まる。 「あの子確か…オレイアスとか言ったっけ。死神のくせに」 運命の輪(THE OREAD;山精オレイアス) 「死神がオレイアスなんて変な話ー。きっと夢ね」 由佳は公園を後にした。 途中、登校班を組んだ小学生達とすれ違う。 「私って、いつから長靴を履かなくなったんだろ…」 小学校の中学年ぐらいまでは履いていたと思うけど―――そんなことを考えたりした。 ◆◆◆ 「今日から海外留学生と勉強することになった」 朝礼にて。 留学生が来るということで、クラスは歓声に包まれる。 「じゃあ入ってきなさい」 ウッキーは廊下に向かって声を掛ける。 「あ〜〜〜ッ!! オレイアス〜〜!?」 由佳は叫んだ。 「…知り合いなのかね、オレイアス君」 おずおずとウッキー。 「来世を誓い合った仲です」 「え〜〜〜ッ!!!」 クラスは再び大騒然。 ◆◆◆ 1時間目、英語。 「夢だけど夢じゃなかった。夢だけど夢じゃなかった…」 頭のぴよってる由佳は、隣のトトロモードになっていた。 「ねぇ由佳。オレイアス君と来世を誓い合った仲って本当?」 ひそひそと友人の加奈子。 「そんなわけ、あるわけないわけ、ないわけあるわけ…」 由佳は完全に錯乱していた。 「第三パラグラフを…そうだねぇ。オレイアス君、読んでみて」 「はい。He
is Kananohikaru.And he has a friend.Of cource,his name is
Kananohikaru too. オレイアスは流暢に読み上げる。流れるようにスラスラと。 「先生、読み終わりました」 「えっ!? あ…そ、そうか。あれ、全文読んじゃったみたいだね…」 そこで、チャイムが鳴った。 ◆◆◆ オレイアスの机の周りは、人だかりで凄かった。 「オレイアス君って凄い人気だねー。 「アハハ、ピーターパーーン、私をネバーランドへ連れてって〜〜」 「ダメだ。宇宙と交信してる…。 人だかりをかき分け、オレイアスは由佳の机の前に立つ。 「指輪だ。俺との契りの証として受け取って欲しい」 一瞬、周りの時が止まった。 「契りって…由佳…まさか……」 加奈子は由佳を見た。 「キ…キミねぇ…、ちょっと…ついて来ーーーーいッ!!!」 ブチ切れて完全復活を遂げた由佳は、オレイアスの首根っこを掴んで教室から退場。 「契りって何だ?」 馬鹿な男子が呟いた。 |