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Galette des rois フェーヴと王様ケーキについてうんちくを語る 記事登録日:2011/01/22
最終更新日:2015/09/30
 
最近では日本でもファンが増殖中のガレット・デ・ロワ。
このあいだ、近所のセブンイレブンでも販売しているのを見かけました。
1月初旬に送られてきたフランスの友人からのメールによると、この時期、職場や家庭で王様パイを食べまくっているとのこと。
本日はこの王様ケーキについてのお話です。




王様ケーキって???
 
王様ケーキは公現祭というキリスト教行事に由来します。

聖書には、12月25日に誕生したイエス・キリストの元に、星に導かれた東方の三博士が訪れたという逸話があり、この日が1月6日公現節(エピファニー)、それを祝うお菓子がガレット・デ・ロワなのです。
「東方の三博士」は「東方の三賢人」とも訳されますが、現在フランスでは三人の王冠を頂く王様で描かれることが多く、それがGalette des rois(直訳すると王様たちの焼き菓子)たる所以です。




王様ケーキの影の主役!? フェーヴって???
 
王様ケーキが他のお菓子と特に違う点は、中にフェーヴと呼ばれる「当たり」が入っていることです。

公現節では三人の王様たちがキリストを訪ねる際にそれぞれ宝物を持参したとされ、このことから公現祭を祝うお菓子の中に宝物を模した「当たり」を忍ばせる習慣が出来たようです。
この「宝物」にはもともとソラマメ(フェーヴ)が使われていましたが、現在では王様パイ専用の小さな陶器の人形を用い、この人形をフェーヴと呼んでいます。

スタンダードなフェーヴには、てんとう虫や馬の蹄鉄、四葉のクローバーなどラッキーアイテムのモチーフや、公現節の登場人物である幼子イエスやマリア、マリアに受胎を告知した大天使ガブリエル、宝物を持った王様などがあります。
現在ではファッションやスポーツなどのシリーズモノや人気アニメのキャラクターなどフェーヴにもいろんなモチーフが使われています。

フェーヴについて興味が湧いた方はぜひこちらのサイトをご覧ください。
 − フェーヴなつじかん
私のお気に入りのフェーヴ販売専門ショップです。
見ているだけでも楽しい!!

 こちらの記事もぜひどうぞ♪ → フェーヴなつじかん実店舗訪問!

公現節の登場人物のフェーヴ
キリスト誕生の場面を再現する箱庭は
クレーシュと呼ばれ
クリスマスから年明けにかけて
ヨーロッパのカトリック教会で
見ることが出来ます
一般的なクレーシュは
もっと大掛かりなんですが
フェーヴだとコンパクトなクレーシュを
楽しめます



 オーソドックスなものから微妙なものまで
フェーヴも多彩です







 王様ケーキは王様パイだけじゃない???
 
肝心の王様ケーキですが、日本で一般に認知されている「ガレット・デ・ロワ」は別名「ピティヴィエ」と呼ばれるオルレアン地方の焼き菓子で、実は「ガレット・デ・ロワ」と名のつくお菓子は地方により数種類存在します。

フランス版Wikiによると、もっともポピュラーなのはシンプルに焼いたパイ生地にジャムを添えて頂くというもの。
アレンジとしてアーモンドクリームを入れたもの(←コレが日本で言うとこの王様ケーキ)の他、フルーツクリームやチョコレートを入れたものがある、とのこと。
それ以外にも西部(ブルターニュ地方)ではサブレをベースにしたものやフルーツコンフィを入れたブリオッシュスタイルのものもあるそうです。

 ブルターニュ風王様ケーキ
巨大なサブレです
出典とレシピはこちら

プロヴァンス風王様ケーキが
ブリオッシュスタイルのようです
出典とレシピはこちら



ところで、フランス語を勉強した身としては、「ガレット」と聞くと、「ガレット・ブルトンヌ(ブルターニュ・クッキー)」に代表されるようなクッキー系の小じんまりした焼菓子を思い浮かべがちなのですが、辞書によると(galetteとは)「お菓子《円く平たいパンケーキ》」とされていて、必ずしもクッキーのことを指すのではないことがわかります。
フランスの地方菓子やその歴史に造詣が深いオーボンビュータンの河田勝彦氏の著書「フランス伝統菓子」によると、古来「ガレットとは『平らで薄く丸い菓子』のことを指す」そうで、「この形をしていればパイ生地でもブリオッシュ生地でもこう呼ばれる」(もちろん、サブレ生地でも)とのこと。
そう言われてみれば確かに、galette(ガレット)という単語はブルターニュ名物のそば粉で作ったクレープのことも指しますので納得の解説です。




模様に込められた思い・・・
 
 a.麦 b.太陽 c.ひまわり d.月桂樹
豊穣・生命・勝利・栄光など、それぞれ縁起のよいモチーフが元になっています



ピティヴィエタイプの王様パイには独特の美しい模様が描かれており、それもまたこのお菓子の持つ魅力のひとつです。

模様は大きく分けて4パターン。
麦や棕櫚(パルム)をあらわす矢羽模様、太陽を表す渦巻き模様、ひまわりを表現した格子模様、月桂樹やオリーブ、四枚だと四葉のクローバーを表す葉模様など。
それぞれ豊穣や生命力、栄光、勝利など縁起のよい図柄となっています。

中でも一般的なのは放射状に渦を巻く太陽模様でしょう。
私は日本に帰って初めてそれ以外にも柄があることを知ったくらいです。
この放射模様、一見シンプルに見えますが、実際描くにはなかなかの技術を要します。
ってか、私にはかけません・・・。

私はもっぱら月桂樹模様
書く手間は掛かりますが意外とカンタンで
豪華に見えるから・・・むふふ♪





このサイトではパイ生地で作ったピティヴィエタイプのガレット・デ・ロワのレシピをご紹介していますが、前述の河田氏の著書によると、ピティヴィエとガレット・デ・ロワには実は明確な違いがあるのだそうです。
ピティヴィエは「焼き上がりの生地がガッと上に持ちあがって、側面に筋が入っているもの」、対するガレット・デ・ロワは「平らでペシャンコな」ディスク状。
おそらくは表面の模様もガレット・デ・ロワが比較的自由に縁起物のモチーフで飾られるのに対し、ピティヴィエは放射状の渦巻き模様であることがその特徴の一つとされるのではないかと思います。

個人的には見た目のゴージャス感がハンパないピティヴィエタイプが好みなので、このような違いを気にすること無くパイ生地の高さを目いっぱい引き出してガレット・デ・ロワを焼き上げていましたが、そう言えば、参考にしたレシピによってはわざわざ天板で重しをしてできるだけ平たく焼き上げるよう指示されたものもありましたので、薄べったくないと本当の王様パイとは言えないのかもしれません。

ただ、同じく河田氏によると「最近フランスでもその区別が曖昧になってきている」とのこと。
(しかもこの著書は1993年発行のもの。20年近くたつ現在では更に曖昧になっているものと推察します。)
ガレット・デ・ロワ愛好者としては、知識としてその違いをしっかりと認識しつつ、見た目や食感などの好みで自由に楽しむのもアリかな?、と思っています。




C'est pour qui? -これは誰の?-
 
フェーヴ入りの王様ケーキを買うと必ず王冠がついてきます。
切り分けたケーキの中に隠れているフェーヴを当てた人がその場の王様(または女王様)になるというわけです。

フランスで、特に子供のいる家庭では、その場にいる一番年少の子が机の下に入り、切り分けたケーキが誰の分か順番に名前を言う、という方法でケーキを配ります。
お母さんはケーキをお皿に乗せながら「C'est pour qui?」(これは誰の?)と聞き、子供は「C'est pour papa!」(パパの!)と答えるのです。
子供にとってはもうコレだけでイベントですよね!
それに、こうすれば切っている最中にフェーヴが見えてしまっても、公平に取り分けることが出来ます。

ケーキの中にフェーヴが入っていた人はその場の王様!または女王様!
王様は女王様を女王様は王様を選んで遊びますが、歴史好きな人たちは戴冠式を行い、騎士や摂政、枢機卿を任命したりして更に盛り上がります。


さて、この「最年少者が机の下に入って・・・」というフランス式取り分け方法、これは八百長をしやすくするための親の知恵なのではないか、と、最近しみじみ感じています。
「八百長」と言い切ってしまうと聞こえが悪いですが、要するに「場を白けさせないための配慮」ですね。

王様パイを切り分ける際、フェーヴのありかがわかってしまうことが往々にしてあります
そのフェーヴ入りの一切れを誰に手渡すのか。
「やっぱり子どもに・・・」とか「去年は下の子だったから今年は上に子に・・・」とか「遊びに来てくれたお友達に・・・」とか・・・取り分ける際には親ならではの「想い」があると思うのですが、その「配慮」をしやすくするための「儀式」が「机の下」なのかな、と思った次第です。
当のフランス人に未確認なので、私の憶測なんですけども・・・。


2011年はHNKのチャレンジホビーで習った
青木パティシエのレシピ

逆折込パイに挑戦!!
思いのほか上手に出来て大満足♪

当サイトでも
逆折込パイのレシピ
ご紹介しています




スタンダードなクレームフランジパーヌと
それにチョコレートを加えた
二種類を作成
2011年は合計8枚焼きました








 フランス・王様ケーキ事情
 
私が留学していたのはアンジェという町でしたが、そこではピティヴィエタイプの王様パイしか見かけなかったような気がします。

スーパーもパン屋もパティスリーも、どこにいってもこの王冠を乗っけたパイが並んでいて、はじめて見たときには何事かと思いました。
値段もピンキリでスーパーの安いものだと確か15フラン(当時で約300円)くらいから売っていました。
ちなみに、そんな安価なものでもご丁寧にフェーヴが入っています。
安物に入っているのは子供の粘土細工みたいな人形か、もう一段チープなやつだと、間違えて食べちゃいそうなくらい小さな、1cmに満たないくらいの薄っぺらくて白いプラスチックの鳥とかで、ミスで混入した玉子の殻みたいなフェーヴだったりします。

パン屋では切り分けたものを一切れ単位で売っていて、この時期には値段も手頃で腹持ちのよいコレを昼食代わりに買っていました。
もちろん、切り売りされているパイにもどれかにはフェーヴが入っています。
切り口からフェーヴがのぞいているものを指定して買ったことも♪

1月になると学校でも友人同士でも、何かしらの理由をつけて集まっては王様パイを食べていました。
友人のメールにあった「職場でも」というのには、日本人の感覚ではびっくりですが、まあ、フランス人ならアリでしょう。
公現節は1月6日で、その日かその日以降の日曜日にお祝いをするそうですが、フランスの街中ではこの王様ケーキを2月いっぱいくらいは見かけたような気がします。

おそらく日本人にはなじみの薄いアーモンドクリームが主役のこのお菓子、非常にフランス的な味だと思うのですが、日本風にレシピのアレンジをしなくても意外に日本人の舌にも合うようです。
ただ注意したいのは、このパイは非常にカロリーが高いということ。
作ったことがある人にはわかると思いますが、パイ生地の半分はバターですし、中のアーモンドクリームも砂糖とバターで半分を占めています。
とってもおいしくてくせになる味なんですが、食べすぎには要注意!!です!!

 画像が小さいので
よく分からないかもしれませんが
フランス人のざっぱな仕事っふりがよくわかる
フェーヴたち

陶器製ですが、表面の塗装が
ところどころはげています
紙粘土細工か!?



 思い出の安物パイのフェーヴ
爪楊枝とともに撮影
小ささがお分かりいただけますか?
まじ、日本ではありえない
こんなものをお菓子に混入したら
日本では事件ですよね・・・













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