コラム
社員の化学日記 −第205話「閑人閑話5−ちりも積もれば…−」−
暑い日が続く…。「猛暑」「酷暑」「危険な暑さ」「災害級の暑さ」…。 メディアが報じる際にこの暑さを形容する言葉、さあ、このつぎはどんな暑さになることやら。
外を歩けば、あっという間に汗まみれ。「暑い」というよりはむしろ、日差しが肌を焼いて「痛い」と感じる。女性はもちろん、男性でも日傘をさしている人をよく見かけるようになったが、そういう人でもできるだけ日陰を探して歩こうとする。また、日差しがまぶしいのもあって自然と視線は下向きになる。
で、気が付いた。今年1月から大阪市内全域は条例によって路上喫煙禁止となったはず。でも、あちらこちらに吸い殻が落ちている。これはどういうことか。
自分も25年ほど前までは喫煙者であったので、偉そうには言えないが、これって条例違反ではないか?
そして吸い殻のポイ捨ては、条例違反云々とは別に喫煙者のマナー違反以外の何ものでもない(もちろん、ルールはルールなので、ポイ捨てしなければ路上喫煙してOK、とはならない)。
自分一人くらい、と思ってしまうのかもしれないが、コインパーキングに設置された自販機周辺などは常に吸い殻のゴミだらけ。 この暑さの中、冷たい缶コーヒーでも飲みながら一服するのだろうが、「ちりも積もれば」である。暑い、暑いと思いながら歩いていて、こんな風景が目に飛び込んできたら決していい気持ちはしない。
そんな中、先日のニュース報道で「7月10日が2025年で"最も短い日"」であったことを知った。しかも来る「8月5日」は"歴史的に短い1日"になると予想されているらしい。
時間というものはセシウム原子時計で定義される「1秒」が基準となっていることや地球の公転や自転が正確に「1年」や「24時間」ではないこと(「うるう年」や「うるう秒」が必要なこと)くらいは知っていたが、「短い1日」とはどういうことか…。
Web記事によれば、国際地球回転・基準系事業(IERS)および米海軍天文台の発表では「標準的な1日よりも1.38ミリ秒短かった」とのこと。「1ミリ秒」は「1/1000」秒なので瞬きもし終わらないくらいの短い時間差であるが、原因は「地球の自転速度の上昇」によるらしい。
地球の自転速度がなぜ速くなっているのか。正確な原因は不明らしいが、月引力や地球内部のコアの運動速度低下、地球表面のジェット気流の変動などが影響しているらしい。
ただし、1ミリ秒長くなったり、短くなったりしても日常生活には何の影響もなく、一般の人間は感覚的に気づくこともなく、あーだ、こうだと騒いでいるのは天文学者、物理学者などの学者やシステム技術者ぐらい。
原子時計が刻む時間と実際の天文時間との誤差を調整するために挿入されていたのが「うるう秒」で、同制度が導入された1972年以降2017年までで「うるう秒」挿入(日常の生活時間に1秒を加算する)が27回実施されたらしい。ただし、この「うるう秒」挿入は、実際のところ簡単なものではなく、コンピュータシステムやWebサービスでのトラブルを引き起こすため、2035年までに標準時間と天文時間との許容誤差を引き上げ、以後「うるう秒」挿入を実施しないことがすでに決定済みとのこと。
この「うるう秒」が廃止され、地球の自転と時刻が切り離されれば、当然、人類はずれた時間を使いことになってしまい、100年で1分、1000年で10分、6000年後は1時間ズレた時間を人類は使うことになるので、廃止後の対応については引き続き議論がなされるようである。
ここで、先ほどの「1.38ミリ秒短かった」話に戻るが、自転速度が速くなって1日の長さが短くなる傾向があり、今後は「負のうるう秒」の可能性が出てきているとのこと。今までは1秒プラスすることしかなかったらしいが、時間を差し引く処理は前例がなく、どんな影響が出るのか全くわからないらしい。
あくまでも可能性の話らしいが、10分のずれでも1000年後なら、自分の子孫が生きていたとしても大きな問題ではななく、そのころにはSF映画よろしく地球を飛び出して宇宙での生活が主流となっているかもしれない。そうなれば地球時間ではなく、宇宙での新たな時間の定義がなされていることだろう。
まさか、宇宙空間にたばこのポイ捨てはされていないだろうが…。
【道修町博士(ペンネーム)】
次のコラムへ>>