コラム

社員の化学日記 −第188話「白しか勝たん」−

夏は、白しか着ない。そんな言葉を、友人から聞いた。自分の服を見てみた、柄が色あせどころかまだらである。染め直しも試したが、少しは良くなったものの染まりきらない部分も出てきた。

天気の良い日の天日干しは、気持ちよい。洗濯物もよく乾く。しかし、夏などの日差しの強い時期での天日干しは気を付けなければならないことがある。それは、キツイ日差しの場合では衣服が真っ白に焼け退色してしまうことがあるからである。

日差しが強いと退色することは経験則的には理解できるが、太陽光と退色は関係があるのだろうか。

まず太陽光には、主に目に見える可視光線52%、熱を感じる赤外線42%、見えず感じることもできない紫外線6%が主な成分である。

特に、この6%ほどの紫外線は波長が短く振動数が大きい。光のエネルギーは、波長短いほど大きく波長の短い紫外線は、そのエネルギーによって分子の結合を破壊してしまう。

そのため、日差しが強い日は紫外線量も多く、そのような条件下での天日干しでは染料や顔料又衣類等(洗濯ばさみなどのプラスチックも)の分子の破壊が大きく進んでしまうため、退色や傷みなどの現象がおきてくる。また、一度破壊された分子は元に戻らない為、退色した色が元に戻ることはない。衣類自体の分子も壊れてくるせいか染め直しも難しくなってくる。

分子の結合が強い顔料(酸化クロム)などの紫外線のエネルギーに負けない分子も存在するが、色の種類や用途が限定される。

しかし、その強力なエネルギーで様々な分子の結合を破壊してしまうが、プラスの側面として殺菌効果もある。良くも悪くも、エネルギーが強力であること物語っている。

殺菌にもなって気持ち良いと調子にのって数日間、天日干しを続けてとんでもないことになってしまった。殺菌が期待できるほどのエネルギーを浴びさせ過ぎるのがまずかったようだ。

夏に白しか着ない友人をとても賢く思う。

 【白色林檎(ペンネーム)】

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